悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
上 下
189 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

189.悪役令嬢は久しぶりに王女と会う

しおりを挟む
「はぁ~い! 第1回悪役令嬢最強決定戦を開催しま~す!」
「却下」

 と、アリエルの言葉を即座に撃ち落す。なによ最強決定戦って。

「まぁ、冗談ではあるんだけど、今日は久々の悪役令嬢同盟のお茶会だし、真新しい事をしてみたいという気持ちが溢れただけなのよ。それに皆は今月来月にある学内催事でバトル上等な雰囲気なんじゃないの?」

 アリエルがそう言うと全員が首を横に振り、アリエルは面白くなさそうに「え~」と、口を尖らせた。

「そもそも、今月にある魔法技術大会は対面での対戦では無いからね。魔法指定だったり、魔力量指定だったりとか、どちらかというと魔法の技術というより魔力操作の技術大会みたいな感じね。言っても10歳児の出来る事なんてはある程度限られているしね」

 正直言って、ここにいる面子は皆が規格外と言ってもいい。魔力量は私とアリエルは10歳児としては限界突破レベルだし、後を追うウィンディも戦闘力だけで言えば大人顔負けだし、リンリィも最近は随分と魔力量も増えて、とても10歳児の魔力とは言えない。ま、彼女の場合はお母様の弟子として魔術の知識もグングン伸びている。因みに魔力量だけで言えばウィンディよりあるマリーは戦闘適正が微妙ではあるけれど、魔法の知識は結構なモノなのよね。

「全員、どちらの大会も出る予定なの?」
「私とウィンディは来月の武闘大会、今月の魔法技術大会はリンリィだけかな。マリーは出ないつもりでしょ?」
「ええ、胴元としては出るわけにはいかないでしょ」

 あ、コイツ賭けの胴元をする気なのね。全く、どれだけお金スキーなのよ。

「マリーよ。気を付けねばならんぞ。一応、非公認の賭け事は学園の禁止事項にあったはずだ」

 と、アリエルは王女様モードでそう言った。ん、確かにそんな事が書いてあった気がするわね。ぼんやりとした記憶だから、あれだけど。

「え、マジで?」
「マジで大マジよ。学園禁止事項の三項にあるわよ。一応、回避方法は学園長の許可と儲けから一定額を納めること」
「なるほど、学園公認にすればいいわけね。うーん、推薦とかあった方がいいのかしら?」
「あー、そういうことか。では、母上に頼んでみようか?」

 アリエルの言葉にマリーはガシッとアリエルの両手を取って目を輝かせた。うーん、でも女王キャロラインが許すのか気になるところね。ま、その辺りは運次第じゃないからしね。

「あ~、私も早く学園に行きたい~~~~」
「年齢的な問題なのだから、どうしようもないでしょ」
「むぅー」

 アリエルは頬を膨らませて唸る。まぁ、実は無くは無いんだけど――気付いてないのだから、別にいいよね? と、思っていたらリンリィがチラリと私を見る。あ、リンリィも気が付いたのね。学園の規則とか把握してるクセにこういうところがちょっと抜けてるところも、愛嬌があるわよね。

 と、私はリンリィに言わないように笑顔で圧を掛けておく。

「そういえば、アリエルは謹慎中は何をしていたの?」

 私がそう言うとアリエルは難しいそうな表情を浮かべて「ん~、まぁ」と、微妙な反応をした。後にアリエルはドッと沈んでブツブツと何かを呟き始め、うん、全員ドン引きよ。

「母上とお勉強……母上と鍛錬……母上とお勉強……母上と鍛錬……」

 女王キャロラインと仲良く日々お勉強と鍛錬に費やしたわけね。まぁ、中々に壮絶な時間を楽しんだようね。まぁ、私も最近は毎日のようにお母様と仕合っているわけだけど、お母様は「キャロルの剣技は私より数段上よ」と、言っていたことを考えると――ま、頑張ったわね。

「それは随分とパワーアップしたってことじゃないんですか?」
「ハッ、さすがウィンディね。そう、今までの私はミジンコのようなモノだったわ。今は小動物くらいにはレベルアップしたハズ!」

 と、アリエルは復活してそう言ったけれど、うん、アリエルで小動物なら多くの者達はミジンコ以下ということになりそうね。ま、世情的に聖イーフレイ帝国は乱世の時代に既に入っていると考えてもいいから、強くあることは悪いことではない。

「女王陛下から学ぶことは多いし、絶対にレベルアップするだろうから、いいじゃない」
「そう、そうよね。母上は『とにキラ』でも最強と言われていた女王だからね。あ、そういえばハーブスト公爵家で面白いモノが作られたと噂されているブツってどんなの?」

 アリエルはアレの事を陛下から聞いたのか、そう言った。私は最新型を空間収納アイテムボックスから取り出して、テーブルに置く。

「前に見せて貰った計算機に似ているけど、これ?」
「ええ、そうよ。最新型の魔導回路式計算機よ」
「魔導回路式?」

 今までの魔道具でも回路的な部分はあったけれど、今の回路はリンリィとお母様の知識と技術で言えば今の魔導回路は全く別のモノと言って過言ではないのよ。だからこそ、魔導回路式と一応言っておいたのよ。

「ええ、今までの回路とは全く違う考え方で作られているのよ。そうね、アリエルそこのスイッチに魔力を流して起動してみて」
「オッケー、じゃ、いくわよ!」

 と、彼女は計算機の起動スイッチをポチっとする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...