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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
139.悪役令嬢は魔導洞窟の敵で実験する
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32階層で徘徊者を適当にあしらって私達は31階層に上がって来た。因みに中層は11階層から20階層までを中層とし、それ以降を下層と呼んでいるらしい。私達が飛ばされる前にいたのは13階層なので、20階層程度を上に上がらないといけない。
そして、31階層と32階層を繋ぐ階段を上がった部屋は薄暗く、壁に揺られる松明らしき炎の灯だけが妙に印象に残る部屋だった。
その部屋の中央に2メートル以上ある、黒い全身鎧のようなモノを着た手足が長い人――いいえ、あれは魔物ね――が見える。そして、侵入者である私達を見つけてゆっくりと振り向く。
ゆらりと揺れる赤い瞳がまるで獣のようで、ドキリとする。クーベルト辺境伯が事前に教えてくれていたので、私は即座に対応し、閣下は事前の打ち合わせ通りに魔銃を構える。
もの凄い速度で黒の猟犬と呼ばれている魔物は巨大な半月刀と日本刀を合わせたような剣で薙ぎ払ってくる。けれども、私が展開した防御結界に阻まれる。魔力を帯びた金属と防御結界がぶつかる時に発生する音と光が私達と魔物を照らす中、クーベルト辺境伯は魔銃で5発、弾を発射する。
発射された銃弾は即座に魔術と変わり、魔物に向かって真っすぐ飛び、防御結界に当たった時のような音と光を放って弾ける。
「言った通り、魔法や魔術は効かないだろう? 今のは高密度の光の矢だ。本来、この下層で見かける魔物であれば二発あれば確実に仕留めれるくらいの魔力で威力を調整した」
「では、次は属性を変えましょう。威力的には同程度で構いませんわ」
「了解だ」
このようなやり取りをしながら、私は黒の猟犬の攻撃を防ぎながら閣下は火、水、風、土、光、闇など様々な同程度の攻撃を行った。検証結果から、魔物が着ている魔法や魔術を防御する為の防御結界の魔法と似た効果を持っているようだ。基本的に防御結界にも色々と種類が存在するのだけど、物理攻撃は効くという話だったので魔法や魔術だけを弾く防御結界だと分かる。
「では、火力を上げていきましょうか。閣下は防御結界のサポートに入って下さいね。私が各属性の攻撃を連続で行いますので、よろしくお願いします」
「分かった」
私は防御結界を使いながら魔銃を構え、しっかりと魔力を入れた銃弾を5発撃つ。全ての銃弾で込めた術式は別で閣下が放った魔術に比べて圧縮率は10倍以上だ――けれど、火、水、風、土、と当たった後、光の弾が当たった瞬間に黒の猟犬の頭が爆ぜた。
「は?」
と、クーベルト辺境伯は素っ頓狂な声を上げる。えっと、私もちょっとは驚いてますよ。ええ、さすがに連続ヘッショには防御結界の機能も耐えれなかったようで頭部を失った魔物は剣を持ち上げた格好のままぐらりと後ろ向きに倒れ、動かなくなった。
「一定以上の負荷を掛ければ魔法や魔術でも倒せると分かりましたね」
「あ、ああ、色々と聞きたいのだが、パッと見の威力はそこまで高そうでは無かったのだが?」
「そうですか? 閣下が撃った魔術より確実に10倍ほどは高火力ですよ?」
「じゅ、10倍? 防御結界を張っていた所為で魔力探知が疎かだったのは認めるが、どうやったんだい?」
閣下は興味深そうに私に訊いて来る。と、いうか私の肩をがっしり掴んで訊いて来るのはおやめ頂きたいのですが……。私の視線に気が付いたようで閣下はソッと私を解放して恥ずかしそうに「すまない」と、言った。照れ顔頂きました! っと、違う違う。解説しましょう!
「簡単に説明しますわ。この術式を見て頂けます?」
私は先程使った銃弾に込めた術式を展開する。得意な光の矢の強化版でお母様は光の流星と呼んでいる。
「複雑な術式をあの時間で構築した……と、いうのか?」
「それは慣れですよ。これに超々々々高速詠唱も使えば、瞬時に構築可能です。ちなみに術式だけの威力では3倍から4倍といったところです。魔力の練り方を変える事で魔法や魔術の威力が上がるのですが、閣下もご存じかと思うのですが」
「い、いや、待ってくれ。魔力の練り方? で、出来れば教えて貰えないだろうか?」
「え、ええ、そ、それくらいなら――」
お母様、貴女達がやっていた方法論はどうも一般的な方法では無いと閣下の反応で分かりました。と、いうか――勝手に教えても大丈夫かな? えーっと、大丈夫……だと思うのよね。たぶんだけど。
そして、31階層と32階層を繋ぐ階段を上がった部屋は薄暗く、壁に揺られる松明らしき炎の灯だけが妙に印象に残る部屋だった。
その部屋の中央に2メートル以上ある、黒い全身鎧のようなモノを着た手足が長い人――いいえ、あれは魔物ね――が見える。そして、侵入者である私達を見つけてゆっくりと振り向く。
ゆらりと揺れる赤い瞳がまるで獣のようで、ドキリとする。クーベルト辺境伯が事前に教えてくれていたので、私は即座に対応し、閣下は事前の打ち合わせ通りに魔銃を構える。
もの凄い速度で黒の猟犬と呼ばれている魔物は巨大な半月刀と日本刀を合わせたような剣で薙ぎ払ってくる。けれども、私が展開した防御結界に阻まれる。魔力を帯びた金属と防御結界がぶつかる時に発生する音と光が私達と魔物を照らす中、クーベルト辺境伯は魔銃で5発、弾を発射する。
発射された銃弾は即座に魔術と変わり、魔物に向かって真っすぐ飛び、防御結界に当たった時のような音と光を放って弾ける。
「言った通り、魔法や魔術は効かないだろう? 今のは高密度の光の矢だ。本来、この下層で見かける魔物であれば二発あれば確実に仕留めれるくらいの魔力で威力を調整した」
「では、次は属性を変えましょう。威力的には同程度で構いませんわ」
「了解だ」
このようなやり取りをしながら、私は黒の猟犬の攻撃を防ぎながら閣下は火、水、風、土、光、闇など様々な同程度の攻撃を行った。検証結果から、魔物が着ている魔法や魔術を防御する為の防御結界の魔法と似た効果を持っているようだ。基本的に防御結界にも色々と種類が存在するのだけど、物理攻撃は効くという話だったので魔法や魔術だけを弾く防御結界だと分かる。
「では、火力を上げていきましょうか。閣下は防御結界のサポートに入って下さいね。私が各属性の攻撃を連続で行いますので、よろしくお願いします」
「分かった」
私は防御結界を使いながら魔銃を構え、しっかりと魔力を入れた銃弾を5発撃つ。全ての銃弾で込めた術式は別で閣下が放った魔術に比べて圧縮率は10倍以上だ――けれど、火、水、風、土、と当たった後、光の弾が当たった瞬間に黒の猟犬の頭が爆ぜた。
「は?」
と、クーベルト辺境伯は素っ頓狂な声を上げる。えっと、私もちょっとは驚いてますよ。ええ、さすがに連続ヘッショには防御結界の機能も耐えれなかったようで頭部を失った魔物は剣を持ち上げた格好のままぐらりと後ろ向きに倒れ、動かなくなった。
「一定以上の負荷を掛ければ魔法や魔術でも倒せると分かりましたね」
「あ、ああ、色々と聞きたいのだが、パッと見の威力はそこまで高そうでは無かったのだが?」
「そうですか? 閣下が撃った魔術より確実に10倍ほどは高火力ですよ?」
「じゅ、10倍? 防御結界を張っていた所為で魔力探知が疎かだったのは認めるが、どうやったんだい?」
閣下は興味深そうに私に訊いて来る。と、いうか私の肩をがっしり掴んで訊いて来るのはおやめ頂きたいのですが……。私の視線に気が付いたようで閣下はソッと私を解放して恥ずかしそうに「すまない」と、言った。照れ顔頂きました! っと、違う違う。解説しましょう!
「簡単に説明しますわ。この術式を見て頂けます?」
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お母様、貴女達がやっていた方法論はどうも一般的な方法では無いと閣下の反応で分かりました。と、いうか――勝手に教えても大丈夫かな? えーっと、大丈夫……だと思うのよね。たぶんだけど。
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