218 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
219.悪役令嬢は武闘大会を楽しむ その4
しおりを挟む
皆と話をしている間に試合が開始の合図が出され、私達はしまったと思いながら会場に視線を向ける。
「勉強会や訓練会でも見たことがあるわね。彼女がティルヘイム騎士爵令嬢フィリアンヌなのかしら?」
「はい、彼女はスタンダードな戦闘スタイルで、よく言えば堅実。悪く言えば普通――と、いう感じですね」
と、ルアーナが言うように彼女はスタンダードなロングソードで構え、相手も同様な感じだ。身体強化の扱いもお互い同じくらいなのか、中々にお互いの剣が当たらないように見えた。けれど、少し面白いかもしれない事を私は考えていた。
そして、相手の攻撃を彼女は剣で押し飛ばすのを見て、私は考えていた事が確信に変わる。
「訓練会の時に見てあげれなかったけど、フィリアンヌって見た目に反してパワー系の戦闘スタイルみたいね」
「そうですか? うーん、パッと見は分からないですけど……」
ルアーナは不思議に思ったのかそう答えたけれど、身体強化も速度を活かすような使い方が苦手なだけなのかもしれないけれど、相手に攻撃が当たらないけれど、剣同士が当たった時は確実に彼女の方が力があるように見えたというのもある。
そして、そうしている間に彼女は渾身の一振りを繰り出す――が残念ながら当たらず、地面を削る。
「確かに凄い一撃でしたが、当たらなかったですね。まぁ、相手も驚いて引いていたおかげで反撃されなかっただけ――なので、負けていてもおかしく無かったですね」
「そうね、剣のリーチがもう少しあれば当たったと思うわ。たぶんだけど、彼女と今のロングソードくらいの長さの武器は合っていないのでしょうね」
「大剣とかならどうです? ブンブンッって振るだけでも結構いけそうな感じですけど?」
と、ウィンディが楽し気にそう言った。確かに大剣の方が合っている気はするけれど、世間的に多くある大剣だと大きすぎて、立ち回りが難しくなりそうな雰囲気があるわね。
「うーん、多くの大剣を使う者が使っている大剣では、今度は大きすぎて扱い難そうな雰囲気があるわ。私なら、そうね――大剣のように長いけど、長すぎず、ロングソードのように剣幅があまりないタイプの剣がいいわよね」
そう思いながら、閣下用に作ったサンプル画の中から似たような雰囲気の物を空間収納から、周囲には気付かれないようにスッと取り出してウィンディに手渡す。
「どう? 大きさ的にはロングソードより長めで、刀身の根元にも持ち手として使える刃のついていない部分のある剣よ」
「あー、ツヴァイハンダー!」
と、ウィンディは興奮気味に言ってから周囲の不思議そうな視線を浴びて首を傾げた。まぁ、そうなるわよね。残念ながらこの世界――と、いうか大帝国にはツヴァイハンダーみたいな武器は存在してなかったので、敢えてその名を出さなかったのよ。
「知っているのですか、ウィンディ様?」
「え、あー、う、うん。ちょっとね。あはは……」
うん、誤魔化せてない。
「大剣って、多くは長くて幅のある剣が多いじゃない。当然、攻防で使えるメリットも大きいのだけど、取り回しが悪いし、フィリアンヌやウィンディみたいな華奢な子には扱いづらいじゃない?」
「――確かに大剣を活かそうと思えば体格が良いというのは確かですね。我が家のように戦場よりも護衛を主においた剣術を用いる騎士には向かない武器とも言えます」
ルアーナのように王家や公爵家の側近であり、護衛騎士を多く輩出している家の者からすれば、大剣は場所を選ぶ武器になるので、有用では無いわね。建物内や狭い魔導洞窟なんかでは振り回せないし。
そんな事を話していると、フィリアンヌが相手の動きに合わせて下段から降り上げた剣が相手の剣をへし折って試合が決まる。
「綺麗に斬れましたね~」
「鍛えればもっと強くなると思いますね」
と、ルアーナとウィンディは楽し気にそう言った。ある程度は誰でも鍛えれば強くなれるとは私は思うけど――まぁ、その辺りはいいわ。
そうして、何戦か知らない者達の試合を見た後、ハーファリアが登場する。
「リアは気付いていないかもしれないけど、ウェーベラント騎士爵家はウチの騎士団所属よ。彼女のセンスには興味があったのかもしれないけど、その辺りはいまいち興味なさげだったから言わなかったけど」
「訓練会にも来ていたし、少し話もしたから人となりは知っているけど、そうだったのね。騎士服も様になっているし、マリーのところは給料も結構出しているのかしら?」
「さぁ、それは他と変わらないんじゃないかな? 因みに騎士服はウチの商会が作ってるから、なかなかにいいモノよ」
あ、自身の商会の宣伝目的もあったのか、相変わらずそういうところに目が無い友ね。因みに彼女は私の仕込みで、今回はちょっと変わった武器で参加して貰っている。
「そういえば、訓練会の時からロングソードとショートソードの二刀を使っていましたが、アレは意味があるのでしょうか?」
と、ルアーナが何やら考えながら訊いて来る。
「ルアーナも興味津々かしら? もし、私がルアーナにもあのスタイルで戦って欲しいと言えばやってくれる?」
「それは当然です――が、一応理由は聞きたいところです」
まぁ、そうよね。ただ、この場で言っていいか少し考え、周囲を観察しつつ私は小型で硬化が小範囲の結界の魔道具をソッと取り出して起動する。
周囲にいて聞こえてもいい者だけが範囲にいて助かる――と、いうよりも一応私に用意された観覧席が意外と広いっておかげでもあるけどね。
「勉強会や訓練会でも見たことがあるわね。彼女がティルヘイム騎士爵令嬢フィリアンヌなのかしら?」
「はい、彼女はスタンダードな戦闘スタイルで、よく言えば堅実。悪く言えば普通――と、いう感じですね」
と、ルアーナが言うように彼女はスタンダードなロングソードで構え、相手も同様な感じだ。身体強化の扱いもお互い同じくらいなのか、中々にお互いの剣が当たらないように見えた。けれど、少し面白いかもしれない事を私は考えていた。
そして、相手の攻撃を彼女は剣で押し飛ばすのを見て、私は考えていた事が確信に変わる。
「訓練会の時に見てあげれなかったけど、フィリアンヌって見た目に反してパワー系の戦闘スタイルみたいね」
「そうですか? うーん、パッと見は分からないですけど……」
ルアーナは不思議に思ったのかそう答えたけれど、身体強化も速度を活かすような使い方が苦手なだけなのかもしれないけれど、相手に攻撃が当たらないけれど、剣同士が当たった時は確実に彼女の方が力があるように見えたというのもある。
そして、そうしている間に彼女は渾身の一振りを繰り出す――が残念ながら当たらず、地面を削る。
「確かに凄い一撃でしたが、当たらなかったですね。まぁ、相手も驚いて引いていたおかげで反撃されなかっただけ――なので、負けていてもおかしく無かったですね」
「そうね、剣のリーチがもう少しあれば当たったと思うわ。たぶんだけど、彼女と今のロングソードくらいの長さの武器は合っていないのでしょうね」
「大剣とかならどうです? ブンブンッって振るだけでも結構いけそうな感じですけど?」
と、ウィンディが楽し気にそう言った。確かに大剣の方が合っている気はするけれど、世間的に多くある大剣だと大きすぎて、立ち回りが難しくなりそうな雰囲気があるわね。
「うーん、多くの大剣を使う者が使っている大剣では、今度は大きすぎて扱い難そうな雰囲気があるわ。私なら、そうね――大剣のように長いけど、長すぎず、ロングソードのように剣幅があまりないタイプの剣がいいわよね」
そう思いながら、閣下用に作ったサンプル画の中から似たような雰囲気の物を空間収納から、周囲には気付かれないようにスッと取り出してウィンディに手渡す。
「どう? 大きさ的にはロングソードより長めで、刀身の根元にも持ち手として使える刃のついていない部分のある剣よ」
「あー、ツヴァイハンダー!」
と、ウィンディは興奮気味に言ってから周囲の不思議そうな視線を浴びて首を傾げた。まぁ、そうなるわよね。残念ながらこの世界――と、いうか大帝国にはツヴァイハンダーみたいな武器は存在してなかったので、敢えてその名を出さなかったのよ。
「知っているのですか、ウィンディ様?」
「え、あー、う、うん。ちょっとね。あはは……」
うん、誤魔化せてない。
「大剣って、多くは長くて幅のある剣が多いじゃない。当然、攻防で使えるメリットも大きいのだけど、取り回しが悪いし、フィリアンヌやウィンディみたいな華奢な子には扱いづらいじゃない?」
「――確かに大剣を活かそうと思えば体格が良いというのは確かですね。我が家のように戦場よりも護衛を主においた剣術を用いる騎士には向かない武器とも言えます」
ルアーナのように王家や公爵家の側近であり、護衛騎士を多く輩出している家の者からすれば、大剣は場所を選ぶ武器になるので、有用では無いわね。建物内や狭い魔導洞窟なんかでは振り回せないし。
そんな事を話していると、フィリアンヌが相手の動きに合わせて下段から降り上げた剣が相手の剣をへし折って試合が決まる。
「綺麗に斬れましたね~」
「鍛えればもっと強くなると思いますね」
と、ルアーナとウィンディは楽し気にそう言った。ある程度は誰でも鍛えれば強くなれるとは私は思うけど――まぁ、その辺りはいいわ。
そうして、何戦か知らない者達の試合を見た後、ハーファリアが登場する。
「リアは気付いていないかもしれないけど、ウェーベラント騎士爵家はウチの騎士団所属よ。彼女のセンスには興味があったのかもしれないけど、その辺りはいまいち興味なさげだったから言わなかったけど」
「訓練会にも来ていたし、少し話もしたから人となりは知っているけど、そうだったのね。騎士服も様になっているし、マリーのところは給料も結構出しているのかしら?」
「さぁ、それは他と変わらないんじゃないかな? 因みに騎士服はウチの商会が作ってるから、なかなかにいいモノよ」
あ、自身の商会の宣伝目的もあったのか、相変わらずそういうところに目が無い友ね。因みに彼女は私の仕込みで、今回はちょっと変わった武器で参加して貰っている。
「そういえば、訓練会の時からロングソードとショートソードの二刀を使っていましたが、アレは意味があるのでしょうか?」
と、ルアーナが何やら考えながら訊いて来る。
「ルアーナも興味津々かしら? もし、私がルアーナにもあのスタイルで戦って欲しいと言えばやってくれる?」
「それは当然です――が、一応理由は聞きたいところです」
まぁ、そうよね。ただ、この場で言っていいか少し考え、周囲を観察しつつ私は小型で硬化が小範囲の結界の魔道具をソッと取り出して起動する。
周囲にいて聞こえてもいい者だけが範囲にいて助かる――と、いうよりも一応私に用意された観覧席が意外と広いっておかげでもあるけどね。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる