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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

126.悪役令嬢は魔導洞窟を駆ける

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 私達は上層4階の安全地帯セーフゾーンを出て魔導洞窟ダンジョンを軽快に進んでいるのだけど、正直、もう少しペースを上げてもいいような気もしている。

 何故かというと、アリエルとウィンディが武器の扱いにある程度順応しちゃったのだ。ナスターシアは元の武器より重心や長さが違うことに戸惑っていたけれど、あれから2階ほど下がった現在、ある程度は使えていると言っても過言では無い。

 そんな事を考えていると、同じ事を考えていたのかエルーサが提案する。

「皆様、もう少しペースを上げても良いでしょうか?」

 と、そう言った瞬間に私は同調してペースを上げるべきだと主張した。それを聞いてウィンディも了解し、少し悩んでいたアリエルはチラリとナスターシアを見る。

「わ、私も大丈夫です。これくらいの事で後れを取るような訓練はしておりません」
「……なら、私もその意見に賛成よ」

 そこからは全員が身体強化を常に使用した状態で、目の前に出る敵を粉砕しつつ、この階層あたりでしか戦えない普通の冒険者では絶対にマネすることは無い、常に走りながら移動していく。慎重に行動? 知らん、そんな事は!!!

 と、思いつつキッチリと周囲の魔力反応を感じながら、駆けて行く。本来はキチンと魔物の素材なども確保しながら降りて行くのだけど、ここら辺に私が欲する物は無かったので、無視して先へ進んだのだ。

 しかし、これは高ランクの冒険者でも時にする行為であるので、大きな問題にはならないだろう。それに魔物の死体なども一定の時間が経てば風化するように消える。この現状は魔導洞窟ダンジョンに帰る、魔導洞窟ダンジョンに喰われるなどの言い方がされる。

 魔導洞窟ダンジョンというのはこの世の理とは少し違うルールによって成り立っている不思議な空間でり、人によれば魔導洞窟ダンジョンその物が別の生き物ではないか、という説もあるくらいだ。

 ま、それはさておき、駆け足で降りていくこと約2時間経って、上層9階にある安全地帯セーフゾーンへたどり着いた。

 ちなみに上層9階の安全地帯セーフゾーンはこの魔導洞窟ダンジョン内最大規模の安全地帯セーフゾーンとなる。そして、ここには一つ確認する事があったで元からここには絶対に立ち寄る予定だった。

「宿の手配をしてまいりました」

 そう言ったのはエルーサだ。本日はここでゆっくりと寝てから中層に向けて出発する予定なんだけど、ここで休むのを提案してきたのもエルーサである。理由もキチンと説明を受けていて、最も大きな理由は10階から11階に進む場所は特別に強い魔物が出る。所謂ボス部屋というヤツがあるから、事前に準備と打合せをする為に9階にある安全地帯セーフゾーンで休憩をするパーティーは多く、素通りする方が稀らしい。

「現在10階側に向かった冒険者の照会は出発時にするのかしら?」
「はい、その方がいいでしょう。私達が休んでいる間に出発する者達もいないとは限らないので」

 それは確かに、その通りよね。因みに冒険者の照会は結構重要で、この魔導洞窟ダンジョンの9階はここを通らないと10階へは行けない場所に作られていて、関所の役割も果たしている。

 11階以降の階層は魔物の強さが跳ね上がるのが最もな理由で、強くも無い冒険者が通った場合の生還率はほぼ無い。と、言われていた為に上層9階の安全地帯セーフゾーンが作られたと言っても過言じゃない。第一級魔導洞窟ダンジョンの多くに上層と中層の間にこういった施設を冒険者ギルドが中心となって運営しているのは低いランクの冒険者を多く生き残らせる事に注力してきた歴史がある。

 そして、逆に高ランクの冒険者にとっては中層以下の階層は美味しい狩場なので、競合する冒険者が現在どれくらいいるのか――と、いう情報が重要になってくる。これは魔導洞窟ダンジョン内で他の冒険者と出会った時、相手がピンチの場合は加勢するのは問題無い場合が多いけれど、そうでない時に横入りするのはマナー違反で冒険者同士の争いの種となる。

 故に事前にどれくらいのランクの冒険者が潜っているか? または二つ名持ちの冒険者が潜っているなどの情報は非常に大事になってくる。

「とりあえず、明日の打合せをしてからゆっくりと休むって感じね」
「はい。お嬢様」

 因みに打合せの後、秒で意識を手放してぐっすりと寝たわ。
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