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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
131.悪役令嬢の仲間達は話し合う
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私達は上層9階の安全地帯へ一時的に戻って来ていた。当然、私達に攻撃を仕掛けてきた奴らの大半はエルーサとナスターシアの手によって始末された。一部、生き残った者は現在、安全地帯にある場所で拘束してある。
「問題はどうするか?」
私がそう言うとウィンディは迷わず「助けに行きましょう」と、答えた。ハッキリ言って私もそのつもりではある。しかし、エルーサとナスターシアが頑として反対だというのだ。
「どうしてだ? エルーサも自身の主を助けに行きたいと思っているハズだ」
私同様にエステリアを助けに行きたいハズの彼女専属のメイドであるエルーサが反対する意味が分からず思わず圧を掛けてしまう。彼女は私の前に膝をつき頭を下げる。
「私とて、エステリア様を今すぐにでも助けに行きたいという想いは御座います。しかし、彼女の側にはかの『黒狼』殿も居ます。今、この非常時を考えれば殿下の安全を優先すべきだと――我が主も必ずそう仰ると私は思います」
確かに、普通であれば私の安全確保が最もだと言うのは分かる。でも、私はエステリア無しに私が存在する――なんて事はありえないと思っている。だから、今の状況は非常に良くない。
「エルーサさん、せめて私とエルーサさんで下層を目指してエステリア様を探すというのはどうでしょうか?」
と、ウィンディが提案するが、エルーサは首を横に振ってそれを否定した。
「ど、どうして!?」
「『アンダンテール大洞窟』の下層は【白金】クラスの冒険者でなければ危険な場所です。残念ながら私とウィンディ様の二人では力不足かと思います。それに私達を襲って来た冒険者達の中に【白金】クラスの冒険者が居ました。どうやら、それが他の冒険者を動かしていたと思われます――そして、ソイツはどこかへ行ってしまったのです」
彼女は頭を下げたまま、そう言った。
「見失ったというのか?」
私は思わずさらに圧を掛ける。部屋中が私の魔力によって空気がビリビリと揺れる。
「は、はい――しかし、アレは『幻魔』と呼ばれる冒険者で、暗殺や謀を主にしている冒険者です。特に身を潜める力に長けているので、一度逃げ出した『幻魔』を見つけ出し捕まえる事はほぼ不可能かと思われます。故に狙われているのは殿下だと考えるのが最も自然かと思うのです」
私は魔力を抑えて、大きな溜息を吐いた。
「だとすれば、私達が街に戻ってくるのを待っている可能性もある――と、いうことか?」
「可能性としてはありますが、『アンダンテール大洞窟』の中よりは安全かと思うのですが……」
エルーサはそう言うがどうだろうか? それにもし私がエステリアの立場ならどういうだろうか――考えよう。エステリアが狙われる可能性も当然あるハズだけど、二人ともがターゲットだった場合。私だけ地上に出たパターンだと、『黒狼』がいるエステリアと女子供ばかりのパーティの私達だとどちらを狙った方が確実だろう?
答えは簡単だと思う。たぶん、エステリアも同じような事を考えるに違いない。
「しばらく、ここから移動しないでおきましょう。たぶん、エステリアでも同じ判断をするはずよ」
「しかし――」
これはナスターシアだ。彼女は私の専属だから、当然、私の安全を第一と思っているのは分かっている。けれど、今、動かないのが最も安全な気がしてならないのだ。
「ナスターシアもエルーサも言いたい事は分かるし、心配しているのも分かっている。だが、単純な話、女子供ばかりの私達と最上位冒険者『黒狼』と共にいるエステリア。どちらの方が安全だといえる?」
私の言葉に彼女達はハッとする。
「それに地上へ上がる最中に再び襲われる可能性も考慮すれば、しばらくここで引き籠っている方が安全だと思う。それに予定より長くとどまれば母上達も心配するであろう?」
と、私は少し悪戯な笑みを浮かべつつ、とりあえず私達に出来る事をやっておこうと企むのであった。
「問題はどうするか?」
私がそう言うとウィンディは迷わず「助けに行きましょう」と、答えた。ハッキリ言って私もそのつもりではある。しかし、エルーサとナスターシアが頑として反対だというのだ。
「どうしてだ? エルーサも自身の主を助けに行きたいと思っているハズだ」
私同様にエステリアを助けに行きたいハズの彼女専属のメイドであるエルーサが反対する意味が分からず思わず圧を掛けてしまう。彼女は私の前に膝をつき頭を下げる。
「私とて、エステリア様を今すぐにでも助けに行きたいという想いは御座います。しかし、彼女の側にはかの『黒狼』殿も居ます。今、この非常時を考えれば殿下の安全を優先すべきだと――我が主も必ずそう仰ると私は思います」
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「エルーサさん、せめて私とエルーサさんで下層を目指してエステリア様を探すというのはどうでしょうか?」
と、ウィンディが提案するが、エルーサは首を横に振ってそれを否定した。
「ど、どうして!?」
「『アンダンテール大洞窟』の下層は【白金】クラスの冒険者でなければ危険な場所です。残念ながら私とウィンディ様の二人では力不足かと思います。それに私達を襲って来た冒険者達の中に【白金】クラスの冒険者が居ました。どうやら、それが他の冒険者を動かしていたと思われます――そして、ソイツはどこかへ行ってしまったのです」
彼女は頭を下げたまま、そう言った。
「見失ったというのか?」
私は思わずさらに圧を掛ける。部屋中が私の魔力によって空気がビリビリと揺れる。
「は、はい――しかし、アレは『幻魔』と呼ばれる冒険者で、暗殺や謀を主にしている冒険者です。特に身を潜める力に長けているので、一度逃げ出した『幻魔』を見つけ出し捕まえる事はほぼ不可能かと思われます。故に狙われているのは殿下だと考えるのが最も自然かと思うのです」
私は魔力を抑えて、大きな溜息を吐いた。
「だとすれば、私達が街に戻ってくるのを待っている可能性もある――と、いうことか?」
「可能性としてはありますが、『アンダンテール大洞窟』の中よりは安全かと思うのですが……」
エルーサはそう言うがどうだろうか? それにもし私がエステリアの立場ならどういうだろうか――考えよう。エステリアが狙われる可能性も当然あるハズだけど、二人ともがターゲットだった場合。私だけ地上に出たパターンだと、『黒狼』がいるエステリアと女子供ばかりのパーティの私達だとどちらを狙った方が確実だろう?
答えは簡単だと思う。たぶん、エステリアも同じような事を考えるに違いない。
「しばらく、ここから移動しないでおきましょう。たぶん、エステリアでも同じ判断をするはずよ」
「しかし――」
これはナスターシアだ。彼女は私の専属だから、当然、私の安全を第一と思っているのは分かっている。けれど、今、動かないのが最も安全な気がしてならないのだ。
「ナスターシアもエルーサも言いたい事は分かるし、心配しているのも分かっている。だが、単純な話、女子供ばかりの私達と最上位冒険者『黒狼』と共にいるエステリア。どちらの方が安全だといえる?」
私の言葉に彼女達はハッとする。
「それに地上へ上がる最中に再び襲われる可能性も考慮すれば、しばらくここで引き籠っている方が安全だと思う。それに予定より長くとどまれば母上達も心配するであろう?」
と、私は少し悪戯な笑みを浮かべつつ、とりあえず私達に出来る事をやっておこうと企むのであった。
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