悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

173.悪役令嬢は他の魔導洞窟を考える

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 まぁ、答えなければいけない話ではあるのだけど、そもそも魔導洞窟ダンジョンについての仮説は二つある。

 一つは魔導洞窟核ダンジョンコアの自然発生によって生まれた魔導洞窟ダンジョンで、もう一つは人為的に作り出した魔導洞窟核ダンジョンコアによって造られた魔導洞窟ダンジョンだ。

 これはあくまでも仮説でしかないし、実際に調査してみなければなんとも言えない。

「エステリアは実際に調査が必要だといいたいのだろうが、調査に向かう者に判断というのは可能だろうか?」

 女王キャロラインはそう言った。問題は私さえも偶然見つけたレベルの話だし、もし同じような仕組みであったとして、隠し部屋にある罠を解除出来るほどの技術力を持つのは私以外で言えばお母様しかいない。

 しかし、お母様は管理用のコンソールを扱いながら、術式解析をするというところにいくと――私には前世の記憶があったが故に出来た部分が大きい事を考えると、私以外では難しいと思う。

「残念ながら、もし私が偶然見つけた部屋と似たようなモノを見つけたとしても、その中に入り、罠を解除した上で巨大で複雑な術式を解析した上で扱うのは非常に困難だと思います。たとえ、お母様でも簡単にはいかないでしょう。私の場合は色々な偶然が重なったとしか言えません」

 そう答えると、女王は深く思考を走らせるように両目を瞑り顎に手を置いて「ふむ、なるほど」と、呟いた。

「実際、魔導洞窟ダンジョンをキチンと管理出来るようになれば、魔物氾濫スタンピードが起こるのも抑制出来ると考えるのは普通のことよ。エステリアが危惧していることも分かるけれど、どうにかしたいと思う気持ちも理解して欲しいの」

 と、お母様が言った。それもかと言って――と、いう話だ。色々と偶然が重なった結果だと言ってもすこーし信じて貰えない感じになっているのが、私としては納得いっていない。

「――お母様、何度も言っていますが偶然が重なった結果なのです。それにアンダンテール大洞窟の仕組みに関してはお母様の協力がなければ解析は出来ませんが、今日明日にどうこう出来る問題ではありませんよ?」

 私はそう言ってテーブルに小さな板を一つ置く。

「触っても?」

 と、お母様が言うので私は頷くとお母様は素早くそれを取り、魔力を流し端末を起動する。そう、起動するだけなら誰でも出来る。問題はその後なんだよね。

 リンゴの端末くらい、子供でも使える仕様ならある程度知識があれば簡単に使えるのだけど、これってどう考えても複雑な操作と設定が必要なのよね。こういったソフト面やツールを扱ったある事がある人なら、少し触ればある程度は触れるようにはなるのだけど、残念ながらお母様にその知識は無い。

 故にお母様は涼しい顔をしながらも、端末に表示される情報をむやみにポチポチするだけの状態で魔力を使って、術式の解析も行っているのは分かるけど、両方の知識が噛み合ってはじめて扱える感じなのよね。全く、賢者サルバトーレは確実に性格が悪い。

「どうなの?」

 と、女王キャロラインも興味深そうに訊くがお母様は「…………」無言だ。今すっごい集中している――けど、いくつかのプロセスに失敗して画面が赤くなる。

「映し出されている映像が赤くなったわ……どういうこと?」
「残念ながら、一部の術式認証に失敗したようですね。簡単に扱える端末は出来る事が限定されているのですが、それは管理者用の端末で様々な設定がそれだけで出来る特殊な物です。故に動かすにも色々と面倒な手順が必要なんですが、これに関しては何と言えば分かりやすいか悩みどころですけれど、覚えるにも結構時間が必要だと思います」
「――うん、ウチの娘が天才だという事がよく分かったわ」

 お母様は起動を解除して、何も映し出さないただの金属の板となった端末をテーブルに置いて、そう言った。うん、笑顔が眩しい。天才とかそういうのでは無いので、ちょっと罪悪感がある。前世の知識でたまたま扱えるだけなのよ。

「我が国内――出来れば、『バーレモントの大穴』だけでもお願いしたいところだ」

 確かに王都からも近い魔導洞窟ダンジョンでもキチンと管理出来る状況を作れば、ここに掛けていた経費を削減出来るかもしれないし、利は大きいとは思うわね。でもねぇ、そこにばかり時間を割くようなことは私自身がしたくないのだけど。

「クーベルト閣下に協力していただいて、『バーレモントの大穴』の隠し部屋の入口を見つけて貰う……と、いうのは如何でしょうか?」

 私がそう言うと、ランパート公が「なるほど」と、楽し気な声をあげる。もっと真面目な方だと思っていたけれど、どうやら少し違うようだ。

「ランパート、出来るだけ黙っておいた方がよいと思うのだが……」

 と、お父様はジト目でランパート公に向かってそう言うのだが、うん、仲良しさんなのね。王配に対してとても軽口を叩ける関係と、いうか女王陛下とお母様が真面目な雰囲気なのにこの二人はまるで息抜きに来たような雰囲気だわ。

「旦那様とランパート公も、真面目に考えて貰えないかしら?」
「そうは言ってもね、国内の――そうだね、要地とされる魔導洞窟ダンジョンでさえも調査含め、エステリアに背負わせるには大きすぎると私は思うのだ。ステフとキャロルはが国内をより富ませようと考えるのは当然ではあるけれどね。まぁ、ディルに関しては頑張って貰いたいところだけどね」

 いつもながら優しいお父様ではあるけれど、まぁ、魔導洞窟ダンジョンに関してはこちらとしても解明はしたいところだけど、流石に国内全てという感じになるのは勘弁して頂きたい。閣下に関しては――うん、頑張って貰いたい。閣下が頑張れば頑張るほどに武器関連の開発が進んでいくので、出来るだけお出かけして頂いて欲しいところだけど、クーベルト辺境伯領の運営って大丈夫なのかしら?
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