悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

201.悪役令嬢は王女様と共に魔法技術大会を観戦する

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『すごい、すさまじぃ! 十枚抜きだぁぁぁぁぁ!!! アーマリア侯爵令嬢の風魔法が全てのレンズを貫いたぁ!!!』

 司会進行を行っている最上級生の生徒って、どこの家の人なのかしらね。なんというか、うるさいというか、なんというか。そんな事を私が思っていると、アリエルが不思議そうな顔をしていた。

「あら、どうしたの?」
「うむ。そこまでの魔力量を使っていない魔法なのに凄い威力だと思うのだが、なんというか――魔法の威力というのは、威力を上げるイメージというのは凄く魔力を必要とすると思うのだが、リンリィは省エネで威力の高い魔法を作り上げたということになるだろう?」
「そうね。私はその方法を幾つか思い浮かぶけれど、それは魔術に基づいているから、魔法という固定観念がなかなかに邪魔をして難易度は結構高いと言えるわね」

 分かるとそこまで難しくは無いのだけど、普段から魔力でどうにかしていると気付きにくくはあるわね。そういう私もリンリィに言われて気が付いたのだから、アリエルみたいに膨大な魔力を生かしてバカスカ魔法を使うタイプには使えるようになるには結構な時間と訓練が必要になるかもしれない。

 因みに私はリンリィには及ばないけれど、ある程度は扱える。ここも魔術的な部分を分かっているからだけど、逆に応用魔術理論を理解していない者にはなかなかに難しいだろう。

「魔術に基づいていると――なると、それは果たして魔法といえるのか?」

 まぁ、普通はそう考えるわね。魔術に魔法を内包させることが出来るのと同じで魔法に魔術を内包させることが出来ることを考えれば、根幹である部分というのはどちらも変わらない。

「魔術の術式内に魔法を組み込むことが出来るのだけど、その場合もそれは魔術といえるのかしら?」
「――なるほど。もしかして、魔法と魔術は似て非なるモノだと思っていたが、方法論が違うだけで同質のモノということか」
「そう言えるわね。リンリィは根幹は同じモノだと考えていたわ。私も言われるまで気付かなかったくらいよ」
「アレもそう言う意味では傑物ってことか」

 と、アリエルは楽し気にそう言った。まぁ、ここは人の目も耳もあるから転生者とは言えないわね。でも、傑物と評するのは少し自信過剰な気がするけど、まぁ、いいわ。

「それにしても、一つの競技が終わるたびに会場の準備が大変そうだな」
「確かにそうね。でも、その間に審査員達も点数のまとめとか、色々しているのでしょう」
「さて、次の競技はなんだったか――」
「次は魔法属性の競技ね。さっきと似たような魔道具で各属性の威力とか精度を見るってことじゃないかしら?」
「なんだか、派手さは全く無いな」

 アリエルはそう言いながらも、楽しそうではある。

「この競技の後に昼食時間があって、その後に学術長から、何か発表があると聞いているが、エステリアは知っている?」

 学術長――アーマリア侯爵ね。たぶんだけど、お母様も壇上されるって話だから、応用魔術理論などについての話が出るのでしょうね。ここで発表する意味というのはそこまで大きくは無いだろうけど、この後に女王キャロラインから各貴族向けに色々と発表があるだろう。ある意味、時代が動く瞬間とも言えるわね。

「ええ、例の理論が公表されるわ」
「――とうとうか」
「一応、理論的にな部分が発表されたとしても、魔術を軽んじている者達には全くもって浸透しないだろう――と、いうのがお母様の意見」

 結局のところ、学園でも魔術は専門の授業は存在しない。魔法学から言えば魔術というのは魔法の劣化版という意味合いが強い所為もある。特に貴族派閥では魔法という力を非常に特別視している傾向がある。

 この世界においては貴族や平民であっても魔法が使える者が殆どではある。しかし、生まれ持った魔力というのは血筋に大きく関係している。故に貴族である者達は平民と比べて、多くの魔力量を持っている。私やアリエルも基礎的な魔力量の多さというのは血筋に依存しているモノだと認識している――まぁ、ここは魔力量が増やせるという方法を理解している所為で、他の貴族達に比べても多いと思うけどね。

 ミストリアや北のユーアフトリアでは魔術師――いわゆる魔法を使える者を重視しており、その人数も非常に多いわけだけど、不思議な事に近隣諸国でも東の国々は魔法を扱える者が少ない。西は国にもよるけど、傾向的には強力な魔法を扱える者は帝国で取り立てられる傾向がある所為でお母様や女王キャロラインのような突出した魔術師はいない。

 故により魔法を扱えるという存在は希少で貴族の地位が高く、平民を見下す傾向にあるらしい。なんとも――と、いった感じよね。

「なるほど。確かに貴族派閥ではより強い魔法が使えるのを誇るみたいな傾向があるな。正直、そんなところで貴族としての価値が決まるとは私は思わないけど」
「うーん、まぁ、それは確かにそうね。でも、戦が始まればそうとも言えないこともあるかもしれないわよ」

 実際、周辺国の動きがキナ臭くなっているという話もあるわけで、戦となれば魔法の実力は当然、力と直結する話なのよね。ミストリアでは女王キャロラインがこの国において最強の存在だから、特にこの問題はずっと続きそうな話なのよね。

「ん、次の競技の準備が出来たようだな。楽しませてくれる者が現れるとよいな」

 と、アリエルは楽しそうにそう言いながら、手元に用意された菓子を口に運ぶのであった。
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