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新しい出会い
しおりを挟む同じ制服の子が満員電車の中に数人いる。
中野 梓は自分だけ制服の襟がパリっとして新品のようだと気付いた。
桜ヶ丘学院は都心の一等地にあり、幼稚舎から大学院まで設置されている。
いわゆるお金持ちや有名人の子どもたちが通っている、名門私立の学校である。
幼稚舎から高等部までは、ほとんどストレートで進学できるため
梓のように高等部から新品・指定のシャツというのは、ここの学院では
珍しいことである。
人混みをかき分けて電車から降りようとしたときに同じ制服を着た
男子高校生の背中に頭から突っ込んでしまった。
ゴンッ
「すっ・・・すみません」
梓は通勤ラッシュの電車と駅のホームの間で小声で謝った。
「・・・」
その男子高校生は眠たそうな顔でこっちを振り返ったが無言で
駅のホームをスタスタと早歩きで去って行った。
(とてもマイペースそうな人だわ・・・)
今日から新しい生活に期待している梓にとっては、気怠そうな同じ学院の男子が不思議に思えた。
改札を出てから学園までは満開の桜並木の坂道を歩いて10分ほど。
途中に有名ブティックの路面店が立ち並んでいたり、テレビで行列ができていると取り上げられていた有名なご飯屋さんが
開店準備をしているではないか。
中学まで地元の何の変哲もない公立の学校を通っていた梓にとっては、このキラキラとした通学路がとても新鮮である。
(ここの学園を選んでよかったわ・・・)
そう思ったのも束の間。
学園に近づくにつれ同じ制服の子が増えてきた。
そして、路上に止まっているポルシェから中原 蒼が暗めの茶髪ボブを耳にかけながら降りてきた。
蒼は正門で最上 晶を見つけて駆け寄った。
晶は身長が180センチ以上あり遠くからでも、見つけやすかった。
「晶~・・・・・キャッ!」
蒼は、慣れない正門と都心の人波にうまく乗れなかった梓にぶつかってしまった。
「す、すみません・・・っ」
すぐに謝った梓に対して、蒼は眉間にシワを寄せて品定めするような目で見つめた。
「・・・・・あなた同じ制服?見かけない顔ね。中等部の子?」
確かに制服の着こなしや、身だしなみの整え方・制服とはいえ小物やバックのセンスは
蒼の方が洗練されていて大人ぽく見えた。
それに比べて、梓は色付きリップを塗ったぐらいで都心の名門私立の高校に通っているようには全く見えない。
先ほどまで、ウキウキとした気持ちだったのに急に自分が恥ずかしくなった。
蒼からの質問に答えようか迷っていると、蒼は返事を待つことに飽きてしまったようで立ち去っていった。
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