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女子たちの憧れと嫉妬2

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「ちょっと、晶!どうして新しい子と喋っているの!?」

教室に戻るとすぐに蒼がモンクを言いながらやってきた。

晶と雄也は「うんうん」と頷きながらどこかを向いているようだった。

郁はというと、蒼の話しは聞いておらずワイシャツを着替えてリップマークをぼんやりと眺めている。

(この人、新しいワイシャツどこから持ってきたんだろう・・・・・)

梓が郁のことを不思議に思っていると、蒼が不愉快そうな顔をして近づいて話しかけてきた。

「あなた、今朝、正門で会ったわよね」

(うげ・・・覚えていたんだ。)

梓はなるべくイヤな気持ちを抑えて笑顔を心がけた。

「ええ、今朝、正門で会ったわ。とても可愛い子とぶつかりそうになったから、とても印象に残っているわ」

梓は心にもない褒め言葉を並べて、この場を丸く収めようとした。

一般家庭に生まれ、ごく普通の女の子として育った梓は、この場の雰囲気を感じ取って蒼に嫌われるとここの学院での生活が危うくなることが、すぐに分かったのだった。

ただ、蒼はこの梓のお世辞に気づかず、心を良くしたようだった。

「あら、あなた一般家庭の子なのに人を見る目はあるみたいね。まあ、一般家庭の子でもこのくらいのことは、わかるでしょうけど」

蒼から嫌われずには済んだようだが、褒めたことによって蒼は上から目線に拍車がかかったようだった。

(しまった~・・・。この出始めだと、これからも蒼ちゃんを褒めてあげないとめんどくさいことになるな・・・)

梓は女子の面倒なことに巻き込まれないように、気を付けたつもりだったがこれが裏目に出たようだと思った。そして、この学院のルールというか、洗礼のようなものを受けたような気がした。

「おい、蒼。初対面でそれはないだろ」

蒼にはっきりと言える人は、ここの学院では中等部から入学した郁しかいない。

というよりは、蒼が中等部から入学した郁に対してかなり冷たいので、郁はそのことにうんざりしているのだ。

「あら、郁もいたの?あいかわらず、あなたの存在に私は気づかないみたいだわ」

「おいおい、相変わらず冷たいな。蒼はオレの一体何が不満なんだ?」

「何が不満って決まってるじゃない。あなたは晶と違って、中等部から入学だからよ。私は外部の人間なんてよっぽど良い成績を残して学院のために功績を残した人しか認めないんだから」

「外部の人間だって?この世の中、外部の人間の方が圧倒的に多いだろ?蒼、いい加減その性格見直さないと、あとあと大変な目に合うのは自分だぞ」

「なによ。私の性格に口出しをする気?人格否定は人権の侵害よ!!先生に言ってやるんだから!!」

蒼はそういって教室を飛び出して行った。



「郁~相変わらずお前ってやつは怖いもの知らずだな。先生にはオレから今起きたこと、蒼のいつものやつだって伝えておくからな」

雄也が郁のことを心配そうに言った。

「怖いもの知らずだって?この世の中、怖いものなんてないだろ。オレは正直に自分が思ったことを言っただけだ。いい加減、晶も雄也もはっきりと言ったらいいんじゃないか?」

「いやいや、オレたちは郁と違って、世の中怖いものだらけだよ。学院の外はおろか、学院の中の女子だって恐ろしいと思っているからね」

晶が綺麗な顔を歪めながら言った。その隣では雄也が「うんうん」と激しく首を振っている。


(・・・・これが、この学院の初日だなんてホントに憂鬱だわ。ここの人たちは、外から見てると上品で優雅で誰からも羨ましがられるような人と見えるけと、中身は別な問題を抱えているのね)

梓はここの学院での生活が不安で仕方がなくなった。

梓の不安そうな顔を郁が気づいた。きっと、郁の女好きからくる、野生の勘・・・女性に対する気遣いからだろう。

「梓ちゃん、午後の授業どうせオリエンテーションだからさ。オレと一緒に受けようよ」

「おい、郁。オレが委員長だからオレが一緒に受けるんだって」

雄也が郁を止める。

「そしたら、雄也とも一緒に受ける」

郁が甘えた声で雄也に甘える。

「そしたら、オレも雄也と郁と梓と受ける」

晶も雄也に甘えながら言った。きっと郁と一緒なら、蒼が近づいてこないと知っているのだろう。

こうして、梓はクラスの女子たちと仲良くなるタイミングを見つけられずに午後の授業はこのイケメン3人組と受けることになったのだった。
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