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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
205.悪役令嬢は王女と午後の発表を見る
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食事会を終えたわけだけど、いつメンとは殆ど会話をする暇も無く、時間的な問題もあってリンリィには「頑張ってね」の一言しか言えなかったけれども、彼女は優しく微笑んでいたので、心配はなさそうだった。
そして、再びアリエルと特別観覧席に戻って来たわけだけど、アリエルの第一声は「はぁ、つまらない」だった。ま、公式な場での食事会なんてそういうモノだと思う。けれども、アリエルはアレだけの人数を笑顔で捌いたわけだから、その発言も納得だ。
「疲れたからって、居眠りとかしないでね」
「流石にそれはないから心配しなくていい」
と、アリエルは楽し気にそう言う。けれども、ちゃんと見張っておくわよ。
「お、アーマリア侯爵とハーブスト公爵夫人のご登場だな」
アリエルの言葉に私は「そうね」と、短く答え周囲のざわつきに視線を移す。今回、魔法競技大会でこういった催しが行われるのは異例で、学術関連の長であるリンリィの母親であるアーマリア侯爵が出てくることは誰も疑問には思わないだろうけれど、それにお母様がいることは普通の事では無いので、特に大人達の視線がお母様に集まっているのが分かる。
『今回、新しい学術的な発表がありましたので、王家の方からの依頼でこの時間を持たせて頂きました。こちらにおられるハーブスト公爵夫人、ステファニー様より発表が御座いますので、皆様、傾聴頂きたく思います』
と、アーマリア侯爵は拡声器の魔道具をお母様に手渡そうとするが、お母様はにこやかにそれを断り、瞬時に魔法を発動させる。
『魔法技術大会ということですから、こちらの方がいいでしょう』
拡声器の魔道具を使わずに会場の様々なところから自然にお母様の声が聴こえる。瞬時に多重発動された魔法――と、いうよりもこれは魔術と魔法が組み合わさったものだ。魔法の熟練者でも何が起こっているか即座に理解するのは難しいでしょうね。
『賢者サルバトーレの伝説にある言葉に『魔法とは無限の可能性を秘める技術だ』と、ありますが、魔術も同様に魔法と同じく無限の可能性を秘める技です。私が今使っている魔法も根幹部分は魔術の技術であり、今後、正式に応用魔術理論として発表させて頂きます。こちらに関してはミストリア学術議会での論文発表になりますので、ご興味のある方は是非にミストリア学術議会への問い合わせをよろしくお願いしますわ』
お母様とアーマリア侯爵であるリンリィの母親はそう言って会場を後にする。もっと、解説とかをするのかと思っていたのに、なんというか――投げっぱなしジャーマンごとく、力強く話題だけ放り投げて去って行くというのは、反則ではないかしら。
「さすが伯母様――でなくて伯母上。面白いじゃないか、会場内に凄い数の魔法を瞬時に発動させて、ただの魔法では無く魔術の技術だと言って、後は学術議会に問い合わせろ。と、いうのは面白い以外に言葉が出てこぬ」
「確かに簡単には教えないわ。と、いう感じなんでしょ。お母様も更なる知識については継承可能な相手を絞るのは当然だし、今後、ミストリアがもっとまとまればあれでしょうけど」
「――なるほど。それは当然だな」
と、私とアリエルは小声でそんなやり取りをしつつ、その後の様子を見守る――と、言っても何もすることは無いし、心配もしていない。
そして、次に会場では学園長が上がって来る。今日の大会で久方ぶりに見た学園長だけど、相変わらず圧のある雰囲気がなんとも変わったお婆様よね。
「そういえば、あの学園長は母上達が若かりし頃、家庭教師をしていたらしいぞ。簡単に言えば魔法の師らしい」
「あら? そうなの?」
「うむ、母上から聞いた話だから、嘘偽りは無いだろう。因みに言えば『女王陛下の信奉者』と、呼ばれているらしい」
それは初耳だ。
『皆様、特別な時間を楽しんで頂いていると思いますが、来年から教育指針の変更を行うことを発表させて頂く。今後、ハーブスト公爵夫人であるステファニー様が提唱する応用魔術理論の基礎について、授業を必修科目として学んで頂きます。また、こちらはまだ決まってはいませんが、高学でも同様に必修科目となると考えて頂きます』
と、その後も長々と学園長は語っているけれど、応用魔術理論が必修科目になることで、ゲームであった授業関連の話が変わってくる可能性があるけれど、まぁ、そこはまた皆に情報共有しておかないといけないわね。
「そういえば、エステリアが目を掛けている者達はどこまで履修しているんだ?」
「そうね、まだ基礎部分ではあるけれど、小学で教わる程度の話は既に終わっていると思って貰えるかしら?」
「私と比べてはどうだ?」
「アリエルの方が理解出来ていると思うわよ。それに私達の場合はそこらへんの理解はある意味、反則だからね」
アリエルやウィンディは苦手な傾向はあっても、基礎部分の理解は前世の記憶で簡単に受け入れれている事を考えると、この世界の人と比べて確実に突出しているのよね。まぁ、それを簡単に理解してしまうお母様が異常なだけなのよね。
そして、再びアリエルと特別観覧席に戻って来たわけだけど、アリエルの第一声は「はぁ、つまらない」だった。ま、公式な場での食事会なんてそういうモノだと思う。けれども、アリエルはアレだけの人数を笑顔で捌いたわけだから、その発言も納得だ。
「疲れたからって、居眠りとかしないでね」
「流石にそれはないから心配しなくていい」
と、アリエルは楽し気にそう言う。けれども、ちゃんと見張っておくわよ。
「お、アーマリア侯爵とハーブスト公爵夫人のご登場だな」
アリエルの言葉に私は「そうね」と、短く答え周囲のざわつきに視線を移す。今回、魔法競技大会でこういった催しが行われるのは異例で、学術関連の長であるリンリィの母親であるアーマリア侯爵が出てくることは誰も疑問には思わないだろうけれど、それにお母様がいることは普通の事では無いので、特に大人達の視線がお母様に集まっているのが分かる。
『今回、新しい学術的な発表がありましたので、王家の方からの依頼でこの時間を持たせて頂きました。こちらにおられるハーブスト公爵夫人、ステファニー様より発表が御座いますので、皆様、傾聴頂きたく思います』
と、アーマリア侯爵は拡声器の魔道具をお母様に手渡そうとするが、お母様はにこやかにそれを断り、瞬時に魔法を発動させる。
『魔法技術大会ということですから、こちらの方がいいでしょう』
拡声器の魔道具を使わずに会場の様々なところから自然にお母様の声が聴こえる。瞬時に多重発動された魔法――と、いうよりもこれは魔術と魔法が組み合わさったものだ。魔法の熟練者でも何が起こっているか即座に理解するのは難しいでしょうね。
『賢者サルバトーレの伝説にある言葉に『魔法とは無限の可能性を秘める技術だ』と、ありますが、魔術も同様に魔法と同じく無限の可能性を秘める技です。私が今使っている魔法も根幹部分は魔術の技術であり、今後、正式に応用魔術理論として発表させて頂きます。こちらに関してはミストリア学術議会での論文発表になりますので、ご興味のある方は是非にミストリア学術議会への問い合わせをよろしくお願いしますわ』
お母様とアーマリア侯爵であるリンリィの母親はそう言って会場を後にする。もっと、解説とかをするのかと思っていたのに、なんというか――投げっぱなしジャーマンごとく、力強く話題だけ放り投げて去って行くというのは、反則ではないかしら。
「さすが伯母様――でなくて伯母上。面白いじゃないか、会場内に凄い数の魔法を瞬時に発動させて、ただの魔法では無く魔術の技術だと言って、後は学術議会に問い合わせろ。と、いうのは面白い以外に言葉が出てこぬ」
「確かに簡単には教えないわ。と、いう感じなんでしょ。お母様も更なる知識については継承可能な相手を絞るのは当然だし、今後、ミストリアがもっとまとまればあれでしょうけど」
「――なるほど。それは当然だな」
と、私とアリエルは小声でそんなやり取りをしつつ、その後の様子を見守る――と、言っても何もすることは無いし、心配もしていない。
そして、次に会場では学園長が上がって来る。今日の大会で久方ぶりに見た学園長だけど、相変わらず圧のある雰囲気がなんとも変わったお婆様よね。
「そういえば、あの学園長は母上達が若かりし頃、家庭教師をしていたらしいぞ。簡単に言えば魔法の師らしい」
「あら? そうなの?」
「うむ、母上から聞いた話だから、嘘偽りは無いだろう。因みに言えば『女王陛下の信奉者』と、呼ばれているらしい」
それは初耳だ。
『皆様、特別な時間を楽しんで頂いていると思いますが、来年から教育指針の変更を行うことを発表させて頂く。今後、ハーブスト公爵夫人であるステファニー様が提唱する応用魔術理論の基礎について、授業を必修科目として学んで頂きます。また、こちらはまだ決まってはいませんが、高学でも同様に必修科目となると考えて頂きます』
と、その後も長々と学園長は語っているけれど、応用魔術理論が必修科目になることで、ゲームであった授業関連の話が変わってくる可能性があるけれど、まぁ、そこはまた皆に情報共有しておかないといけないわね。
「そういえば、エステリアが目を掛けている者達はどこまで履修しているんだ?」
「そうね、まだ基礎部分ではあるけれど、小学で教わる程度の話は既に終わっていると思って貰えるかしら?」
「私と比べてはどうだ?」
「アリエルの方が理解出来ていると思うわよ。それに私達の場合はそこらへんの理解はある意味、反則だからね」
アリエルやウィンディは苦手な傾向はあっても、基礎部分の理解は前世の記憶で簡単に受け入れれている事を考えると、この世界の人と比べて確実に突出しているのよね。まぁ、それを簡単に理解してしまうお母様が異常なだけなのよね。
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