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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
211.悪役令嬢は決闘という名の模擬戦を申し込まれる
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どうしてこうなった――
と、正直言いたい気持ちはあれど、致し方ないと思う。現在、私は学内にある騎士訓練場に来ており、さらに多くの野次馬達が遠巻きにして多くの視線にさらされている。
「武闘大会と同じルールでいいのかしら?」
私は扇で口元を隠しながらそう言うと、目の前の上級生であるオーリオー伯爵令息、アレクサくんが凄まじく殺気だった表情で「かまわぬ!」と、言うのだった。なんとも、家電とかを動かしてくれそうな名前の彼だが、正直言って正気を疑う行動に私は幾度も溜息を吐いてしまっている。
何故、彼と騎士訓練場で模擬戦を行うと言う話になったのか――だけど、まぁ、少し煽り過ぎたところは反省点ではあるわね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
学園内でリンリィが魔法技術大会にて主席になったのは学園内でかなりの話題になっていた。それと同じくして、私に対してのあらぬ噂が出回り始める。魔法技術大会でお母様のデモンストレーションなどもあり、私の派閥――私としては派閥という気はないのだけど――である者達が上位を占めたことで、私が裏で手を回し上位を独占させた。など、私のせいでクリフト殿下が学園に来ない。だとか、様々だ。
当然、私を知る者達はその噂に対して怒ってはいたけれど、そんなことで止むようなモノではないのよね。こういった手法は面倒だけど意外と効果は高い――わけなのだけど、事実であることも中には含まれているのよね。クリフト殿下やリストリア殿下に関する噂だけど、これは結構痛手ではある。
まぁ、それでも放っておいていいかな。と、思っていたところ、サロンへ向かう途中でオーリオー伯爵令息とその子分達に絡まれたわけなのよね。
「お前のような者が殿下の婚約者だというのが信じられないな」
うん、言ってくれるじゃない。私だって好きで婚約者という立場にいるわけじゃないんだけど。まぁ、言っても無駄だよね。
そんな事を思っていると、ルアーナが私の前にスッと出て怒りを露わにする。
「貴様! 誰に物を言っているのか理解しているのか?」
それも当然の話よね。確かに令嬢令息というのは親の爵位の上下はあっても子が爵位を持っているわけでは無いから、多少の非礼があっても問題にされにくい――のだけど、それは高学での話であって、小学はそうでは無いのよ。
「ルアーナ、落ち着きなさい。とりあえずオーリオー伯爵令息。ルアーナが怒るのも当然だと思うけれど、貴族的な上下関係というのはどこまでも付いて来るわけで、その辺りを理解した上での発言なのかしら?」
私の言葉に彼は「くっ、俺をバカにしているのか」と、さらに怒りの色を見せる。それを見て私は困ったとマリーに視線を送ると、彼女は楽し気に微笑んでいた。くっ、マリーめ、楽しんでいるわね。
「アレクサ様、ここは高学ではありませんので、小学では多少のことでは怒られることはございませんが、このような場でそういった言いようは貴族の子として問題があると思いますよ」
と、リンリィが追撃をする。が、彼はさらに激高して「うるさい!」と、声を上げた。
「多少魔法が出来るだけの女が、ごちゃごちゃとうるさい! 謀略が大好きなハーブストの卑怯者に皆騙されているだけだ!」
「――はぁ?」
私は思わず声を漏らす。そして、その圧にルアーナがビクリと反応する。けれども、目の前の彼は全くそれにも気が付かず、言いたい事を捲し立てる。
「剣においてはリンガロイと並ぶミストリアの剣であるオーリオー伯爵家のこの俺をバカにしているのだろう! フンッ、魔法が多少できても剣で戦う俺の方が絶対に強い! お前たちは所詮女だからな!」
再度、思わず「はぁ?」と、言いそうになってグッと堪える。コレは何を勘違いしているのだろうか、全く分からない。と、いうか理解出来ない。それに最後の所詮女だから? 何を言っているの?
「貴様!」
と、剣に手を掛けようとするルアーナを止め、私は大きな溜息を吐いた。
「オーリオー伯爵令息。貴方は何を言っているのか、私にはサッパリ分からないわ」
「くっ、どこまでも愚弄する気だな、この魔女め! そうだ! 決闘だ! 俺がお前を成敗してくれる!」
あー、ホントに何を言ってるのかサッパリなんだけど、と、困っていると、この騒ぎで呼ばれた教師数人が学園を警備する騎士を連れてやって来る。
「お前達、何をして――」
と、やって来た男はそのメンツを見て何故か不敵な笑みを浮かべ。私は何とも嫌な気がするのだった。
「おや、これは噂のエステリア様ではありませんか。決闘と聞こえましたが――ああ、オーリオー伯爵のところのアレクサ殿では無いですか、なるほどなるほど……」
私はこの不穏な感じに視線を皆に向けるとマリーも面倒そうな表情をし、リンリィは不安そうな顔をしていた。因みにウィンディはワクワクしているわね。まったく、本当に面倒ね。
「教師二―ディアス・リバドゥ子爵。なるほどではありませんわ」
「いえいえ、そんな事は無いでしょうエステリア様。良いでは無いですか決闘。私が見届け人として――ああ、そうですね。問題があってはマズいですから、模擬戦ということにして、アレクサ殿と一対一で、さぁさぁ、参りましょう」
勝手に話を進められ、彼等はさっさと移動を開始する。私どころか、皆もポカン。と、いう感じなのだけど。
「リア、行く意味ある?」
「マリー――私の方がそれを聞きたいのだけど?」
「エステリア様、かといってこの状況で行かねば、さらに悪い噂が立つ――いっそ、私が蹴散らして」
「いいわ。仕方がないので、私が黙らせましょう」
と、いうことで私達も彼等の後をついて移動するのであった。
と、正直言いたい気持ちはあれど、致し方ないと思う。現在、私は学内にある騎士訓練場に来ており、さらに多くの野次馬達が遠巻きにして多くの視線にさらされている。
「武闘大会と同じルールでいいのかしら?」
私は扇で口元を隠しながらそう言うと、目の前の上級生であるオーリオー伯爵令息、アレクサくんが凄まじく殺気だった表情で「かまわぬ!」と、言うのだった。なんとも、家電とかを動かしてくれそうな名前の彼だが、正直言って正気を疑う行動に私は幾度も溜息を吐いてしまっている。
何故、彼と騎士訓練場で模擬戦を行うと言う話になったのか――だけど、まぁ、少し煽り過ぎたところは反省点ではあるわね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
学園内でリンリィが魔法技術大会にて主席になったのは学園内でかなりの話題になっていた。それと同じくして、私に対してのあらぬ噂が出回り始める。魔法技術大会でお母様のデモンストレーションなどもあり、私の派閥――私としては派閥という気はないのだけど――である者達が上位を占めたことで、私が裏で手を回し上位を独占させた。など、私のせいでクリフト殿下が学園に来ない。だとか、様々だ。
当然、私を知る者達はその噂に対して怒ってはいたけれど、そんなことで止むようなモノではないのよね。こういった手法は面倒だけど意外と効果は高い――わけなのだけど、事実であることも中には含まれているのよね。クリフト殿下やリストリア殿下に関する噂だけど、これは結構痛手ではある。
まぁ、それでも放っておいていいかな。と、思っていたところ、サロンへ向かう途中でオーリオー伯爵令息とその子分達に絡まれたわけなのよね。
「お前のような者が殿下の婚約者だというのが信じられないな」
うん、言ってくれるじゃない。私だって好きで婚約者という立場にいるわけじゃないんだけど。まぁ、言っても無駄だよね。
そんな事を思っていると、ルアーナが私の前にスッと出て怒りを露わにする。
「貴様! 誰に物を言っているのか理解しているのか?」
それも当然の話よね。確かに令嬢令息というのは親の爵位の上下はあっても子が爵位を持っているわけでは無いから、多少の非礼があっても問題にされにくい――のだけど、それは高学での話であって、小学はそうでは無いのよ。
「ルアーナ、落ち着きなさい。とりあえずオーリオー伯爵令息。ルアーナが怒るのも当然だと思うけれど、貴族的な上下関係というのはどこまでも付いて来るわけで、その辺りを理解した上での発言なのかしら?」
私の言葉に彼は「くっ、俺をバカにしているのか」と、さらに怒りの色を見せる。それを見て私は困ったとマリーに視線を送ると、彼女は楽し気に微笑んでいた。くっ、マリーめ、楽しんでいるわね。
「アレクサ様、ここは高学ではありませんので、小学では多少のことでは怒られることはございませんが、このような場でそういった言いようは貴族の子として問題があると思いますよ」
と、リンリィが追撃をする。が、彼はさらに激高して「うるさい!」と、声を上げた。
「多少魔法が出来るだけの女が、ごちゃごちゃとうるさい! 謀略が大好きなハーブストの卑怯者に皆騙されているだけだ!」
「――はぁ?」
私は思わず声を漏らす。そして、その圧にルアーナがビクリと反応する。けれども、目の前の彼は全くそれにも気が付かず、言いたい事を捲し立てる。
「剣においてはリンガロイと並ぶミストリアの剣であるオーリオー伯爵家のこの俺をバカにしているのだろう! フンッ、魔法が多少できても剣で戦う俺の方が絶対に強い! お前たちは所詮女だからな!」
再度、思わず「はぁ?」と、言いそうになってグッと堪える。コレは何を勘違いしているのだろうか、全く分からない。と、いうか理解出来ない。それに最後の所詮女だから? 何を言っているの?
「貴様!」
と、剣に手を掛けようとするルアーナを止め、私は大きな溜息を吐いた。
「オーリオー伯爵令息。貴方は何を言っているのか、私にはサッパリ分からないわ」
「くっ、どこまでも愚弄する気だな、この魔女め! そうだ! 決闘だ! 俺がお前を成敗してくれる!」
あー、ホントに何を言ってるのかサッパリなんだけど、と、困っていると、この騒ぎで呼ばれた教師数人が学園を警備する騎士を連れてやって来る。
「お前達、何をして――」
と、やって来た男はそのメンツを見て何故か不敵な笑みを浮かべ。私は何とも嫌な気がするのだった。
「おや、これは噂のエステリア様ではありませんか。決闘と聞こえましたが――ああ、オーリオー伯爵のところのアレクサ殿では無いですか、なるほどなるほど……」
私はこの不穏な感じに視線を皆に向けるとマリーも面倒そうな表情をし、リンリィは不安そうな顔をしていた。因みにウィンディはワクワクしているわね。まったく、本当に面倒ね。
「教師二―ディアス・リバドゥ子爵。なるほどではありませんわ」
「いえいえ、そんな事は無いでしょうエステリア様。良いでは無いですか決闘。私が見届け人として――ああ、そうですね。問題があってはマズいですから、模擬戦ということにして、アレクサ殿と一対一で、さぁさぁ、参りましょう」
勝手に話を進められ、彼等はさっさと移動を開始する。私どころか、皆もポカン。と、いう感じなのだけど。
「リア、行く意味ある?」
「マリー――私の方がそれを聞きたいのだけど?」
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