悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

141.悪役令嬢は魔導洞窟の中層を目指す

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 現在、下層31階層でクーベルト辺境伯こと【白金】クラスの冒険者『黒狼』様と共に魔物を狩りまくっております。現状の目的は中層を目指す事ですが、閣下がどうしても少し鍛錬をしたいとの申し出に私は快くOKして、戦闘のサポートを続けております。

 さすが、ゲームでは剣術ではミストリア随一と言われていたネームドモブだけあって、魔力の扱い方から、特殊な戦闘技術まで褒めるところしかありません。それに何と言ってもカッコいいのです。

 ひとしきり31階層の敵を駆逐してしまい、私達は休憩がてらに結界の魔道具を起動して、魔導洞窟ダンジョン内でテーブルとイスを取り出してお茶を楽しんでおります。

「ふむ、まさか魔導洞窟ダンジョンでこのようなお茶と食事を頂けるとはね」
「たまには良いでしょう? こういうゆったりとした時間を過ごすのも」

 そんな事を言いながら、空間収納アイテムボックスに確保していた食事を楽しむ。ちなみに今回は試作バージョンのハヤシライスです。本当はカレーを作りたかったのだけど、スパイスが思ったように手に入らなかった為にハヤシを作って貰ったヤツなのですが、中々の出来に私としては満足です。

「それにしても、空間収納アイテムボックスとは便利なモノだね」
「やはりご興味がありますか……」

 正直なところ、閣下にも渡しておけば我が家へ武器メンテナンスに来るのも楽になると思うけれど、お母様からのお許しは貰えないでしょうね。


「しかし、残念ながら簡単に許可は出ないでしょうね」
「まぁ、だろうね」

 空間収納アイテムボックスを一般化する事が出来ればいいのだけど、やはり危険なモノを簡単に持ち込める危険性とかを考えると難しそうなんだよね。その辺りの安全確保に関しての魔道具とか仕組みを作らないとダメよね。

「そういえば、どこかで野営しなければいけないと思うのですが、閣下は如何お考えですか?」
「ああ、少し寄り道をしているが、今日中に行けるところでいえば後2階層ほど上がれればいいかと思っているのだが、君に野営などさせたと後で知られると問題にならないか?」
「現状は非常事態ですから、大丈夫だと思いますよ。まぁ、心配であれば確認致しましょう」
「は?」

 うん、良い反応だわ。私はこの魔導洞窟ダンジョンの深い場所で通信可能か確認する目的もあって使いどころだろうと思い、通信の魔道具を取り出す。

「因みに、これは超一級の機密が含まれる魔道具ですので、絶対に口外なさらないでくださいね。まぁ、閣下であればそんな事はしないと信じております」

 と、言うと彼は困ったような顔をしつつ「あいわかった」と真剣な声で返答をした。

 魔道具を起動するとかなりのノイズが聴こえ、通信状態があまり良くない事が分かるけれど、なんとか繋がってはいることだけは分かった。

『――ザッ――ザザザッ――エステリア? 何か……のかしら?』
「お母様、聴こえますか?」
『随分……が……わね」

 うーん、これだと会話が成り立たないわね。一時的にブーストを掛けて音が改善しないかしら? 私はとりあえず練り上げた魔力を入れて効果強化の魔法を差し込む。

「調整してみたのですが、どうですか?」
『あら? 急に音が良くなったわ』
「効果強化の魔法を差し込みインタラプトしてみました――少し魔力の消費が激しいので通信時間は短くなると思いますが……」
『分かったわ。で、何があったのかしら?』

 と、私はお母様に現状の状況を伝えた上で、野営に関してのお許しを得るのと同時に私達を襲って来た者達に関しての情報収集を頼んでおいた。

『とりあえず、我が家の影も動かしますから、出来るだけ早く上層を目指しなさい』
「はい、ご心配かけてすいません、お母様」
『それくらいはいいのよ。ちゃんと帰ってくるのですよ』
「はい、お母様」
『あ、それから『黒狼』殿、聴いているのなら娘には一切触れない事、おわか――』

 切れたというより、切った。何を言っているんだお母様。全く……。

「あ、あのエステリア嬢、私はどこからツッコミを入れれば良いか迷っているのだが」
「黙って聴かなかった事にしてくださいませ」

 私の言葉に「まぁ、そうだな……そうするとしよう」と、苦笑しながら言った。因みに私はちょっぴり申し訳なさ一杯だったけれど、気持ちを切り替えてこの後の予定をクーベルト辺境伯と立てて31階層を後にした。

 目指すは上層9階層! ハイペースで向かえば約2日程度で行けるのでは無いかという閣下の目算だ。特に大きな難所は3、4か所だけらしいので、多分大丈夫でしょう。
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