悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

135.悪役令嬢は魔導洞窟の上層を目指す

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「そういえば、徘徊者を倒したわけですが……魔導洞窟ダンジョンの理からいって、復活しますよね?」

 私はふと思い出してそう言った。ちなみにさらに39階層の道も見つけたのだけど、現状は上層へ戻る事が優先だと考えている。

「ああ、半時ほど経てば復活する事になるだろう」
「であれば、上に戻る前に復活する可能性は高そうですね」
「普通に考えればそうだな」

 途中でまた道を防がれたりすれば、非常に面倒だと思う。普通は閉鎖された部屋での戦闘になって、部屋への入口は塞がれて次のフロアへの道が広がる。でも、ここの階層ボスである徘徊者はルールが随分と特殊だと思われるので、出来れば復活前に上層へ戻りたいけれど、上の階層に行けるか分からないところも難しいわね。

「問題は31階層に出入り出来るかを確かめねばならない。先に一度進まねば、戻れない可能性が高い……のだが、この『アンダンテール大洞窟』は色々と特殊な場所が多いので、知っている前提が前提とはならない事も多い」
「確かに私達が下層に落ちた大穴みたいな罠も普通は無いのですよね」
「ああ、普通の魔導洞窟ダンジョンでは少し考えられない。まぁ、無いわけでは無いのだがね」
「この魔導洞窟ダンジョンは色々と不可思議な事が多いのですね」
「まぁ、そうだな。普通は魔導洞窟ダンジョンごとに分かりやすい特徴があるのだが、この魔導洞窟ダンジョンは上層、中層、下層でバラバラで、本来、下層の途中でこういったボス敵部屋みたいな仕掛けがあるのも珍しい……」

 そういえば、普通は各階層ごとにボス部屋があったりするわけだけど、『アンダンテール大洞窟』では上層、中層、下層という単位でボスが出る……みたいな話だった。けれども、ボス扱いの徘徊者を倒し、さらに下の階層へ続く道があった事を考えると、下層は上層、中層のルールは通用しない場所となる。

「なんだか、不思議ですわね」
「だからこそ、第一級危険指定されている魔導洞窟ダンジョンなのだよ。まぁ、上層も時によって通常の魔導洞窟ダンジョンに比べて敵の数が段違いに多い時期があったりと、実は国内魔導洞窟ダンジョンの上層でも特に危険が大きい」
「――と、よく考えたらゆっくり歩いている場合ではなさそうですね」
「――だな」

 と、私と閣下は身体強化をして速足でここまで来たフロアを戻っていく。しかし、36階層に辿り着いた時に私達は足を止めた。

「まずいな……」

 閣下が周囲を見回しながら言った。私もそれに同意する。

 私達が徘徊者と追い掛けっこしていた時と地形が随分と変わっている事に気が付いたのだ。なんとも厄介な事だ。

「これでは32階層まで戻る前に徘徊者が出てきそうですね……」
「致し方無いとしか言えないな。魔物の気配が無いだけマシとしか」
「ですね。31階層より上はこういう事は無いのですか?」
「ああ、31階層も少し変わった場所ではあるが、それより上は中層になるから、ある意味で言えば31階層は特別に変わったフロアではある」
「それは気になりますね――なんとしても、上に行きたい気持ちになってきました」
「では、もうひと頑張りするしか無いな」

 と、閣下は笑顔で言った。笑顔頂きました! と、喜んでいる場合でも無く、私達は上の階層を目指して移動するのであった。

 雰囲気としてはまさに洞窟と言った感じの階層が続くのだけど、道が複雑で徘徊者と戦っていた時に比べて道が広く感じるのも感覚を狂わせる――と、言っても魔力探知では魔物の気配も無く、ただ洞窟を身体強化状態で素早く散歩している状態が続く。

「はぁ――面倒なのが復活したみたいですね」

 ちょうど、35階層に上がった時に徘徊者が復活した事が分かるような現象が目の前で起きた。それは先程まで地形が変わっていると思っていたが、地形自体が黒い靄によって形成されていくのが現象が目の前で起こった。そして、触手のような物体が集合して徘徊者が現れたのだ。

 私は素早く拘束魔術を複数展開して、敵の動きを止めて閣下と共に全力で駆け抜ける。

「どこまで止めれるか分かりませんが……」
「この地形もアレだと考えると、そもそも止めれるか――だしな」

 もしこれがゲームだったら、考えた人間を一晩掛けて問いただしたい気持ちだ。けれども、とにかく上へ、上へ向かわないといけないんだからね!
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