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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
162.悪役令嬢は推しと母の話を聞く
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閣下の落ち着いた雰囲気と低い渋みのある声はなんとも良い心地ではあるが、報告内容は決して外部には話す事が出来ないくらいヤバイものが含まれているのだが、そこは閣下。言葉選びがなんとも上手い。
「それで、我が家の影もその場にいたそうですけど、それに関しては?」
あ、そういえばそんなのも居たな。と、思いながら、彼は一体何をしていたんだ?
「彼はどうも王家の影が任務を全うしていない事にオカシイと思い、潜入しようとしていたところ、我々に見つかったようです。現在は任務の方に戻って貰いました。それから、どうやら影たちの中でも派閥の力が働いていた様子がありました。そちらに関しては陛下の方に調べて頂いた方がよろしいでしょう」
と、閣下が言うとお母様は「ええ、そちらに関しては現在調査中だと言っているわ」と、少し呆れた風に言った。『言っている』と、言ったことに私は少し疑問に思ったが閣下は「なるほど」と、落ち着いた雰囲気で答えた。
「あと、王家の影が『白金』の冒険者『幻魔』を雇ったようですが、こちらに関しては明日、下手人を捕まえる事が出来ればエステリア嬢から報告があるでしょう。どちらにしても、『白金』の冒険者を王家の影程度が雇えるとは思えませんので、資金面の動きから追う事をお勧めします」
「それはそうですね。全く面倒な事をしてくれたものです――後、アリエル殿下には――あら、いいの?」
お母様は誰かと会話しているような雰囲気――と、いうか、そこにいるのか女王陛下。
「って、お母様がそこにいるのですか?」
と、アリエルがムッとした雰囲気でそう言った。そして、しばらく間が空いて女王陛下の声が発せられた。
「私から色々と言う事は無い――まぁ、アリエルが無事であればそれでよい」
女王陛下は女王陛下らしい言葉を発してお母様が「心配であればもっと素直になりなさい」と、叱る声が通信機を通して私達の耳に入り、思わず全員が苦笑する。アリエルと女王陛下はよく似ていて女王、王女のモードにスイッチが入っている時は本当にそういう感じなのだ。まぁ、お母様もお仕事モードと母親モードの時では随分違うとは思うけど、今はお仕事中だと思うのだけどね。
「ともかくだ。クーベルト卿の言うように資金面からも調べるようにしよう。王宮内も随分と変なものが入り込んでいる可能性を考慮して調べ直す必要があるな」
と、女王陛下の声はどこか面倒くさそうな雰囲気を醸し出していた。今回の旅が始まってからお母様に報告した案件を考えると既に陛下にも結構な問題提起がされていて、その処理にも追われているんだろうな。
「クーベルト卿、後日でよいが王宮の方に呼び出しがあると思うので、その時は頼む。それにしても、問題山積――まぁ、よい。ただし、まだ数日は娘達と共に行動してくれるのであろう?」
「それは当然のことです」
「ならよい。して、『幻魔』とはどのような冒険者か知っておるか?」
女王陛下はそう言った。当然、国にいる『白金』冒険者がどういった者か――と、いう情報は当然、多くの者が知っているハズだ。閣下も知っていると思うのだけど、何故そのような事を言ったのだろうか?
「幻術を得意とする冒険者ということは知っていますが、残念ながらそれ以外は知りません」
「――ふむ、そうか。随分前の話ではあるが少し面白い報告があってな、私も興味があったので報告書を見返したのだが『幻魔』と会った事があるという者達すべての報告にある人物像がバラバラなのだ」
さすが『幻魔』とも呼ばれる者だから――いや、常に幻術を使っているというのは不思議な話だけど、『白金』の冒険者ともなれば、それくらいはする可能性もある。
「さすがに冒険者ギルドに登録している男が幻術が得意といっても、常に違った人物象だというのも不思議な話だと思ったのだ。しかも、聞き取りの調査を行ったギルド職員の複数も同じような報告を上げていて、当時も問題にはなったのだが、何故か最終的に不問とされたらしい。以前にも犯罪に関わった可能性があっての調査ではあったのだがな。不思議なモノだ――」
と、閣下を試すような雰囲気で陛下はそう言った。まぁ、可能性としてはあるのか。本当にあるの? 閣下は小さく「なるほど……」と、呟いて何かを納得したような表情を見せた。
「陛下、ありがとうざいます。少し答え合わせが楽しみになりました」
そう答えて私の方をチラリと見る。やばっ、良い笑顔だ。
その後も色々と情報交換や他には聞かせれない危険な話をチラリとして、お母様と女王陛下はどこか上機嫌で通話を終えるのであった。
「それで、我が家の影もその場にいたそうですけど、それに関しては?」
あ、そういえばそんなのも居たな。と、思いながら、彼は一体何をしていたんだ?
「彼はどうも王家の影が任務を全うしていない事にオカシイと思い、潜入しようとしていたところ、我々に見つかったようです。現在は任務の方に戻って貰いました。それから、どうやら影たちの中でも派閥の力が働いていた様子がありました。そちらに関しては陛下の方に調べて頂いた方がよろしいでしょう」
と、閣下が言うとお母様は「ええ、そちらに関しては現在調査中だと言っているわ」と、少し呆れた風に言った。『言っている』と、言ったことに私は少し疑問に思ったが閣下は「なるほど」と、落ち着いた雰囲気で答えた。
「あと、王家の影が『白金』の冒険者『幻魔』を雇ったようですが、こちらに関しては明日、下手人を捕まえる事が出来ればエステリア嬢から報告があるでしょう。どちらにしても、『白金』の冒険者を王家の影程度が雇えるとは思えませんので、資金面の動きから追う事をお勧めします」
「それはそうですね。全く面倒な事をしてくれたものです――後、アリエル殿下には――あら、いいの?」
お母様は誰かと会話しているような雰囲気――と、いうか、そこにいるのか女王陛下。
「って、お母様がそこにいるのですか?」
と、アリエルがムッとした雰囲気でそう言った。そして、しばらく間が空いて女王陛下の声が発せられた。
「私から色々と言う事は無い――まぁ、アリエルが無事であればそれでよい」
女王陛下は女王陛下らしい言葉を発してお母様が「心配であればもっと素直になりなさい」と、叱る声が通信機を通して私達の耳に入り、思わず全員が苦笑する。アリエルと女王陛下はよく似ていて女王、王女のモードにスイッチが入っている時は本当にそういう感じなのだ。まぁ、お母様もお仕事モードと母親モードの時では随分違うとは思うけど、今はお仕事中だと思うのだけどね。
「ともかくだ。クーベルト卿の言うように資金面からも調べるようにしよう。王宮内も随分と変なものが入り込んでいる可能性を考慮して調べ直す必要があるな」
と、女王陛下の声はどこか面倒くさそうな雰囲気を醸し出していた。今回の旅が始まってからお母様に報告した案件を考えると既に陛下にも結構な問題提起がされていて、その処理にも追われているんだろうな。
「クーベルト卿、後日でよいが王宮の方に呼び出しがあると思うので、その時は頼む。それにしても、問題山積――まぁ、よい。ただし、まだ数日は娘達と共に行動してくれるのであろう?」
「それは当然のことです」
「ならよい。して、『幻魔』とはどのような冒険者か知っておるか?」
女王陛下はそう言った。当然、国にいる『白金』冒険者がどういった者か――と、いう情報は当然、多くの者が知っているハズだ。閣下も知っていると思うのだけど、何故そのような事を言ったのだろうか?
「幻術を得意とする冒険者ということは知っていますが、残念ながらそれ以外は知りません」
「――ふむ、そうか。随分前の話ではあるが少し面白い報告があってな、私も興味があったので報告書を見返したのだが『幻魔』と会った事があるという者達すべての報告にある人物像がバラバラなのだ」
さすが『幻魔』とも呼ばれる者だから――いや、常に幻術を使っているというのは不思議な話だけど、『白金』の冒険者ともなれば、それくらいはする可能性もある。
「さすがに冒険者ギルドに登録している男が幻術が得意といっても、常に違った人物象だというのも不思議な話だと思ったのだ。しかも、聞き取りの調査を行ったギルド職員の複数も同じような報告を上げていて、当時も問題にはなったのだが、何故か最終的に不問とされたらしい。以前にも犯罪に関わった可能性があっての調査ではあったのだがな。不思議なモノだ――」
と、閣下を試すような雰囲気で陛下はそう言った。まぁ、可能性としてはあるのか。本当にあるの? 閣下は小さく「なるほど……」と、呟いて何かを納得したような表情を見せた。
「陛下、ありがとうざいます。少し答え合わせが楽しみになりました」
そう答えて私の方をチラリと見る。やばっ、良い笑顔だ。
その後も色々と情報交換や他には聞かせれない危険な話をチラリとして、お母様と女王陛下はどこか上機嫌で通話を終えるのであった。
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