悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

178.悪役令嬢は隠し部屋の封印を解く

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 本来、アンダンテール大洞窟の中層までは一日半から二日掛かる。それなりの実力者であれば、一日も掛からずに中層まで降りる事も実際は出来なくはない。

 ――だがしかしの話だけど、現在のアンダンテール大洞窟は私の改造によって、中層まで直通のエレベーターが付いている。因みにこれは研究の成果ではあるのだけど、どういう動力方法で動いているかは正直分からないので本当はあまり使いたくはないのだけど、時間的なことを考えるとそうするのがベストだとお母様と話し合った結果なのよ。

「なんだか、不思議な感覚ですね」

 と、お母様はエレベーター内でそう言った。まぁ、前世の記憶がある私とリンリィは特に不思議という感覚は無い――と、いうのは嘘だ。動力が分からないし、前世のエレベーターよりもスムーズな動きに奇妙な感覚はあるけれど、お母様が思っている感覚とは随分違いがあるのは確かでしょう。

 そして、スゥーッとエレベーターがゆっくりとなるけれど、重力は全く感じ無い様な感覚がやはり魔法的な部分だと感じる。これは重力操作とかなのかしら。

「術式的な部分を感じないことを考えるとこれは魔法なのかしらね。人が使わなくても発動する仕組みを作れると考えると――論文を幾つも書けそうね」

 と、お母様も感じたことを口にする。この辺りは敢えて口にしているような雰囲気があるので、私に聞かせることを主としているような気もする。なんとも過保護なお母様ね。

「魔術式から魔法を使うという方法があるのかもしれませんね」

 リンリィがそう言う。考えた事が無かったけれど、魔術で魔法を使うことが可能なのかどうかで随分と自由度が変わってくる気がする。そもそも魔法は使用者のイメージが最優先となることを考えると魔術と魔法は根本的に違う――のだけど、魔石に入れた魔法を発動出来る事を考えると出来ないわけではなさそうな気がする。

 ふと、お母様と視線が合うとお母様がニコリと微笑んだ。どうやらお母様も似たような思考結果に至ったようね。さす母と思っておこう。

「貴女達は技術を秘匿して独占するのと広く公表して広げるのと、どちらが良いと思いますか?」

 と、お母様は突然にそんな事言い出す。私は即座に考えを話す。

「現状は秘匿するべきだと思っています。お母様が書いた応用魔術理論もまだ公表してませんよね? 特にこの魔導洞窟ダンジョンの管理施設みたいにあまりにも現在の技術とかけ離れているモノを完全に解析出来たとしても、周囲の技術レベルとある程度状況を見ないと様々な理由で危険だと思いますもの」
「――ですが、研究や開発は進めるのですね。なんだか、私から見ているとハーブスト公爵家の方々は急ぎ過ぎているような気がするのですが」

 リンリィがそう言うとお母様が「やはり、そう見えているのね」と、呟く――が、私としては目標の為であればある程度は仕方ないと思っている。そもそも、文明レベルを数百年すっ飛ばそうとしているワケだし。まぁ、今目の前にある扉の奥には過去から存在している超文明的遺物は私が思っているレベルを遥かに超えたモノなのは違いない。

「いえ、まぁ、エステリア様が望んでいる物はこの魔導洞窟ダンジョンの管理施設に比べれば可愛らしいモノかもしれませんけど、もう少し時間を掛けてもよいかも……と、少し思っただけなのです」
「リンリィのいう事もよく分かるけど、んー、自重してもどうにもならない可能性がある事ってあるでしょ? その時になったとしても、どうにか出来る道を作っておくことを考えると、意外と時間は無いのかも。と、思っているの」

 これはリンリィには通じると思う。お母様は不思議そうな視線を私に向けたけれど、ゲーム内の時系列で言えば、まだ先のように感じるけれど、5、6年など、あっという間だと言えるのよ。悪役令嬢全員が上手く生き残れるような世界を目指すのよ。

「確かにエステリア様の言う通りかも――しれませんね。思っているより時間というのは気が付けば過ぎてしまうものですものね」

 と、彼女は小さく苦笑する。彼女にも何か思うところがあったのだろう。不安そうな雰囲気はどこか消えているように感じる。

「貴女達はまだ幼いと言うのに、色々と難しい事を考えているのですね――そんな事は高学に入っても考えてる子などあまりいませんよ? はぁ、とりあえずエステリア、そこの扉を開けなさいな」

 そう言われて私は「はぁ~い」と、答えつつ。お母様の感想はまさに普通はそうだよね。と、思う。残念ながら、私達には――いいえ、私には『断罪』を回避する為に努力せねばならないし、今の国の状況を改善する一手として、ハーブスト公爵家含め、女王キャロライン――いいえ、アリエルが絶対的な力を得れる状況を作らないとダメなのだ。

 まぁ、魔術や魔法――いや、商売については趣味みたいなものだから、いいとしよう。それに戦争になれば、我が家の魔道具は売れまくりなのは間違いないのよ。死の商人? そんな事は言いたい人に言わせておけばいいのよ。
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