178 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
178.悪役令嬢は隠し部屋の封印を解く
しおりを挟む
本来、アンダンテール大洞窟の中層までは一日半から二日掛かる。それなりの実力者であれば、一日も掛からずに中層まで降りる事も実際は出来なくはない。
――だがしかしの話だけど、現在のアンダンテール大洞窟は私の改造によって、中層まで直通のエレベーターが付いている。因みにこれは研究の成果ではあるのだけど、どういう動力方法で動いているかは正直分からないので本当はあまり使いたくはないのだけど、時間的なことを考えるとそうするのがベストだとお母様と話し合った結果なのよ。
「なんだか、不思議な感覚ですね」
と、お母様はエレベーター内でそう言った。まぁ、前世の記憶がある私とリンリィは特に不思議という感覚は無い――と、いうのは嘘だ。動力が分からないし、前世のエレベーターよりもスムーズな動きに奇妙な感覚はあるけれど、お母様が思っている感覚とは随分違いがあるのは確かでしょう。
そして、スゥーッとエレベーターがゆっくりとなるけれど、重力は全く感じ無い様な感覚がやはり魔法的な部分だと感じる。これは重力操作とかなのかしら。
「術式的な部分を感じないことを考えるとこれは魔法なのかしらね。人が使わなくても発動する仕組みを作れると考えると――論文を幾つも書けそうね」
と、お母様も感じたことを口にする。この辺りは敢えて口にしているような雰囲気があるので、私に聞かせることを主としているような気もする。なんとも過保護なお母様ね。
「魔術式から魔法を使うという方法があるのかもしれませんね」
リンリィがそう言う。考えた事が無かったけれど、魔術で魔法を使うことが可能なのかどうかで随分と自由度が変わってくる気がする。そもそも魔法は使用者のイメージが最優先となることを考えると魔術と魔法は根本的に違う――のだけど、魔石に入れた魔法を発動出来る事を考えると出来ないわけではなさそうな気がする。
ふと、お母様と視線が合うとお母様がニコリと微笑んだ。どうやらお母様も似たような思考結果に至ったようね。さす母と思っておこう。
「貴女達は技術を秘匿して独占するのと広く公表して広げるのと、どちらが良いと思いますか?」
と、お母様は突然にそんな事言い出す。私は即座に考えを話す。
「現状は秘匿するべきだと思っています。お母様が書いた応用魔術理論もまだ公表してませんよね? 特にこの魔導洞窟の管理施設みたいにあまりにも現在の技術とかけ離れているモノを完全に解析出来たとしても、周囲の技術レベルとある程度状況を見ないと様々な理由で危険だと思いますもの」
「――ですが、研究や開発は進めるのですね。なんだか、私から見ているとハーブスト公爵家の方々は急ぎ過ぎているような気がするのですが」
リンリィがそう言うとお母様が「やはり、そう見えているのね」と、呟く――が、私としては目標の為であればある程度は仕方ないと思っている。そもそも、文明レベルを数百年すっ飛ばそうとしているワケだし。まぁ、今目の前にある扉の奥には過去から存在している超文明的遺物は私が思っているレベルを遥かに超えたモノなのは違いない。
「いえ、まぁ、エステリア様が望んでいる物はこの魔導洞窟の管理施設に比べれば可愛らしいモノかもしれませんけど、もう少し時間を掛けてもよいかも……と、少し思っただけなのです」
「リンリィのいう事もよく分かるけど、んー、自重してもどうにもならない可能性がある事ってあるでしょ? その時になったとしても、どうにか出来る道を作っておくことを考えると、意外と時間は無いのかも。と、思っているの」
これはリンリィには通じると思う。お母様は不思議そうな視線を私に向けたけれど、ゲーム内の時系列で言えば、まだ先のように感じるけれど、5、6年など、あっという間だと言えるのよ。悪役令嬢全員が上手く生き残れるような世界を目指すのよ。
「確かにエステリア様の言う通りかも――しれませんね。思っているより時間というのは気が付けば過ぎてしまうものですものね」
と、彼女は小さく苦笑する。彼女にも何か思うところがあったのだろう。不安そうな雰囲気はどこか消えているように感じる。
「貴女達はまだ幼いと言うのに、色々と難しい事を考えているのですね――そんな事は高学に入っても考えてる子などあまりいませんよ? はぁ、とりあえずエステリア、そこの扉を開けなさいな」
そう言われて私は「はぁ~い」と、答えつつ。お母様の感想はまさに普通はそうだよね。と、思う。残念ながら、私達には――いいえ、私には『断罪』を回避する為に努力せねばならないし、今の国の状況を改善する一手として、ハーブスト公爵家含め、女王キャロライン――いいえ、アリエルが絶対的な力を得れる状況を作らないとダメなのだ。
まぁ、魔術や魔法――いや、商売については趣味みたいなものだから、いいとしよう。それに戦争になれば、我が家の魔道具は売れまくりなのは間違いないのよ。死の商人? そんな事は言いたい人に言わせておけばいいのよ。
――だがしかしの話だけど、現在のアンダンテール大洞窟は私の改造によって、中層まで直通のエレベーターが付いている。因みにこれは研究の成果ではあるのだけど、どういう動力方法で動いているかは正直分からないので本当はあまり使いたくはないのだけど、時間的なことを考えるとそうするのがベストだとお母様と話し合った結果なのよ。
「なんだか、不思議な感覚ですね」
と、お母様はエレベーター内でそう言った。まぁ、前世の記憶がある私とリンリィは特に不思議という感覚は無い――と、いうのは嘘だ。動力が分からないし、前世のエレベーターよりもスムーズな動きに奇妙な感覚はあるけれど、お母様が思っている感覚とは随分違いがあるのは確かでしょう。
そして、スゥーッとエレベーターがゆっくりとなるけれど、重力は全く感じ無い様な感覚がやはり魔法的な部分だと感じる。これは重力操作とかなのかしら。
「術式的な部分を感じないことを考えるとこれは魔法なのかしらね。人が使わなくても発動する仕組みを作れると考えると――論文を幾つも書けそうね」
と、お母様も感じたことを口にする。この辺りは敢えて口にしているような雰囲気があるので、私に聞かせることを主としているような気もする。なんとも過保護なお母様ね。
「魔術式から魔法を使うという方法があるのかもしれませんね」
リンリィがそう言う。考えた事が無かったけれど、魔術で魔法を使うことが可能なのかどうかで随分と自由度が変わってくる気がする。そもそも魔法は使用者のイメージが最優先となることを考えると魔術と魔法は根本的に違う――のだけど、魔石に入れた魔法を発動出来る事を考えると出来ないわけではなさそうな気がする。
ふと、お母様と視線が合うとお母様がニコリと微笑んだ。どうやらお母様も似たような思考結果に至ったようね。さす母と思っておこう。
「貴女達は技術を秘匿して独占するのと広く公表して広げるのと、どちらが良いと思いますか?」
と、お母様は突然にそんな事言い出す。私は即座に考えを話す。
「現状は秘匿するべきだと思っています。お母様が書いた応用魔術理論もまだ公表してませんよね? 特にこの魔導洞窟の管理施設みたいにあまりにも現在の技術とかけ離れているモノを完全に解析出来たとしても、周囲の技術レベルとある程度状況を見ないと様々な理由で危険だと思いますもの」
「――ですが、研究や開発は進めるのですね。なんだか、私から見ているとハーブスト公爵家の方々は急ぎ過ぎているような気がするのですが」
リンリィがそう言うとお母様が「やはり、そう見えているのね」と、呟く――が、私としては目標の為であればある程度は仕方ないと思っている。そもそも、文明レベルを数百年すっ飛ばそうとしているワケだし。まぁ、今目の前にある扉の奥には過去から存在している超文明的遺物は私が思っているレベルを遥かに超えたモノなのは違いない。
「いえ、まぁ、エステリア様が望んでいる物はこの魔導洞窟の管理施設に比べれば可愛らしいモノかもしれませんけど、もう少し時間を掛けてもよいかも……と、少し思っただけなのです」
「リンリィのいう事もよく分かるけど、んー、自重してもどうにもならない可能性がある事ってあるでしょ? その時になったとしても、どうにか出来る道を作っておくことを考えると、意外と時間は無いのかも。と、思っているの」
これはリンリィには通じると思う。お母様は不思議そうな視線を私に向けたけれど、ゲーム内の時系列で言えば、まだ先のように感じるけれど、5、6年など、あっという間だと言えるのよ。悪役令嬢全員が上手く生き残れるような世界を目指すのよ。
「確かにエステリア様の言う通りかも――しれませんね。思っているより時間というのは気が付けば過ぎてしまうものですものね」
と、彼女は小さく苦笑する。彼女にも何か思うところがあったのだろう。不安そうな雰囲気はどこか消えているように感じる。
「貴女達はまだ幼いと言うのに、色々と難しい事を考えているのですね――そんな事は高学に入っても考えてる子などあまりいませんよ? はぁ、とりあえずエステリア、そこの扉を開けなさいな」
そう言われて私は「はぁ~い」と、答えつつ。お母様の感想はまさに普通はそうだよね。と、思う。残念ながら、私達には――いいえ、私には『断罪』を回避する為に努力せねばならないし、今の国の状況を改善する一手として、ハーブスト公爵家含め、女王キャロライン――いいえ、アリエルが絶対的な力を得れる状況を作らないとダメなのだ。
まぁ、魔術や魔法――いや、商売については趣味みたいなものだから、いいとしよう。それに戦争になれば、我が家の魔道具は売れまくりなのは間違いないのよ。死の商人? そんな事は言いたい人に言わせておけばいいのよ。
1
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる