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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
204.悪役令嬢を見た狸爺の思うところ
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「おっと、あまりにもハーブスト公爵家の方々の時間を取るわけにもいかないですな。それではまたエステリア嬢も健やかにお過ごしあそばれよ」
そう言って、私はその場を足場やに去る。少し考える時間が必要だと、周囲から気配を消しつつソッと会場から一時的に離れる。
数代前まではハーブスト公爵家というのは王家からは最も遠い公爵家という状況であったのに、今では最も王家に近い家として多くの者達が認識している。代々謀に長け
た人物が多いが故に多くの者達から警戒されている――まぁ、現当主もそっち方面が得意な男である印象だ。しかし、あの氷の乙女とも言われたステファニー殿下があそこまで変わられるとは誰も思わなかっただろう。
それは良いとして、その娘――アレは一体なんだ? 10歳の娘が行う対応か? そう思いながら、あの双子姉妹を思い出し、我は身を震わせる。
あれらが恐ろしい化物のように感じるのは我だけだろうか? あの姉妹の娘だぞ。多くの者が噂する、ハーブストの妖精姫。妖精のような可愛らしいモノでは無い。ただでさえ、今の女王陛下やステファニー殿下のような化物と同じような雰囲気がある――それに彼女が褒めちぎっていた王女殿下もそうだ。私は今のミストリアの王家、特に女傑たちが恐ろしい。のだが、多くの者達はそれが分からぬようだ。
我が家は王権派とよく言われる――まぁ、一昔前はそう言われても問題が無いほどに王家の為に国府の為に尽力を尽くして来た。しかし、我は今の王家の最上位である女傑姉妹が恐ろしいのだ。そして、またその娘達も恐ろしい。
クリフト殿下は優秀過ぎるアリエル殿下の影に怯えているのか、独善的な行動に走っているようだ。リストリア殿下は宮殿から一切出てこず、引き籠られている。しかも、随分と酷い生活を送っているらしい。なんとも、我は道を探さねばならぬ、これから荒れるであろうミストリアの中で上手く生き残らねばならん。
いま、大帝国は多くのところで荒れ始めているのだ。なんとしたものかな。
ランパート公も、どうもハーブスト公と随分と近しいようだ。パルプスト公は色々と危惧されているが、どうだろうな。真に正しい道はどこにある?
隣国の動きだけでは無い。国内もおかしな技術が入り始めているようなのだが、我の情報によれば出所はハーブスト公爵領なのだ。分からぬ、何も分からぬ。我が家の影達の活動もどこからか、阻害されておるわけだが、やはり国を荒らす者達がパルプストかハーブストに力を貸している。そう考えるしかあるまい。
しかし、そうなるとハーブストの動きはおかしい。女王陛下と蜜月な風に見えるのは間違いない。が、不可思議な物が流通し始めるのは大概がハーブストなのだ。しかも、彼奴らは謀や暗躍という分野において、ミストリアではパルプストを確実に上回っておる。
全く、今の王族はどうなっているのだ。あー、考えたくは無いのう。ミストリアはあの女傑達の力がより強くなっていく――と、いうことか?
なんとも恐ろしい。恐ろしい話だ。
我は生き残る為に主を鞍替えし、戦に生き残り、しばしの平和を享受したわけだが、我が子らは今後起こる動乱に家を残す事が出来るだろうか?
そう考えると、我がどうにかせねばならぬという想いが沸いて来るわけだが――アレの子らも恐ろしい何かなのだ。どの情勢に乗るのが正解か、真剣に考えねばならぬな。
「ヴィジタリア公、このようなところでどうされましたか?」
と、学園長であるキャシエル・ラーセ・ベスティンハーフが我に気が付いてやって来る。なんとも食えぬ婆ぁだが、我は表情を隠して微笑む。
「少し、外の空気を吸いたくてな。キャシエルはどうされたのだ?」
「食事会がもう少しで始まるところ、公が抜け出すのを見つけてしまってね。いつもの人酔いかい?」
「まぁ、そのようなところだよ」
彼女は我が母の妹の娘で従妹という関係であり、我なんかよりまさに王権派と呼ばれるに相応しい者で、女王陛下の家庭教師をしていた時期もある双子姉妹の信者でもある食えぬ婆ぁだ。
「あまりキャロライン様やステファニー様の迷惑にならないように気を付けなよ。さぁ、会場へ戻るよ」
と、キャシエルはそう言ってさっさと歩いていく。なんともあの女傑達の信者はこれだから困るのだ。はぁ、しかし、時間もあるだろうから、戻ってやらんでもない。などと思いつつ我も彼女の後について会場へ足を向ける。
今後の事をもっと考えねばならぬな。
そう言って、私はその場を足場やに去る。少し考える時間が必要だと、周囲から気配を消しつつソッと会場から一時的に離れる。
数代前まではハーブスト公爵家というのは王家からは最も遠い公爵家という状況であったのに、今では最も王家に近い家として多くの者達が認識している。代々謀に長け
た人物が多いが故に多くの者達から警戒されている――まぁ、現当主もそっち方面が得意な男である印象だ。しかし、あの氷の乙女とも言われたステファニー殿下があそこまで変わられるとは誰も思わなかっただろう。
それは良いとして、その娘――アレは一体なんだ? 10歳の娘が行う対応か? そう思いながら、あの双子姉妹を思い出し、我は身を震わせる。
あれらが恐ろしい化物のように感じるのは我だけだろうか? あの姉妹の娘だぞ。多くの者が噂する、ハーブストの妖精姫。妖精のような可愛らしいモノでは無い。ただでさえ、今の女王陛下やステファニー殿下のような化物と同じような雰囲気がある――それに彼女が褒めちぎっていた王女殿下もそうだ。私は今のミストリアの王家、特に女傑たちが恐ろしい。のだが、多くの者達はそれが分からぬようだ。
我が家は王権派とよく言われる――まぁ、一昔前はそう言われても問題が無いほどに王家の為に国府の為に尽力を尽くして来た。しかし、我は今の王家の最上位である女傑姉妹が恐ろしいのだ。そして、またその娘達も恐ろしい。
クリフト殿下は優秀過ぎるアリエル殿下の影に怯えているのか、独善的な行動に走っているようだ。リストリア殿下は宮殿から一切出てこず、引き籠られている。しかも、随分と酷い生活を送っているらしい。なんとも、我は道を探さねばならぬ、これから荒れるであろうミストリアの中で上手く生き残らねばならん。
いま、大帝国は多くのところで荒れ始めているのだ。なんとしたものかな。
ランパート公も、どうもハーブスト公と随分と近しいようだ。パルプスト公は色々と危惧されているが、どうだろうな。真に正しい道はどこにある?
隣国の動きだけでは無い。国内もおかしな技術が入り始めているようなのだが、我の情報によれば出所はハーブスト公爵領なのだ。分からぬ、何も分からぬ。我が家の影達の活動もどこからか、阻害されておるわけだが、やはり国を荒らす者達がパルプストかハーブストに力を貸している。そう考えるしかあるまい。
しかし、そうなるとハーブストの動きはおかしい。女王陛下と蜜月な風に見えるのは間違いない。が、不可思議な物が流通し始めるのは大概がハーブストなのだ。しかも、彼奴らは謀や暗躍という分野において、ミストリアではパルプストを確実に上回っておる。
全く、今の王族はどうなっているのだ。あー、考えたくは無いのう。ミストリアはあの女傑達の力がより強くなっていく――と、いうことか?
なんとも恐ろしい。恐ろしい話だ。
我は生き残る為に主を鞍替えし、戦に生き残り、しばしの平和を享受したわけだが、我が子らは今後起こる動乱に家を残す事が出来るだろうか?
そう考えると、我がどうにかせねばならぬという想いが沸いて来るわけだが――アレの子らも恐ろしい何かなのだ。どの情勢に乗るのが正解か、真剣に考えねばならぬな。
「ヴィジタリア公、このようなところでどうされましたか?」
と、学園長であるキャシエル・ラーセ・ベスティンハーフが我に気が付いてやって来る。なんとも食えぬ婆ぁだが、我は表情を隠して微笑む。
「少し、外の空気を吸いたくてな。キャシエルはどうされたのだ?」
「食事会がもう少しで始まるところ、公が抜け出すのを見つけてしまってね。いつもの人酔いかい?」
「まぁ、そのようなところだよ」
彼女は我が母の妹の娘で従妹という関係であり、我なんかよりまさに王権派と呼ばれるに相応しい者で、女王陛下の家庭教師をしていた時期もある双子姉妹の信者でもある食えぬ婆ぁだ。
「あまりキャロライン様やステファニー様の迷惑にならないように気を付けなよ。さぁ、会場へ戻るよ」
と、キャシエルはそう言ってさっさと歩いていく。なんともあの女傑達の信者はこれだから困るのだ。はぁ、しかし、時間もあるだろうから、戻ってやらんでもない。などと思いつつ我も彼女の後について会場へ足を向ける。
今後の事をもっと考えねばならぬな。
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