悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

194.悪役令嬢は久しぶりの勉強会を楽しむ

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 本日、私のサロンは長期休暇の後では一番人数が入っている。まぁ、勉強会の日はいつものメンバー以外に下位の貴族子女達も来ているから当然ではある。そして、今回はただの勉強会では無い。

 そして、今回の課題についてマリーの鼻息が少し荒い。と、いうかマリー、目がお金になっているわよ。全く、あの娘はどれだけ商売好きなのよ。

 この世界に時計という概念はあれど、小さな時計というモノは存在しない。そして、ここで学んでいる者達は口外しないという契約の元、様々な知識を教えているわけだけど、今回は時計の小型化、もしくは術式などを使って時計のような機能を持つ術式の構築を課題としている。

 ま、実際に物を作る必要は無く、アイデアだけでもいいの。既に私の中では完成系が存在しているのだけど、他の者達がどう考えるか? と、いうところが見たかったわけなのだ。

「エステリア様、時計といえば――灯火トーチの魔法を使った時に発生する魔法陣の回転を基準にしていますよね?」
「ええ、その通りね」

 そう、この世界において時間を測る時、灯火トーチの魔法を使った時に出る魔法陣の回転、それの1回転が基準になっている。これも不思議な話、その1回転ってだいたい1分くらいなのよね。そこを基準として時計というモノが作られているわけだけど、時計とは街や屋敷にある巨大な魔道具で1時間置きに鐘を鳴らす仕組みになっていて、これで多くの者は時間を判別する。

 時計の魔道具は意外とよく出来た魔道具で、午後10時を過ぎると鐘が鳴らないような仕組みになっているのだけど、これは巨大な歯車の組合せと重りによるからくりによるものなのだけど、私が今皆に課題として出しているのはデジタル時計の仕組みなのだ。

「エステリア様、時計の部品を粒のように小さくすることで、小さく出来るのではないですか?」
「まぁ、それもそうなんだけど、そんなに小さいモノが作れるのかしら?」

 と、少女達の質問にサラッと返すと、彼女達は困ったようにシュンとしてしまう。ただ、これも物を小さく加工するという方法が確立出来れば、機械式時計みたいなモノも作れるだろうし、パソコンや精密機器の製造にも必要な技術にはなるだろうから、実際に出来るラインを考えだせる人が出て来ることを私は願っている――と、いってもこれも正解は既に私の中に存在しているのだけどね。

「エステリア様、魔法を使うという手はありなんでしょうか?」
「んー、魔法で作れたとして、どれだけの魔力が必要なのかしら。出来れば万民が使えるような物にしなくてはならないわ」
「――それは難しいですね」

 ってか、魔法で再現出来るか私には残念ながら出来る気がしない。魔法であっても無から有を生むわけでは無いし、現象としては無から有を生み出しているようにも見えるけれど、魔法や魔術で出来ることは魔力から転換出来るモノに限るので、様々な部品が必要な道具を魔法で作り出すのは不可能に近いと私は思っている。

「エステリア様、そもそも時計の仕組みがよく分からないのですが……」
「あー、まぁ、そういう人もいるわよね。リンリィ、時計の図面って持ってるかしら?」
「少々お待ちください」

 と、リンリィは今回必要になりそうな資料の束から時計の図面を取り出して質問をしてきた娘達に後で返却するようにと言って手渡した。うん、図面の読み方が分からないという声が聞こえてきそうな雰囲気ではあるけれど、さすがにそこは何とか頑張って欲しいところ。

「エステリア様、魔石を液状化することは出来ないでしょうか? そうすれば、素材自体を魔石の組合せで作れるようにすれば、多くの事が出来るような気がするのですが――」

 その質問は中々に面白い考えではあるのだけど、残念ながら魔石を液化することは出来ない――ワケではないのだけど、魔石を液化すると魔石としての機能を失ってしまう。お母様曰く「魔力的な変質が起きた」とのことだ。魔石は粒となっても魔石としての機能を失わないのだけど、液状化させると、ただの濃密な魔力の塊みたいなモノになるのよね。

「残念ながら、一度液状化させた魔石は魔石としての力を失うようなのよね。再度、硬化させてみると魔石とは違う魔力濃度が高い石になってしまうのよ」

 と、私の言葉に質問をしてきた者は「それは残念です」と、シュンとした。まぁ、悪い考えではないのだけど、私は魔石を液化したことから魔晶石の液化へ導いたアイデアだったので、そういう発想は悪くはないのだ。

「考え方自体は悪く無いわ。今まで試したことが無いことを考えることが、まず第一歩よ。貴女達の発想が新たな発見に出会うチャンスになる可能性も無くはないもの」

 私の言葉に少女達はギラリと目を輝かせて、さらなるアイデアを模索し始める。うんうん、良い目つきになってきたわ。と、私達は楽しい研究を勉強という形で楽しむのであった。
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