上 下
152 / 196
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

152.悪役令嬢は魔導洞窟の中層で食事会をする

しおりを挟む
 第一級魔導洞窟ダンジョン『アンダンテール大洞窟』の中層にて、私の専属メイドである少女エルーサは落ち着いた雰囲気を装ってはいるけれど、確実にドヤ顔をしているように私には見えた。

 まぁ、ドヤる気持ちも分からなくもないんだけどね。因みに何をドヤっているかというと、野営地の設置において、テーブルセット含め、並べられた料理達である。

「皆様、席に着いてくださいませ」

 落ち着いた雰囲気を装っているエルーサが静かにそう言った。私と閣下は既に着席済みである。と、いうか閣下も随分慣れてきましたね。他の皆はよく分からない状況に困惑している様子。

 一番初めに席に着いたのはメイスを装備した女性だ。えっと、パルパスフィ騎士爵のファウィラさんだっけか。思ったより図太い感じの性格をしている人なのかもしれないわね。彼女の様子を見てティラと呼ばれたユーデリー騎士爵のご令嬢でルーティラさんも席に着く。

 一人呆然と立っている辺境伯領第三騎士団長のロベルト・ヒッテンハイム様は皆が席に着いた事で我を取り戻した彼は閣下に同席しても問題無いか確認を取った。

「あら? 誰も気にしませんわよ。ねぇ? クーベルト辺境伯様」
「そうだロディ。エステリア嬢もそう言っているのだ、さっさと座るがよい」
「は、はぁ……」

 と、ロベルト様も席に座る。

「エルーサも席に着きなさい」
「え? 私もですか?」
「ええ、ちゃんと私の隣に席があるでしょ? 皆に同席させたのだから、貴女も同様ですよ」

 私の言葉に少し考えてから、エルーサも席に着く。因みに現在のメンバーからすれば、家格的に閣下の配下達より上なのだから、そんな娘を立たせておくわけにはいかないでしょう。

「では、皆様いただきましょうか」

 そう言って食事を始める。今回は我が家謹製のオムライスと温野菜のサラダ、デザートはプリンと焼き菓子。お茶は紅茶と緑茶の二種類から。そして、私が一口だけ先に食べ、皆に食事を促すと閣下がフォークを使ってサラダを食べ始める。

「あの、どこから何を言えば良いのか全く困ってしまいますが、こちらの食事やテーブル、椅子も含めですが、何もない空間から取り出していたように見えたのですが……」
「さすがパルパスフィ家の方ですね。優秀な魔導師を多く輩出している家ですし、魔法や魔術に関する事はとても気になると思います。お嬢様からご説明願えますか?」

 と、エルーサが言った。少し自慢したい気持ちも分かるけれど、言ってもよいものか考えどころではあるけれど、エルーサが言っても大丈夫だと思っている。と、いうことなのでしょうね。

 私は一応、閣下に視線を送ると、少し困った風な顔をしつつも小さく頷いた。

「他の方々も気にはなっているけれど、なかなか口に出すというのは難しい事も多くあると思います。ここは我々しかおりませんので良いということに致しましょう。ただし、ここでの事は口外無用に願います。もし、漏らしたら――まぁ、分かりますよね?」

 と、一応念押しと最大限お母様譲りの微笑みで圧を掛ける。そして、私は空間収納アイテムボックスから幾つか食べ物を取り出して、再び収納する。パッと見は手品みたいな感じよね。

空間収納アイテムボックスという魔道具を幾つかを私やエルーサは所持しているのです。特殊な空間は時間停止の機能も有しているので、食べ物などの保存にも有用ですから、魔導洞窟ダンジョンや戦場に持っていくと便利でしょ?」

 私はにこやかにそう言うが、すぐにロベルト様が難しい表情を浮かべる。

「失礼しますエステリア様。エルーサ殿が武器を出していたのもソレですよね」
「そうね。気が付いても口にしてはいけないわ。後は分かるでしょう?」

 多分だが、武器などを持って入れない場所に武器を隠して持ち込めるなど、実のところ結構な問題がある。まぁ、そこも実はある程度は解決する方法はあるんだけど、それをすると今度は別の問題があるので、どういう条件付けをするかは女王キャロラインやお母様が決める事なので、私からどうこう言う気は現状は無い。

「ともかくですが、我が屋では閣下の扱う魔銃など様々な魔道具を新たに研究、製作を行っているのですが多くは機密情報ばかりですから、見たとしても、知ってしまったとしても他言無用――口外禁止です」
「なるほどですわ。しかし、それらの魔道具は新たに造られた物で【失われし遺産アーティファクト】では無いのですね」

 と、ファウィラ様は目を輝かせた。魔導師でも特に古い家系の人達は魔法や魔術に関しての興味は異常性があると聞いたことがあるけれど、こういう感じなのかもしれない。彼女の視線はどこか妙に熱を孕んでいるように見えた。まぁ、何かあれば閣下が対応してくれるでしょうから、放置しておきましょう。

「で、これからの予定の話をしたいと思うのですが、皆様よろしくて?」

 そう言って私は次の予定について話始めるのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!

アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。 「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」 王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。 背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。 受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ! そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた! すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!? ※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。 ※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。 ※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...