悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
上 下
161 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

161.悪役令嬢は母へ通信の準備をする

しおりを挟む
 ひと通り話を終えて、私は多重の防音と認識阻害を解いて、ナスターシアに待たせて悪かったわね。と、伝えると彼女は申し訳なさそうな表情をして問題無いと伝えて来る。うーん、随分ションボリしているわね。まぁ、仕方ないか。

 そして、既に戻って来ていたエルーサがすぐに閣下がやってくる旨を伝えて来る。

「ありがとう。で、あのダンって人は?」
「クーベルト閣下と合流してから、再び外で監視に就くそうです」
「――まぁ、いいわ」

 そんなやり取りをしていると、戸を叩く音が聞こえ動こうとしたエルーサとナスターシアを私は止めて、自身の手で部屋の戸へ向かう。まぁ、誰の魔力かといのを感知するのって簡単な方法はあるけれど、相手に気付かれずにするというのにはコツがいるのだ。そう、戸の前に立つのが誰なのか、私は既に察知出来ている――まだまだ精進が必要だけど、これはこれで結構面白い。

 そして、戸を静かに開け、私の姿を見た閣下が驚きの表情を一瞬だけ浮かべ、苦笑する。

「さすがに不用心ではないかい?」
「いいえ、閣下がそこに立っているのは分かっていましたから。あら、ファウィラ様意外の皆様は?」
「ああ、彼等には別にやる事があるので、後で外で集合するように伝えてある」

 なるほど、まだアレ等の処理が終わってない。と、いうことですか――ま、それは私が考える必要は無いので思考を即座に止めて閣下を部屋の中へ入れる。一応、ひとり連れて来るとすれば盾役のルーティラか回復役のファウィラのどちらかだとは思っていたけど、まぁ、何にせよ過剰戦力な私達を考えると閣下一人でも問題は無かったと思うけれど、風聞とかの問題で連れて来た可能性が高いだろう。

「では、ひとまずあちらのテーブルの方に席を用意しますので、お座りください」

 と、私の言葉に閣下は「うむ」と短く言って席へ座る。エルーサは素早く防音の魔道具を使用して室内に結界を張る。

「ファウィラ様に一々申し上げる必要は無いとは思いますが――」
「はい、分かっておりますエステリア様」

 彼女の柔らかい雰囲気の声がいつもよりキリリとしているのは冒険者としてよりも、貴族の閣下の部下としての返答だからだろう。まぁ、それでもおっとりした雰囲気はそのままだが、彼女が腰にぶら下げている物騒な武器を見れば回復役というより戦闘要員だな。と、私は思うのであった。

「では、閣下。こちらの魔道具を使いますね」

 下層や中層で幾度か私が使ったのを見ていた閣下はやや緊張した面持ちでコクリと頷き、私はそれを見て、通信の魔道具をテーブルに出し、起動する。

 魔力の波がバッと広がり、相手の魔力が飛んでくるのを私は感じ――なるほど。と、思いつつ魔道具に向き合う。

「お母様、エステリアです。クーベルト辺境伯閣下をお連れしました」

 そして、即座に返事が聴こえる。うーん、魔力波の送受信って意外と魔力の波を直に感じる事が出来ることを考えると、簡単にハッキング出来そう――だけど、かなりの技術が必要ではあるけど、知識と気付きさえあれば理解する人間が出てきそうな雰囲気はある。今後はそう言った部分の暗号化的な考えが必要かもしれない。

「丁度良いタイミングでしたね。周囲に人はどれくらいいるのかしら?」
「聞いても大丈夫な面子を仰って下されば」

 私がそう言うと、少し間を置いて返事が返ってくる。

「クーベルト辺境伯と貴女、後はアリエル殿下以外は席を外して貰えるかしら?」

 それを聞いて私が視線を向けるとアリエルが小さく息を吐き、私の傍へやって来る。エルーサとナスターシアはスッと私達から離れ、ウィンディはオロオロしつつそれを見て同じように離れ、ファウィラもそれに合わせる。それを確認してから、防音の魔道具を――今日は二重起動しまくりだ。と、思いつつさらに認識阻害の魔法を行使した上で通信の魔道具に出力強化ブーストの術式を組み込む。

「お母様。準備出来ました」
「ありがとう。では、今回の件についてクーベルト辺境伯から報告頂けるかしら?」

 と、お母様の声はどこまでも冷たい雰囲気を感じた。随分怒っている感じが伝わってくる。

 そして、これまでの経緯を閣下は落ち着いた雰囲気でゆっくりと報告していくのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...