悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
上 下
205 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

206.悪役令嬢は王女と共に今後を語る

しおりを挟む
 午後の発表という名の学園長の長ったらしい話が終わり、会場は最後の競技に向けて準備が行われている。最終競技は複数用意された的がランダムに登場し、規定時間の間にどれだけの的を的確に当てれたかを競う競技になる。

「因みにエステリアが出ていればどうなった?」
「そういう事を聞くなら、もしアリエルが出るなら優勝する自身があるのかしら?」

 と、少し意地悪な質問返しをしつつ、実際、リンリィと競う事になる状況で勝てるのか? と、いうところなのだけど、魔力量的な面でごり押せてしまえる部分があるので、私の方が有利ではあるのよね。

「エステリアがいなければ勝つのは当然、私になるだろうな。しかし、エステリアが質問に質問で返すということはそれだけリンリィの実力が高いということか?」
「正直なところ、魔力量でどうにかなるところは私達の方が当然優位なのだけどね。ただ、魔力操作はリンリィの方が上手いと思うのよね。いかに少ない魔力でって考え方が生み出したモノだと思うのだけどね」

 そうなってくると一番変わってくるのはこの最終競技で分かるハズなのよね。何よりも魔力が多いデメリットが一応存在するのよね。術式である程度はカバー出来るけれど、同じことが出来るリンリィの方が確実に私よりもほんの一瞬早く術式展開出来る――のだと、私は考えている。

「エステリアがそこまで言うほどなのか」
「まぁ、実戦であれば確実に勝てるけれど、こういったルールの中であれば、彼女は強いわよ。特に速度を競う競技だったりすれば、私の予想が正しければ確実に私とアリエルは勝てないと思うわ」

 私の言葉にアリエルは楽し気に「ほう」と、呟く。そう考えれば考える程、お母様って本当に化物クラスの魔術師なのよね。私やリンリィの考えを聞いて確実にそれを上回る技術や精度を見せられ続けているのだから。

「では、母上や伯母様とは?」
「それは勝負になるわけないでしょ。あの二人は大帝国を探しても上位に入る傑物なのだから」
「流石にそれはそうか」

 そう聞いて即座に納得するのは、お母様や女王キャロラインとも模擬戦をしたことがあるアリエルは知っているからこそでしょうね。私は女王キャロラインとは相手して貰った事がないので、知らないけれど、お母様も女王キャロラインの方が魔法では上と言っていただけじゃなく、魔術の理解度も非常に高いレベルだと聞いているから、お母様同等と考えるのが妥当でしょ。

「して、今回の件で今後が変わると思うか?」

 アリエルは王女たらんとする表情でそう言った。私は静かに「変わるでしょうね」と、返す。既に色々なところでゲームには無かったことが多く起こっているけれど、応用魔術理論が広がれば確実にこの国は変わらざるを得ない。ただ、以前より気になっていた隣国や南方関連の問題が必ず表面化するハズなんだけど。これによって起こる事――ってのが、アレなのよね。

「では、じきに戦《いくさ》が起こるだろうな」

 と、アリエルは短くそう言った。あくまでも可能性の話ではあるけれど、元々ミストリアは周辺国との関係が良い国ではない。国府連合が安定していた頃から、周辺国とはもめ続けていて、その原因というのは他国に比べて魔導洞窟ダンジョンが多いこと、聖イーフレイ帝国との繋がりが強いことなど、色々と要因はある。

 故に内外に敵が多くいる状況が長く続きながらも王家の強さもあって、国を維持しているだけとも言えたのだけど、今は王家が単純に強いというわけでは無い。実際、武力という面で考えると強いのだけど、政治的な面や派閥的な面ではそこまで強いというわけでは無い。特に貴族派閥が広く力を持っているせいで火種として長年くすぶっている。

 そして、今回の応用魔術理論が広がれば確実に周辺国は敵対か融和の選択に入る。北の女王は同盟と商売を優先してくるだろうから、戦争という選択は取らないだろう。そうなると西と東――特に東の隣国であり、『とにキラ』二作目の舞台であるスーリアルがもっとも警戒しなければならないでしょうね。

「可能性ではあるけど、絶対とはいえないからね」
「まぁ、そうであればよいがな……」

 彼女は苦笑しつつ呟くようにそう言った。彼女が確信めいた表情をしているのは王宮で、様々な情報を得ている。とくに、女王キャロラインやランパート公からも様々な勉強をしている。当然、周辺国の情報は知っている。そして、私達は隣国の事情に詳しい。ゲーム内でもゲーム外の考察コミュの人達の考察とかも含めれば、結構な情報を持っていると言える。それを考えれば遠くない未来に戦が起こる確率は非常に高い。

「ある意味、あちらは来るだろうし欲するだろう?」
「それは当然、そうだけどね。出来れば来ないことを願いたいでしょ?」
「――まぁ、確かに」

 そう言いながらもアリエルは早く来てほしそうに小さく微笑むのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...