悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

166.悪役令嬢の推しの部下は恐ろしさを実感する

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 私はクーベルト辺境伯領、第一騎士団所属であり、クーベルト閣下を守る使命を受けた騎士でもあるファウィラ・パルパスフィ騎士爵家の三女ではありますが、パルパスフィの騎士としても私は十分な力を持っていると自負しておりました。

 ええ、そんな甘っちょろいことを考えていました。私は留守役にロベルト卿が選ばれた旨を伝えに向かっている最中にこの数日のことを思い返しているわけですが。

 我が主からは幾度となく聞いていましたが、アレほどとは思いもよりませんでした。主が熱をあげるのも頷けるわけです――初めはとんだ変態趣味に走ったのかと思いましたが、会ってみて理解しました。見た目はかなりの魔力量を持っている様子でパッと見は絶対に10歳には見えないくらい幼い容姿ではありますが、その存在感と知性、そして、同性からみても時折ドキリとするような雰囲気、あれは絶対に魔性です。

 特に中層でのトンデモ行動は本当に意味が分からないレベルでした。

 空間収納アイテムボックスなる存在です。【失われた遺産アーティファクト】にそういう物があることはある程度知識がある人間であれば知っている魔道具ですが、その存在は秘匿され天帝が管理していると伝えられている。

 けれども、どう考えても【失われた遺産アーティファクト】と、思われる魔道具を多数所持していて――いいえ、ハーブストの姫様が作ったという話です。まだ10歳の少女が伝説級の魔道具を作る? はい、もう意味が分からない。

 それにしても、中層で野営した時のご飯は本当に美味しかった――アレが噂のハーブストが提供する料理というヤツですね。全く、王宮の料理もハーブスト公爵家で学んだ料理人が働いていおり、料理人も情報を漏らさないように色々と徹底した契約を結んでいるとは聞いていましたが、噂以上の美味しさでした。そりゃー、徹底した情報操作もしますよね。それもこれも、ハーブストの姫を守る為なのでしょうね。

 そして、主の護衛として王女殿下達ともお会いした分けですが、正直、私は来るべきでは無かったのでは無いかと思うほど、ええ、私は調子に乗っていましたよ。我が家は騎士爵ではありますが、元々中央出身の血筋でミストリア国内の地元出身家よりも多くの魔力を持つ。これに関してはクーベルト辺境伯家の直臣ではよくある事ではありますが、国内の大貴族にも匹敵するほどの技量と魔力を持っている事を誇りにしている者も多い――のですが、アリエル殿下はモチロンの事、リンガロイ伯爵令嬢でさえ、まだ10歳の少女達が異常に高い魔力を持ち、また、あまりにも自然に魔力を扱う姿は私は何を見せられているのだと、よく冷静にあの場を乗り越える事が出来たと自分を褒めてあげたいくらいです。

 そんな事を考えている間に自分達が使っている拠点に到着し、いつものように戸を叩く。戸の叩き方で誰がどういう目的なのかを中にいる者に伝える主直下の部下だけが知る暗号です。

 そして、中から戸が幾度か叩かれ、私は確認した後に戸を開ける。

「で、主はなんと?」

 意外とロベルト卿はせっかちなところがあるが、状況判断の良さは彼の良いところでもあります。

「明日、中層に不届き者を捕らえに向かいますが、ロベルト卿にはこちらで留守を守って頂きたいと――」
「主が言ったのか?」
「いいえ、ハーブストの姫です」

 そういうと彼は困ったような表情を浮かべる。まぁ、主に言われれば「致し方なし」と、なるだろうけど、彼女に言われるのは中々に即座肯定とは言えませんよね。

「――主は了承したのだな」
「ええ、それは当然です。一応補足ですが、ダン様に留守を任せる事も視野にはあったようですが、彼の斥候として能力が明日の狩りには必要なようですよ」
「そうなると、私は彼等のお守役ということか……」

 と、ロベルト卿は面倒臭そうな表情を浮かべます。まぁ、閣下のお遊びで連れて来た子達は色々と面倒くさいタイプですからねぇ。ダン様はその辺り甘い人ですけれど、ロベルト卿はもっと甘いですからねぇ。取り扱いに困っている様子は少し面白いですが、私がその役目にと言われれば即刻拒否させて頂きます。別に彼等が憎いわけではありませんが、少し考え方が甘いのがイラっとしてしまうのですよね。

「文句は主にしてくださいね。私はこれから主の元へ戻る途中でダン様にも伝えますので、宜しくお願いします」
「――あい分かった」

 そうして、私は拠点を出て主がいる王女殿下達の宿へ向かうのであった。
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