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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
210.悪役令嬢の母親は学園長を調略する
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「まず、学園長である貴女は魔石に込められる魔法、魔術について教えて貰えるかしら?」
これはエステリアが見つけた応用魔術理論に関しての基礎部分になる話だ。当然、私はまだ応用魔術理論がどういったモノかという話を一部の人間にしか広めていない。エステリアも自身の周囲には話をしているが、各家にそれが漏れていることは無く――と、いいますか、ここは旦那様も動いていて確実に情報統制されている。
「魔法や魔術が魔石に込められるのは一つのみ。これは遥か昔からの定説でありますが、ステファニー様がそう訊くということは違うのですね?」
「さすが先生ね。これは我が娘エステリアが見つけたことで、魔石に込められる魔術は一つの術式よ。これは魔法であっても魔術であっても同じ。そして、ここからが重要なのだけど、魔術というのは術式の組合せで一つの術と出来るモノで、魔法がイメージによって構築されるわけだけど、魔術というのは理論的に構築された術式によって作られる」
私の言葉に学園長は興味深そう――と、いうよりも獰猛な目の輝きを見せる。まぁ、魔術師である者は基本的にこういう手合いが多く、この話は今までの価値観が変わるほどの発見なのだから、その反応は当然といえますね。
「様々な機能を持った魔道具にしてはあまりにも小さいと思っていましたが、それが関係しているのですね」
「ええ、理解出来れば魔法にも影響が出ます。今までであれば複数の魔法を幾重にも発動する事で行っていた高速化や強力な魔法の構築が術式による構築に変わることで、より複雑で多層的な魔法に変えることが出来ます」
「――と、いうことはそういった魔法を魔道具の魔石に込めるということですか?」
まぁ、普通はそう考えますわね。私も初めはそういう考えでしたが、エステリアは全く違う考えを示した。おかげで今の理論が構築されているのです。
「可能ではありますが、それだと非常に高い魔力が必要となり、扱える者が限られてしまう。それはこれからの時代の魔道具は少ない魔力で動かせることも大事なのです。故に複数の魔石を使ってそれぞれの術式が連動するような仕組みになっているのです」
「そ、そのような事が可能なのですか?」
「それを可能とするのが、新しい魔術理論だ。興味が湧いたであろう?」
と、キャロルは自慢気にそう言ったのですが、貴女が自慢気にするのは違うと思うけれど、まぁ、可愛い妹のおちゃめな姿を見て、思わず可愛らしいと思うわけですが。
「そして、私とキャロルは今後、このミストリアに新しい学園を作ろうと動いています。高学では教えないような専門技術や知識を学び、より強い国にする為の者達を育てる場所を用意したいのです」
「それを私に話すという事は――」
「それ以上は言わんでもわかるであろう?」
キャロルは悪戯っぽい表情でそう言ったわけですが、まったく子供っぽさは未だに変わらないわね。でも、それを聞いた彼女は驚きの表情を浮かべ、私とキャロルに視線を動かしてから「なるほどですね」と、呟く。
「小学の段階から応用魔術理論を学ぶように学術長が言っていた理由にも繋がるわけですね。しかし、貴族派閥の者達にも技術を与えれば、思わぬ痛手を受ける可能性もありますよ?」
「多少は構わないわ。貴女が話さないと信じて言いますが、さらに上の理論がありますが、それは教えませんし、基本的に公開する気はありません――いいえ、公開できる時はもっと先になるでしょうね」
「さらに先がある……ステファニー様はどこまで魔術の神髄に近づいてらっしゃるのでしょう」
魔術の神髄――ね。それを言うならば我が娘は既に賢者サルバトーレに近しい場所にいて、私はそれを追いかけている立場なのよ。応用は得意でも、あのような発想は早々は生まれない。神に近しい領域だと私は思っている。まぁ、まだ娘に負けるような母ではありませんが。
「さぁ、それは私も分からないわね。ただ、貴女には我が娘やアリエル殿下を陰ながら守るように人員や環境などにも配慮をして欲しいところもあるのよね」
「しかし、ならばこそ、アリエル殿下の飛び級は考えてもよいのではないですか?」
と、彼女は圧のある視線でそう言った。それを聞いたキャロルは意外そうな表情を浮かべますが、すぐに興味深そうに「あら」と、小さく呟く。なんだか、楽しくなってきているわね。
「どういった考えで先生はそう言っているの?」
キャロルは素の言葉で言った。まぁ、三人の子の中でアリエルは難産だった為に他の子らより甘いのは赤ん坊の頃から変わっていない。しかし、世情がそれを許していないからの流れだったが、最近は本当に可愛がっていて、王宮外に隠すのも難しくなっていたところもあるわけだけど、動くには王権派の面倒な方々が味方であると確証が持てなければ難しいでしょう。
「学園都市であるキラルート・キラフィス王立魔法学園はミストリア内にある自治独立した場ではありますが、王家の忠実な僕であり賢者サルバトーレの弟子の一人、キラフィスの系譜であるヒースクリフ・ヒクト・キラフィスが治める場所でございます。殿下達のお言葉によれば、アリエル王女殿下とエステリア嬢はどちらも奇才なのでございましょう? で、あればこそお二人に暴れて頂いた方がパルプスト公含む貴族派閥を押し込めることも出来るので無いかと。貴女達のように」
と、彼女はどこか挑戦的なことを言ったわけだけど、正直言って私もキャロルも思わず面白そうだと思ってしまうのでした。
これはエステリアが見つけた応用魔術理論に関しての基礎部分になる話だ。当然、私はまだ応用魔術理論がどういったモノかという話を一部の人間にしか広めていない。エステリアも自身の周囲には話をしているが、各家にそれが漏れていることは無く――と、いいますか、ここは旦那様も動いていて確実に情報統制されている。
「魔法や魔術が魔石に込められるのは一つのみ。これは遥か昔からの定説でありますが、ステファニー様がそう訊くということは違うのですね?」
「さすが先生ね。これは我が娘エステリアが見つけたことで、魔石に込められる魔術は一つの術式よ。これは魔法であっても魔術であっても同じ。そして、ここからが重要なのだけど、魔術というのは術式の組合せで一つの術と出来るモノで、魔法がイメージによって構築されるわけだけど、魔術というのは理論的に構築された術式によって作られる」
私の言葉に学園長は興味深そう――と、いうよりも獰猛な目の輝きを見せる。まぁ、魔術師である者は基本的にこういう手合いが多く、この話は今までの価値観が変わるほどの発見なのだから、その反応は当然といえますね。
「様々な機能を持った魔道具にしてはあまりにも小さいと思っていましたが、それが関係しているのですね」
「ええ、理解出来れば魔法にも影響が出ます。今までであれば複数の魔法を幾重にも発動する事で行っていた高速化や強力な魔法の構築が術式による構築に変わることで、より複雑で多層的な魔法に変えることが出来ます」
「――と、いうことはそういった魔法を魔道具の魔石に込めるということですか?」
まぁ、普通はそう考えますわね。私も初めはそういう考えでしたが、エステリアは全く違う考えを示した。おかげで今の理論が構築されているのです。
「可能ではありますが、それだと非常に高い魔力が必要となり、扱える者が限られてしまう。それはこれからの時代の魔道具は少ない魔力で動かせることも大事なのです。故に複数の魔石を使ってそれぞれの術式が連動するような仕組みになっているのです」
「そ、そのような事が可能なのですか?」
「それを可能とするのが、新しい魔術理論だ。興味が湧いたであろう?」
と、キャロルは自慢気にそう言ったのですが、貴女が自慢気にするのは違うと思うけれど、まぁ、可愛い妹のおちゃめな姿を見て、思わず可愛らしいと思うわけですが。
「そして、私とキャロルは今後、このミストリアに新しい学園を作ろうと動いています。高学では教えないような専門技術や知識を学び、より強い国にする為の者達を育てる場所を用意したいのです」
「それを私に話すという事は――」
「それ以上は言わんでもわかるであろう?」
キャロルは悪戯っぽい表情でそう言ったわけですが、まったく子供っぽさは未だに変わらないわね。でも、それを聞いた彼女は驚きの表情を浮かべ、私とキャロルに視線を動かしてから「なるほどですね」と、呟く。
「小学の段階から応用魔術理論を学ぶように学術長が言っていた理由にも繋がるわけですね。しかし、貴族派閥の者達にも技術を与えれば、思わぬ痛手を受ける可能性もありますよ?」
「多少は構わないわ。貴女が話さないと信じて言いますが、さらに上の理論がありますが、それは教えませんし、基本的に公開する気はありません――いいえ、公開できる時はもっと先になるでしょうね」
「さらに先がある……ステファニー様はどこまで魔術の神髄に近づいてらっしゃるのでしょう」
魔術の神髄――ね。それを言うならば我が娘は既に賢者サルバトーレに近しい場所にいて、私はそれを追いかけている立場なのよ。応用は得意でも、あのような発想は早々は生まれない。神に近しい領域だと私は思っている。まぁ、まだ娘に負けるような母ではありませんが。
「さぁ、それは私も分からないわね。ただ、貴女には我が娘やアリエル殿下を陰ながら守るように人員や環境などにも配慮をして欲しいところもあるのよね」
「しかし、ならばこそ、アリエル殿下の飛び級は考えてもよいのではないですか?」
と、彼女は圧のある視線でそう言った。それを聞いたキャロルは意外そうな表情を浮かべますが、すぐに興味深そうに「あら」と、小さく呟く。なんだか、楽しくなってきているわね。
「どういった考えで先生はそう言っているの?」
キャロルは素の言葉で言った。まぁ、三人の子の中でアリエルは難産だった為に他の子らより甘いのは赤ん坊の頃から変わっていない。しかし、世情がそれを許していないからの流れだったが、最近は本当に可愛がっていて、王宮外に隠すのも難しくなっていたところもあるわけだけど、動くには王権派の面倒な方々が味方であると確証が持てなければ難しいでしょう。
「学園都市であるキラルート・キラフィス王立魔法学園はミストリア内にある自治独立した場ではありますが、王家の忠実な僕であり賢者サルバトーレの弟子の一人、キラフィスの系譜であるヒースクリフ・ヒクト・キラフィスが治める場所でございます。殿下達のお言葉によれば、アリエル王女殿下とエステリア嬢はどちらも奇才なのでございましょう? で、あればこそお二人に暴れて頂いた方がパルプスト公含む貴族派閥を押し込めることも出来るので無いかと。貴女達のように」
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