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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
145.悪役令嬢のメイドは魔導洞窟の下層を目指す
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『アンダンテール大洞窟』の中層と呼ばれる場所は広い通路と入り組んだ細い通路で構成されている。しかし、所々に罠が設置されており、優秀な冒険者であっても慎重に進まなければ危険である。
私達を襲ってきた冒険者達はこの中層の構造を良く知っている者の犯行だというのは明確であった。人数が多いだけのパーティーで少人数とはいえ戦闘能力が非常に高い面子が特定の場所へ追い立てられたのだ。普通に考えると少しおかしい事は気が付いていた。
一応、不安の芽に関しては警戒を促しておいたので、大丈夫だと思いますが――今回の目標はたぶんお嬢様では無いような気がしています。が、現状は確証を得ていないので何とも言えませんね。
たぶん、お嬢様の方も奥様に連絡を入れているでしょうから、上の方で何か動いてくれるかもしれません。
私はそんな事を思いつつも、魔導剣で魔物を両断します。
「ルーさん、気になっていたのだが、その剣は一体……」
戦闘がひと段落したタイミングでロディこと、ロベルト様が訊いてきます。因みに他の皆も気になっていたようですね。
「『黒狼』様もお使いになっている魔銃とはまた別の我が家が権利を所有する魔導剣という物です。簡単に言えば魔力による剣ですね。様々な魔法にも対応可能な剣で、軽く携帯性が高い武器です。と、いいますか使ってみたいという表情はおやめください。主やその上の許可が必要になりますので――」
そう言うとロベルト様は「まぁ、だよね」と、小さく言って苦笑しました。ロベルト様の戦闘スタイルでは魔導剣よりも魔銃と剣の両手持ちの方が相性が良さそうですが、そこは黙っておきましょう。クーベルト閣下の影響がとても強い方ですし、追々は同じスタイルに行き着くと思います。
「魔法以外にも近接戦闘にも優れているとは、私も興味津々です」
「あ、その辺りは分かります。ウィラとは違う支援魔法も使えるみたいだし、我が騎士団にスカウトしたいくらい」
と、ウィラ様とティラ様。残念ながらクーベルト騎士団には行きませんからね。でも、さすがに閣下が連れて来ている共と考えると、実力者揃いでミストリア最強と呼ばれる騎士団の一員というのは、とても好感はあります。
「ウィラ様も近接戦闘がお得意だと思うのですが?」
「いえいえ、私、刃物の扱いが苦手ですので……」
そう言いながら視線を腰に下げているメイスに送ると小さく微笑んだ。踏み込みや身体能力、魔法の使い方を考えるとウィラ様はどちらもこなせると私的には思うのですけれども、自身がそういうのだから、そうなのでしょう。
「しかし、この階層は厄介ですね。思った以上に複雑な構造で、色々な場所に罠がありますし」
「確かにその通りですね。ある意味、下層より中層の方が難所かもしれないと『黒狼』様も仰ってましたよ」
と、ロディ様が言いました。私は小さく頷くと彼はにこやかに微笑みました――が、その次の瞬間、私とウィラ様、ロディ様が妙な気配を感じて周囲を見回します。異変を感じたティラ様も警戒態勢を取ります。
「少し離れた位置から私達の事を監視している者がいますね……」
「かなり、魔法の腕が立つ者かと思います。私の魔力探知から逃げました――一瞬だけ、気配を感じた程度です」
ウィラ様はそう言って腰に下げていたメイスを掴みます。現状、こちらに近づく気は無さそうですが、不快ですね。
「ルーさんはどう思いますか?」
ロディ様も警戒状態でこちらに視線を送ってから訊いてきます。私は魔道具では無く、物理、魔法と防ぐ結界魔法を発動させます。これに関しては魔道具の方が強力ではありますが、相手の不意打ちを防げればいいので、あくまでもすぐに対応する為の準備にすぎません。
「こちらに近づくのは危険と思っているのか、一定の距離を取っていますね――ウィラ様が言ったように、魔法にはかなりの自信がありそうです。魔力の気配を追うのは難しそうですね。かすかにしか感じません」
「とりあえず、近づいてきそうかだけ分かれば……とりあえず、警戒しつつ先へ急ぎましょう」
ロディ様の言葉に全員が同意して、私達は今までより速度を上げて中層を進んでいきます。
私達を襲ってきた冒険者達はこの中層の構造を良く知っている者の犯行だというのは明確であった。人数が多いだけのパーティーで少人数とはいえ戦闘能力が非常に高い面子が特定の場所へ追い立てられたのだ。普通に考えると少しおかしい事は気が付いていた。
一応、不安の芽に関しては警戒を促しておいたので、大丈夫だと思いますが――今回の目標はたぶんお嬢様では無いような気がしています。が、現状は確証を得ていないので何とも言えませんね。
たぶん、お嬢様の方も奥様に連絡を入れているでしょうから、上の方で何か動いてくれるかもしれません。
私はそんな事を思いつつも、魔導剣で魔物を両断します。
「ルーさん、気になっていたのだが、その剣は一体……」
戦闘がひと段落したタイミングでロディこと、ロベルト様が訊いてきます。因みに他の皆も気になっていたようですね。
「『黒狼』様もお使いになっている魔銃とはまた別の我が家が権利を所有する魔導剣という物です。簡単に言えば魔力による剣ですね。様々な魔法にも対応可能な剣で、軽く携帯性が高い武器です。と、いいますか使ってみたいという表情はおやめください。主やその上の許可が必要になりますので――」
そう言うとロベルト様は「まぁ、だよね」と、小さく言って苦笑しました。ロベルト様の戦闘スタイルでは魔導剣よりも魔銃と剣の両手持ちの方が相性が良さそうですが、そこは黙っておきましょう。クーベルト閣下の影響がとても強い方ですし、追々は同じスタイルに行き着くと思います。
「魔法以外にも近接戦闘にも優れているとは、私も興味津々です」
「あ、その辺りは分かります。ウィラとは違う支援魔法も使えるみたいだし、我が騎士団にスカウトしたいくらい」
と、ウィラ様とティラ様。残念ながらクーベルト騎士団には行きませんからね。でも、さすがに閣下が連れて来ている共と考えると、実力者揃いでミストリア最強と呼ばれる騎士団の一員というのは、とても好感はあります。
「ウィラ様も近接戦闘がお得意だと思うのですが?」
「いえいえ、私、刃物の扱いが苦手ですので……」
そう言いながら視線を腰に下げているメイスに送ると小さく微笑んだ。踏み込みや身体能力、魔法の使い方を考えるとウィラ様はどちらもこなせると私的には思うのですけれども、自身がそういうのだから、そうなのでしょう。
「しかし、この階層は厄介ですね。思った以上に複雑な構造で、色々な場所に罠がありますし」
「確かにその通りですね。ある意味、下層より中層の方が難所かもしれないと『黒狼』様も仰ってましたよ」
と、ロディ様が言いました。私は小さく頷くと彼はにこやかに微笑みました――が、その次の瞬間、私とウィラ様、ロディ様が妙な気配を感じて周囲を見回します。異変を感じたティラ様も警戒態勢を取ります。
「少し離れた位置から私達の事を監視している者がいますね……」
「かなり、魔法の腕が立つ者かと思います。私の魔力探知から逃げました――一瞬だけ、気配を感じた程度です」
ウィラ様はそう言って腰に下げていたメイスを掴みます。現状、こちらに近づく気は無さそうですが、不快ですね。
「ルーさんはどう思いますか?」
ロディ様も警戒状態でこちらに視線を送ってから訊いてきます。私は魔道具では無く、物理、魔法と防ぐ結界魔法を発動させます。これに関しては魔道具の方が強力ではありますが、相手の不意打ちを防げればいいので、あくまでもすぐに対応する為の準備にすぎません。
「こちらに近づくのは危険と思っているのか、一定の距離を取っていますね――ウィラ様が言ったように、魔法にはかなりの自信がありそうです。魔力の気配を追うのは難しそうですね。かすかにしか感じません」
「とりあえず、近づいてきそうかだけ分かれば……とりあえず、警戒しつつ先へ急ぎましょう」
ロディ様の言葉に全員が同意して、私達は今までより速度を上げて中層を進んでいきます。
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