悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

198.悪役令嬢の母親の弟子は魔法技術大会で活躍する その1

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「出場者はこちらの控室をお使いください」

 と、大会の運営に携わっているであろう生徒がそう言って会場建物内にある控室がある廊下を示し、私は小さな不安を心に抱えたまま、控室へ向かう。途中で別の生徒が名簿を持っており、上位の貴族子息令嬢はこちらへと呼びかけをしていたので、私はその者に名乗りを上げようとするけれど、私の専属メイドである、キュリアが生徒に話しかけ、その者は丁寧な挨拶をしてから、私達を控室に案内して貰った。

「では、開始前にお呼びいたします」

 その者はそう言って去り、私は小さくは――ないけれど、我が家やエステリア様の部屋からすれば随分と狭くはある。普段の生活に慣れてしまうとこういう部分で貴族の生活に慣れてしまっているのだなと、思い、つい小さく微笑んでしまう。

 今の部屋の広さを考えると前世であっても、落ち着かないだろう。と、思いつつ私は術式のメモを空間収納アイテムボックスから取り出して見ていると、控室の扉が叩かれる。

『申し訳ありません、お客様がお見えです』

 と、先程の生徒がどこか焦ったような声で扉の前で声を上げた。控室にお客様が来るということがあるとキュリアが言っていたわね。キュリアが即座に対応する為に部屋を出たけれど、すぐに扉が開かれ、最近、会ったばかりではあるのだけど、まさかの人物が目の前に現れ、私は思わず驚いてしまう。

「やぁ、リンリィ嬢。母上に様子を見て来るように言われてね」

 そう言った彼はエステリア様の兄で我が師匠ステファニー様の次男であるディラン様だ。話せば色々あるのだけど、最近、何故か色々と構われているのだけど、彼の真意は全くもって私には分からない。

 超絶美少女のエステリア様のお兄様なのでイケメンなのは当たり前ではあるのですが、なんというか飄々とした雰囲気を見るとステファニー様とも随分雰囲気が違っていて、ハーブスト公爵様とも比べると随分と軽い感じがする不思議な方です。

「あ、ありがとうございます。お師匠様は何か仰ってましたか?」
「ああ、控室で待たされる時間が長いから話し相手に困るだろうからって、言っていたよ」

 それでどうして貴方がここに来るのでしょうか? 全く、流れがよくわかりません。

「敷地的な問題もあるが、さすがに狭いね。と、言っても下位の貴族や平民ではそうは思ないのだろうね。そういえば、彼等の寮の部屋はこの控室よりも狭いらしいよ」
「そうなのですか? 平民であれば、仕方ないのかもしれませんが、子爵や男爵でもそうなのですか?」
「ああ、高学で仲良くなった者の話なんだけどね。小学の寮は平民は四人部屋、貴族でも二人部屋だそうだ。当然、使用人など連れてこれないらしいから、大変だったそうだよ」

 確か、ゲームでも似たような話があったと記憶しています。あれは高学の寮だとは思うけれど、家格によって部屋が違って伯爵位以下は二人部屋や四人部屋みたいな感じだったハズ。ヒロインの同室者はいわゆるお助けキャラで、ミリアリア・ニディアス子爵令嬢。彼女とは一度も会った事はない――まぁ、そもそも派閥違いというのが大きいわよね。バリバリの貴族派閥だもの。

 考えると、寮の同室になる各家って学園側から派閥的な配慮が存在するのかもしれないですね。

「そういえば、気になっていたんだが、キミは我が妹のことをどう思っているんだい?」
「どういう意味でしょうか?」

 私は何が言いたいのか分からずに首を傾げた。彼女は私と同じ転生者であり、色々と変わっているところはあるけれど、よいお友達であるわけだけど、どちらかと言えば私的には上司みたいな感じでもある。私の性格的な問題もあるわけだけど、嫌いでは無いけれど、すごく好き。とは違う感じなんだよね。

「うん、なんというか――ウチの妹は色々な意味で突出しているだろう?」
「確かにそうですね。エステリア様は幅広い知識をお持ちで視野も広く、貴賤を問わず、素晴らしい人物だと思っています」
「なるほどね。俯瞰してみている――と、いうわけだね。アンネマリー嬢みたいに親しい友人。と、いう感じとも違うんだ」
「――まぁ、そうですね。私はその、そういう感じの付き合いというのが苦手なので、申し訳ありませんが、私としては親しい上司。みたいな感じですね」

 と、私がハッキリというと、ディラン様は面白そうに微笑んで「なるほど、なるほど」と、呟いた。なんというか、この方は本当に本心が全く見えてこない不思議な人ですね。

『失礼します。アーマリア侯爵令嬢、そろそろお時間となります』

 扉が叩かれ、外からそう声が聞こえ、私は立ち上がり大きく、そして深く息を吐く。

「では、私も会場の方に戻ろうかな。よい時間つぶしになっただろうか?」
「――あ、はい。ありがとうございます」

 と、私が礼をいうと彼は私の頭を撫でで、「頑張ってね」と、言った。落ち着いていたつもりだったのに、私は心臓の鼓動がとても速くなるのを感じながら、彼が部屋から去るのを思わずボーっと見ていた。
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