悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
上 下
130 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

130.悪役令嬢は魔導洞窟で何があったか説明する

しおりを挟む
 私達は順調に中層を進み13階まで降りて来ていた。

 このフロアは中層の中では道幅が狭く複雑であるということから、慎重に慎重を期して進んでいたのだけど、途中でかなりの人数が近くにいる事が魔力探知で分かり、私達はその場から移動して安全を確保しようとしていた。

 しかし、私達は少しだけ勘違いをしていた。彼等の目的が私達だということには気が付いて無かった――と、いうよりさすがにそんなアホはいないだろうと思っていたのです。

「と、いうことは……どこからか君達の情報が漏れていた?」
「はじめは疑いましたが、どうやらそういう事では無かったのです」

 そう、私達が何者か? そこは問題ではなく、私達が女子供しかいない――と、いうところが重要だったようです。これは彼等が妙に女が女がと連呼するので憶測でしかありませんが、大人数で魔導洞窟ダンジョンを攻略するというのは彼等にとって利点が多い。特に彼等は常習的に他の冒険者を襲っていたと考えます。

 妙な罠と、ダンジョン内を20人ばかりで上手く4、5人の人間を特定の場所へと誘導する技には少し感心したくらいです。しかし、彼等にとって随分と想定外の事が起きたのです。

「確かに普通は【白銀】がいるとは思わないだろうし、全員が強さの桁が違うとは普通は考えないだろう」

 彼は私の話を聞きながらそう言った。まぁ、当然といえば当然な話だけど――彼等は自分達が追い詰めてると信じて疑わなかった。こちらが反抗するまでは。

 袋小路に行くことで私達は後方からの攻撃を防ぎ、敵を前面に集めることに成功した。

「流石にそこに罠があるとは思って無かったと、言うことか」
「ええ、その通りです。特定の行動を鍵として動くタイプの罠で敵が仕掛けた罠では無く魔導洞窟ダンジョンの元から存在する罠のようでした」
「君が後方にいたから?」
「いえ、どうやら敵に罠の存在を知る者が居たのです」

 なるほど、と彼は興味深そうに言った。因みに本来は上層9階の安全地帯セーフゾーンを出るときに冒険者ランクの照合を何等かの方法で抜けた奴が潜んで居たのです。彼は自分のパーティーメンバーが倒される事などどうでもいいといった雰囲気でした。そして、罠が起動して私達は閉じ込められました。

「なるほどな。私はたまたま付近で魔物と戦闘中だったのだが、他の冒険者がたまたま私達に忠告してくれたのだ。冒険者同士が魔導洞窟ダンジョン内で戦っているから注意を――とな」
「閣下には本当に感謝しかありませんわ」
「しかし、偶然私が来なければどうしていたのか……」

 それに関しては本当に申し訳ないとしか言えませんね。ただ多少の危険はあっただろうけど皆で力を合わせればどうにかなったという希望的観測も無くは無い。けれども、クーベルト辺境伯もとい【白金】クラスの冒険者『黒狼』様がにも助けてに来てくれたお陰で短時間で脱出出来たと言えるでしょう。

「そういえば、閣下はどうやってあの壁を破壊したのですか?」
「それは私が得意とする魔法の一つを多重発動した上で壁を剣で斬り刻んだだけさ」
「土系統の魔法でしたね。効果としては振動と衝撃ですか? 魔法というか、魔術ですよね?」
「想像に任せるよ。まぁ、君の武器のおかげともいえるよ。多重発動も以前は苦労していたのだけど、あの武器のおかげで色々と応用が利くようになったからね」
「でしたら良かったですわ」

 ただ、その後に多重の罠が発動するとは思いもよらず、巻き込まれそうになったアリエルを閣下が庇って下さったのだけど、私は咄嗟にクーベルト辺境伯を掴もうと手を伸ばして、一緒に転送されてしまった。

「そうだ。で、そこからは覚えているかい?」
「実は――」

 転送先に驚いて思わず気を失ってしまったのよね。あんな大きな穴、それは怖いって。

「私と君は巨大な縦穴に転送されて、落ちたまでは良かったんだが、私は君を庇っていても上手く着地出来ると高を括っていたんだが……途中でトカゲ野郎に邪魔をされてしまってね。残念ながら着地に失敗して、かなりのダメージを追ってしまったよ」
「それでも、あの竜種の魔物を倒したのですね」

 既に竜の死体は空間収納アイテムボックスへ移動させた。けれど、ドラゴンを私を抱きかかえたまま落下しつつ仕留めるなんて、さすが……と、いうところよね。

「いや、本当に君がいてくれて助かったよ」
「それは閣下が私を守ってくれたからです。それにしても、この場所の通路を土魔法で塞いだのはどうしてなんでしょう?」
「ああ、それは徘徊者がいたからだ」
「徘徊者ですか?」

 彼は何やら難しそうな表情をする。徘徊者とは一体なんのでしょうね。

「『アンダンテール大洞窟』の下層に棲む、迷惑極まりない魔物だよ。おかげで、場所が分かったくらいさ。下層の32階から38階付近を周回している危険超級指定されている魔物で、多数の触手を持つとても強力な魔物だ」
「閣下でも、厳しいですか?」
「手負いだったからね、あの時は――とりあえず、この空間に入ってこれないように手を尽くすので精一杯だったよ」
「倒せますか?」

 二人なら……可能かどうかを訊いたつもりだったけど、クーベルト辺境伯の様子はイマイチな雰囲気だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】

ゆうの
ファンタジー
 公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。  ――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。  これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。 ※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

処理中です...