悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

187.悪役令嬢はお母様に相談する

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 サロンでの楽しいお茶とおしゃべりを堪能した私は家に帰って来てから直ぐにお母様との面会を設定する為にエルーサに使いを出すと、すぐに彼女は戻ってくる。

「夕飯の後でお時間を取るそうです」
「ありがとう。問題無いと返事しておいて」
「かしこまりましたお嬢様」

 と、再びエルーサは部屋を出て行く。うーん、予定とかをウェブで管理するみたいな仕組みがあればもっと楽だけど、この世界の人達がすぐに順応出来るかと考えると中々難しいかもしれないなぁ。と、思いつつも私はソフトの設計を考えつつ、机に向かってメモを取っていく。

 計算機で実証出来たわけで、ここから集積回路へ持っていくには超小型化が絶対に必要だけど、ここは魔術である程度補えるのは賢者サルバトーレが作ったリファレンスからの情報で分かっている。そして、そこからはそれを動作させる術式プログラムを組めるような仕組みを作るって感じなのよね。

 ま、そこは実は前々から考えていたことがあるから、そこまで難しいことじゃない――と、言いたいところだけど、結局ハードとソフトを繋ぐところが難しい。ここはトライ&エラーを繰り返すしかないわね。

 そんな事を考えている間にエルーサが戻って来て、お母様からも「楽しみにしている」との返事があったそうだ。そういえば、印刷って出来るのかしら? などと思考が脱線しつつも、私は夕飯まで楽しく色々な魔導技術について思考を巡らすのであった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 夕飯は両親と楽しく食事を堪能し、その後、お父様は仕事があると言って王城の方へ出かけて行き、私はお母様に連れられて、お母様の執務室へ向かった。

「で、今日の用事は何かしら?」

 と、お母様は変わらず優しい微笑を湛えていたけれど、私の思考も読まれているよね。たぶんだけど。

「はい、学内催事で来月行われる武闘大会に出たいのですが、大丈夫でしょうか?」
「え? そっちなの?」

 お母様は意外だと言わんばかりの声をあげた。あれ? 思ってた反応と違うわ。

「魔法技術大会にはリンリィが出ると聞いたので、そちらに関しては彼女に任せてもよいかな。と、思ったので私は武闘大会の方に出たいと――」
「でも、武闘大会は身体強化以外の魔法は禁止なのよ?」

 と、お母様は心配そうに言った。私はキチンと冊子を読んだので分かっている。武闘大会のルールは武器は各自で用意可能で、即死の可能性がある攻撃は禁止。そして、魔法も身体強化以外は禁止。結構なガチルールで、闘技場会場の舞台上で戦うわけだけど、場外に出ても負けとなる。まぁ、身体強化が使えるなら、そこそこ戦えると思うし、強敵はウィンディ以外はいないと思うのだけど、ルアーナの実力は分かってはいないけれど、それでも知っている中でウィンディ
がもっとも強い相手だと思うのよね。

「はい、分かっていますよ。私もそれなりに戦えるのはお母様も知っていると思いますが?」
「――まぁ、それはそうだけど」
「それにウィンディからの私と戦いたいと願われたので、叶えてあげたいかなって」

 まぁ、それ以外にも一応ルールの隙というか、武器の方に禁止ルールが無いので結構、色々とやれると思うんだよね。

「まさか、魔導剣で出るつもりなの?」
「ええ、そのつもりですよ。それもこれから新しいヤツを作ろうかなって」
「――エステリア、自重する気は?」
「え? 自重? なんですか、それ」

 と、私が言うとお母様は溜息を吐いて「仕方ないわね」、と、言ってから一枚の紙をテーブルに置く。私はそれを手に取って見ると、そこには魔導剣についての強化関連についた内容が書かれていた。

「いいのですか?」
「本当はもう少し寝かしておきたいのだけど、いいわ。世間にお披露目しましょう。そして、全ての貴族に知らしめるのです。我が家――いいえ、ミストリア王族の系譜の恐ろしさをね」

 お母様はそう言って、とても良い笑顔で微笑んだ。さすがお母様は話が分かる人!

「流石に魔法系や攻撃系術式を大会中に仕込むのは無しにしなさい。強化系と魔導剣自体の弱点部分を術式で強化するのは問題無いと判断します」
「はい、お任せください。今後の基軸になれる新作を作ってみます!」
「当然、私が一番に渡してくれるのでしょ?」
「それはもちろん!!!」

 と、その後も色々とお母様と魔術や魔道具、新しい技術に関しての意見を交わし合って、楽しい時間を過ごし、部屋に戻って来てから、私は早速、新しい魔導剣の開発を始めるのだった。

 そもそも、魔導剣は魔力による剣なので、実際の剣に比べると打合いには向いていないし、力押しされると非常に防御面が弱い武器なんだけど、弱点をカバーする方法は事前に考えていたのだけど、お母様も同じことを考えていたようでホッとする。さすがお母様。
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