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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
196.悪役令嬢はとある相談を受ける
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魔法競技大会まで後、一週間のある日のこと――
サロンへ向かう途中、リンリィから「少しご相談が……」と、言われ私は彼女からの相談を受ける事になり、サロン内にある個室に入る。
「さて――」
と、私は結界の魔道具を起動して、椅子にかけ、リンリィも椅子にかけるように促す。真面目リンリィはこの辺りの順序は非常に大事にする傾向にある。まぁ、真面目な事は悪い事じゃ無いわ。でも、人によっては堅苦しいと思うだろうけど、私はそこまで細かい事を気にする性分では無いわ。
「リンリィから二人きりで話がしたいなんて珍しいわね」
「すいません、どうしても相談しておきたいことがあったので」
お母様からの指示のハズだし、リンリィが相談したいということは余程のことだと考えるのが正解なのだろうか。うーん、考えても分からないわね。とりあえず話を聞きましょうか。
「どんな話なのかしら?」
「はい、どうやら私の母からも魔法技術大会に関しての発破をかけられまして、これはお師匠様から、お母様に色々と情報開示があったのだと思いました」
ああ、その件ね。お母様も私達の母親達の囲い込みをしたい旨を聞いていたのと、そろそろ応用魔術理論を公表する流れにしたいという部分の一環なのでしょう。
「そろそろお母様と女王陛下の間で応用魔術理論や新しい技術についての発表が近いのだと思うわ。たぶんだけど、リンリィの技術で皆を驚かしたい――と、いうよりもアーマリア侯爵家としても、結果を求めている。と、いうことなのかしらね」
「――はい、多分ですが」
と、リンリィは苦笑する。
「リンリィにとって、辛いのなら私はお母様に進言してもいいのよ?」
「いいえ、それには及びません。ただ、エステリア様に一応許可を頂きたかったことがありまして」
彼女はそう言って、一枚の紙を空間収納から取り出して、私に差し出し、それを手に取ってサラッと中身を確認する。
「――なるほどね」
そこに書かれていたのは彼女なりの考えで作られた魔法構築。これは正直な話ベースが魔法だけど、完全に魔術の領域で凄い省エネ魔法だといえる。
「展開速度はどれくらいのモノなの?」
私やアリエルのように膨大な魔力を強引に振り回すことで解決するみたいな事は普通は出来ない。リンリィも平均からすれば魔力量が多い方ではあるけれど、いかに無駄な魔力を使わず魔法を展開するか? と、いうのは結構大事な話だと思っている。私も最近は同じような構築を考えてはいたのよ。
「超加速から超超々加速くらいまでの速度が現実的なラインだと思っています」
「術式で作ったモノを魔法で再現するって考えると真逆の話よね」
「確かにそうですが、私はこちらの方が正しいのでは無いかと思う部分もありますね。キチンと術式をイメージ出来れば、魔法に転化出来ます。これは私の想像でしかないですけど、元々は魔法と魔術というのは同じモノでは無いかと思います」
と、リンリィの言葉に私は一種の衝撃を受けた。自身の思考の中で別のモノという思い込みがあったけれど、考えれば確かにそうなのかもしれない。ただ、魔法と魔術というのはあからさまに違う部分が存在する。
「イメージの部分って術式には現れないわよね。そこの部分がイコールにならないから、術式的に考えると本当にそれが魔法なのかわからないわよね」
「確かにそうですけど、キチンとした術式に則って魔法として使えば魔法となります」
彼女はそう言って小さな風を起こす魔法であるそよ風幾つも発動させた。しかも、見たところ、その術式はどうみても魔術であるけれど、瞬時に10個の魔法陣が浮かび、ふわりとした風が部屋の中に舞う。彼女の高い操作精度に私は驚きを隠せなかったが、それ以上に確かに浮かんだ魔法陣は魔法であり、その術式はキチンと応用魔術理論に則った魔術だった。
「なんだか、奇妙ではあるけれど、リンリィの仮説は正しいのかもしれないわね」
「この技術を魔法技術大会で使っても問題無いか聞きたかったのもあります」
「なるほどね――」
問題としてはこれが大会の審査員として参加する学園の教師達が魔法として認めるかどうかが、少し不安点ではあるけれど、ここはお母様と情報共有しておかないといかないかもしれないわね。
「一応、懸念点はあるけれどそれはそれでいいような気がする――けど、リンリィなら出来ると私は信じているわ」
と、私の言葉に彼女は小さく照れつつ微笑む。
でも、魔導回路なんかの技術――と、いうよりも賢者サルバトーレの技術にも似通った傾向がある魔術と魔法の組合せみたいな部分の解明に繋がる部分になるかもしれない。けど、魔法の部分で読み解くことが非常に困難だから、結局、魔術的に落とし込む方が楽な部分ではあるんだけど、その辺りの理論は探って行った方がいいのかもしれないわね。
そんな事を考えつつも、私とリンリィは話を終えて皆の元へ戻る事にするのだった。
サロンへ向かう途中、リンリィから「少しご相談が……」と、言われ私は彼女からの相談を受ける事になり、サロン内にある個室に入る。
「さて――」
と、私は結界の魔道具を起動して、椅子にかけ、リンリィも椅子にかけるように促す。真面目リンリィはこの辺りの順序は非常に大事にする傾向にある。まぁ、真面目な事は悪い事じゃ無いわ。でも、人によっては堅苦しいと思うだろうけど、私はそこまで細かい事を気にする性分では無いわ。
「リンリィから二人きりで話がしたいなんて珍しいわね」
「すいません、どうしても相談しておきたいことがあったので」
お母様からの指示のハズだし、リンリィが相談したいということは余程のことだと考えるのが正解なのだろうか。うーん、考えても分からないわね。とりあえず話を聞きましょうか。
「どんな話なのかしら?」
「はい、どうやら私の母からも魔法技術大会に関しての発破をかけられまして、これはお師匠様から、お母様に色々と情報開示があったのだと思いました」
ああ、その件ね。お母様も私達の母親達の囲い込みをしたい旨を聞いていたのと、そろそろ応用魔術理論を公表する流れにしたいという部分の一環なのでしょう。
「そろそろお母様と女王陛下の間で応用魔術理論や新しい技術についての発表が近いのだと思うわ。たぶんだけど、リンリィの技術で皆を驚かしたい――と、いうよりもアーマリア侯爵家としても、結果を求めている。と、いうことなのかしらね」
「――はい、多分ですが」
と、リンリィは苦笑する。
「リンリィにとって、辛いのなら私はお母様に進言してもいいのよ?」
「いいえ、それには及びません。ただ、エステリア様に一応許可を頂きたかったことがありまして」
彼女はそう言って、一枚の紙を空間収納から取り出して、私に差し出し、それを手に取ってサラッと中身を確認する。
「――なるほどね」
そこに書かれていたのは彼女なりの考えで作られた魔法構築。これは正直な話ベースが魔法だけど、完全に魔術の領域で凄い省エネ魔法だといえる。
「展開速度はどれくらいのモノなの?」
私やアリエルのように膨大な魔力を強引に振り回すことで解決するみたいな事は普通は出来ない。リンリィも平均からすれば魔力量が多い方ではあるけれど、いかに無駄な魔力を使わず魔法を展開するか? と、いうのは結構大事な話だと思っている。私も最近は同じような構築を考えてはいたのよ。
「超加速から超超々加速くらいまでの速度が現実的なラインだと思っています」
「術式で作ったモノを魔法で再現するって考えると真逆の話よね」
「確かにそうですが、私はこちらの方が正しいのでは無いかと思う部分もありますね。キチンと術式をイメージ出来れば、魔法に転化出来ます。これは私の想像でしかないですけど、元々は魔法と魔術というのは同じモノでは無いかと思います」
と、リンリィの言葉に私は一種の衝撃を受けた。自身の思考の中で別のモノという思い込みがあったけれど、考えれば確かにそうなのかもしれない。ただ、魔法と魔術というのはあからさまに違う部分が存在する。
「イメージの部分って術式には現れないわよね。そこの部分がイコールにならないから、術式的に考えると本当にそれが魔法なのかわからないわよね」
「確かにそうですけど、キチンとした術式に則って魔法として使えば魔法となります」
彼女はそう言って小さな風を起こす魔法であるそよ風幾つも発動させた。しかも、見たところ、その術式はどうみても魔術であるけれど、瞬時に10個の魔法陣が浮かび、ふわりとした風が部屋の中に舞う。彼女の高い操作精度に私は驚きを隠せなかったが、それ以上に確かに浮かんだ魔法陣は魔法であり、その術式はキチンと応用魔術理論に則った魔術だった。
「なんだか、奇妙ではあるけれど、リンリィの仮説は正しいのかもしれないわね」
「この技術を魔法技術大会で使っても問題無いか聞きたかったのもあります」
「なるほどね――」
問題としてはこれが大会の審査員として参加する学園の教師達が魔法として認めるかどうかが、少し不安点ではあるけれど、ここはお母様と情報共有しておかないといかないかもしれないわね。
「一応、懸念点はあるけれどそれはそれでいいような気がする――けど、リンリィなら出来ると私は信じているわ」
と、私の言葉に彼女は小さく照れつつ微笑む。
でも、魔導回路なんかの技術――と、いうよりも賢者サルバトーレの技術にも似通った傾向がある魔術と魔法の組合せみたいな部分の解明に繋がる部分になるかもしれない。けど、魔法の部分で読み解くことが非常に困難だから、結局、魔術的に落とし込む方が楽な部分ではあるんだけど、その辺りの理論は探って行った方がいいのかもしれないわね。
そんな事を考えつつも、私とリンリィは話を終えて皆の元へ戻る事にするのだった。
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