悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

144.悪役令嬢のお母様は双子の妹と話をする

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 娘から二度目の連絡があってすぐに私は旦那様にも事情を説明し、即座に妹と連絡を取った。

 残念ながら即日に会う事は無理だったけれど、翌日の朝早くに私は城へ向かい妹であるキャロラインとの待ち合わせ場所に向かった。城の中でも普段は使われていない離宮で元々は私とキャロルが使っていた城内の位置で言えば最も離れた位置にある離宮だ。

 正直なところ、此処は警備上はあまり良くは無いのだけど、今回はこちらで朝食を取りながら話をしようとなった。

 私は城内から離宮への通路を歩きながら、周囲の様子を探る。目立たないように立って警戒しているのは近衛の騎士が数名。侍女達に至ってはキャロラインがそのまま自室から連れ立ったようね。と、そのような事を考えながら探知の範囲をさらに広げる。

 魔力と言うのはどこにでもあるモノだから、そこらの魔力と馴染むくらいに薄くすれば多くの者達はこれに気が付かない。冒険者の斥候役なども似たような技量を持っているのは知っているけれど、私の方が多分精度は高いハズ。あ、ですが……気が付いた人間がいますね。キャロルはすぐに気が付くのは普通ですけど、アレはキャロルの専属ですね。彼女も結構な変わり者ですから、流石と褒めておきましょう。

 そんな事をしつつ、私はキャロルが待つ部屋へ到着しました。バネッサが私の前に立ち、そこで待ってた女官とやり取りをし、その後、扉が開かれます。王宮では面倒ですが、こういったやり取りは絶対的に必須なのです。

「ごきげんよう、キャロル」
「ええ、姉様。ごきげんよう」

 あら、珍しく私を姉として扱うようですね。

「ふふっ、今日は昔のように姉妹としての立場で話をするっていう趣向よ。楽しそうでしょ?」

 相変わらず突飛な事を思いつく妹です。ハッキリ言って振り回され続けて、はや年齢分だけども、近年は私の方が振り回していた感はありますが、相変わらずね。

「氷の女王とか冷徹な女と言われているキャロライン女王陛下がこんなにお茶目だと、誰が思っているでしょうね?」
「あら? ウチの娘は気が付いていたわよ」

 確かにアリエル王女とキャロルは性格的によく似ている。場面に合わせて自分を演じるのがとても上手いせいで、周囲はそうは思っていないだろうけど。

 そんな事を思いつつ、私は席に着く。二人のお茶会は最近もしているけれど、こうやって幼い時に住んでいた離宮での食事は本当に久しぶりだ。

「一方は先日した通りだけど、不埒な輩が娘の元に現れたわ」
「どこの誰か、分かっているの?」
「残念ながら、娘の方は分からないと言っていたわ。分断されたのも問題よ――と、言ってもディルくんが付いてるから問題は無いでしょうけど」
「あの子は強いからね。まぁ、私達の方が上だけど」

 と、意地悪そうな表情で言った。自信過剰ともとれる発言だけど、事実なので間違ってはいないけれど、周囲はそうは取らないだろう。まぁ、そんな事はどうでもいいけど。

「で、とりあえず付近は信頼できる人間のみだから、話して貰っても構わないわよ」
「キャロル。少し急ぎ過ぎね。結界は使わせて貰うわ」

 そう言って、私は結界の魔道具を使用する。色々と改良を加えた最新型でちょうど離宮の広さくらいをカバーする設定にしてあるので展開すると、周囲に魔力の膜が作られたハズだ。ちなみに今回の改良型は広範囲をカバーしつつ、特定の人間を登録しておいて、その者に害意を抱くと自動的に結界の外へ排除する機能付きだ。

「相変わらず姉上は実験好きねぇ」
「おかげで貴女の安全が守られているのだから、文句は無しなんだから」
「それにしても、不埒な者が現れるということはどこからか、漏れた……と、考えるべきよね?」

 その通りなのだ。そして、娘からの依頼もそこだ。裏切者がどこかに居るのは間違いなく、娘達がお忍びで旅行している事を知っている人間に限られてくる。こういうのが漏れる場合は大抵は、侍女、執事、女中など、身の回りにいる人間の場合が多い。

「そうね。それにどれだけの規模で毒が広がっているか、調べないといけないわけね」
「ええ、私のところだけでは無く旦那様達にも動いて貰わないと困るわね」
「そうよね。ウチのところも今は外交関連でバタバタだけど、協力して貰う必要がありそうね」

 私はキャロルの意見を肯定し、次にどう動けばよいか考える。とりあえず、娘達が無事に帰ってこれるように人員を少し動かさなければいけない――けれども、戦力的な話で言えばエステリアとディルくんだけで過剰戦力と言えるから、アレだけど敵に上位冒険者クラスの人間が関わっている場合は状況が変わってくるので油断は禁物だ。

 それにしても、面倒事はどこからでもやって来るものね――と、私は心の中だけで溜息を吐くのだった。
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