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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
118.悪役令嬢は旅行する その6
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朝早くにバラダインの宿を引き払いハーブスト公爵領へ向かい、馬車を走らせる。
幾度かの休憩を挟んで夜になり、リーニアンの街に到着した。リーニアンの街は完全に城塞都市で中心部にある城を中心にした街となっていて公爵家の常駐騎士が多くいるらしい。リーニアンには一度も行ったことはなかったけれど、我が家の別邸がありそこに今回は宿泊する。街の中心部にある城壁の中にある一角にある邸宅だ。
私達は到着してすぐに食堂で集合し、夕飯を食べながら明日からの予定を確認し合う。
「お嬢様方はお食事をしたまま聴いて頂ければと思います」
と、私の後ろに立つエルーサがそう言った。私達は視線を交わしてから、目の前に広げられた食事に手を付け始める。それを確認したようにエルーサが話を続ける。
「明日は一度、冒険者ギルドへ向かいます。そこで『アンダンテール大洞窟』への入場許可を得てから、依頼書の確認を行ってから魔導洞窟へ向かいます」
私はエルーサの話を聞きながら、料理を口にして思わず周囲を確認する。随分と私が屋敷で広めたレシピが使われていると思っていたけれど、ここの料理はアレね。昔を思い出す感じの塩と胡椒の味しかしない料理だ――料理人には教育が必要ね。とりあえず、皆はそこまで微妙な顔をしていない事を考えると慣れているのか。私が贅沢なだけか……。
「また、皆様の呼び名ですが、アリエル王女殿下はエル、お嬢様はリア、ウィンディ様は……そのままで問題ないそうですが、ナスターシア様はシア、私エルーサはルーとお呼びください。また無礼かと存じますが、公的な立場を隠してでの活動になりますので、ナスターシア様は特にアリエル王女殿下を姫様と呼ぶのは控えて下さい」
「心得ております」
と、エルーサの言葉にやや食い気味でナスターシアはそう言った。先程確認したのだが、ナスターシアとエルーサは冒険者としての登録もしてあるのだけど、いつの間にかに私よりランクが上になっているのはどういうことなの?
「って、いうか。なんで私の冒険者ランクが一番低いのよ」
思わず愚痴ってしまったわ。皆の視線が集まるけど、反省はしないわ。
「お嬢様を先導できるように小学へ通われている間に少し頑張らせて頂きました」
「ちょっと頑張って【白銀】になるっておかしくない?」
ちなみに今回のメンバーの中でエルーサが最も高位ライン冒険者になる。しかも、二つ名までつけられているらしい。
「さすがエステリアの専属メイドというところね。まさか噂の瞬速の魔女だとは思わなかったわ。ウチのナスターシアでも【銀】だというのに……」
「姫様。本来は冒険者の真似事などするモノではありませんから、別にランクがどうこうと張り合う必要はございません」
「あら? それならお母様や伯母様は【白金】を持ってるわよ? 強さも本物だけど、最高位冒険者なのだから、娘の私も母に恥ずかしくないくらいに冒険者としても最高位を目指すべきだと思わないからしら?」
と、アリエルが悪戯っ子のような笑顔で言う。そうだ、確かにお母様と女王キャロラインも冒険者として活動していた時期があるのだ。しかも、色々な二つ名を持っているのよね。
「くっ、しかしですね……姫様。あの方達は特別というか規格外というか……」
「ナスターシア様。アリエル殿下やお嬢様には口で立ち向かおうなどと思ってはいけないことは分かっているでしょう」
「……はぁ、確かにそうですね。失礼しました」
「ともかく、『アンダンテール大洞窟』は上層とされる10階層あたりまでは【鋼】から【銀】程度の冒険者向けと言われていますが、10回層以下は大帝国内でも危険だと言われている魔導洞窟のひとつです。出来る限り、上位である私の指示に従うようにお願いします」
事前にも聞いているけど、まぁ、エルーサの言う事を聞かずに勝手するな。と、いうことは分かるけどね。後、『アンダンテール大洞窟』って魔物の種類が非常に豊富な魔導洞窟って話だけど、一番の問題は道が結構狭いのが難点で広域系の魔法や魔術は出来るだけ使ってはいけないらしい。ま、考えたら当然ではあるけど、年に何度も強力な範囲魔法を使って冒険者側に被害が出る事故があるらしい。
「一日目は上層で雰囲気を確かめて、二日目は中層を目指します。下層に関しては【白金】でも単独では厳しいと言われるほどの危険地帯なので基本近づかないつもりでお願いします。今日はお食事の後は各お部屋でお寛ぎ頂いて、明日の朝、準備が整い次第出発いたしますので、よろしくお願い致します」
と、エルーサは締めくくって私達は微妙な食事を続け、食後に私が使っている部屋でアリエルとウィンディで食後のお茶会を開く約束をして夕食の時間を終えた。
幾度かの休憩を挟んで夜になり、リーニアンの街に到着した。リーニアンの街は完全に城塞都市で中心部にある城を中心にした街となっていて公爵家の常駐騎士が多くいるらしい。リーニアンには一度も行ったことはなかったけれど、我が家の別邸がありそこに今回は宿泊する。街の中心部にある城壁の中にある一角にある邸宅だ。
私達は到着してすぐに食堂で集合し、夕飯を食べながら明日からの予定を確認し合う。
「お嬢様方はお食事をしたまま聴いて頂ければと思います」
と、私の後ろに立つエルーサがそう言った。私達は視線を交わしてから、目の前に広げられた食事に手を付け始める。それを確認したようにエルーサが話を続ける。
「明日は一度、冒険者ギルドへ向かいます。そこで『アンダンテール大洞窟』への入場許可を得てから、依頼書の確認を行ってから魔導洞窟へ向かいます」
私はエルーサの話を聞きながら、料理を口にして思わず周囲を確認する。随分と私が屋敷で広めたレシピが使われていると思っていたけれど、ここの料理はアレね。昔を思い出す感じの塩と胡椒の味しかしない料理だ――料理人には教育が必要ね。とりあえず、皆はそこまで微妙な顔をしていない事を考えると慣れているのか。私が贅沢なだけか……。
「また、皆様の呼び名ですが、アリエル王女殿下はエル、お嬢様はリア、ウィンディ様は……そのままで問題ないそうですが、ナスターシア様はシア、私エルーサはルーとお呼びください。また無礼かと存じますが、公的な立場を隠してでの活動になりますので、ナスターシア様は特にアリエル王女殿下を姫様と呼ぶのは控えて下さい」
「心得ております」
と、エルーサの言葉にやや食い気味でナスターシアはそう言った。先程確認したのだが、ナスターシアとエルーサは冒険者としての登録もしてあるのだけど、いつの間にかに私よりランクが上になっているのはどういうことなの?
「って、いうか。なんで私の冒険者ランクが一番低いのよ」
思わず愚痴ってしまったわ。皆の視線が集まるけど、反省はしないわ。
「お嬢様を先導できるように小学へ通われている間に少し頑張らせて頂きました」
「ちょっと頑張って【白銀】になるっておかしくない?」
ちなみに今回のメンバーの中でエルーサが最も高位ライン冒険者になる。しかも、二つ名までつけられているらしい。
「さすがエステリアの専属メイドというところね。まさか噂の瞬速の魔女だとは思わなかったわ。ウチのナスターシアでも【銀】だというのに……」
「姫様。本来は冒険者の真似事などするモノではありませんから、別にランクがどうこうと張り合う必要はございません」
「あら? それならお母様や伯母様は【白金】を持ってるわよ? 強さも本物だけど、最高位冒険者なのだから、娘の私も母に恥ずかしくないくらいに冒険者としても最高位を目指すべきだと思わないからしら?」
と、アリエルが悪戯っ子のような笑顔で言う。そうだ、確かにお母様と女王キャロラインも冒険者として活動していた時期があるのだ。しかも、色々な二つ名を持っているのよね。
「くっ、しかしですね……姫様。あの方達は特別というか規格外というか……」
「ナスターシア様。アリエル殿下やお嬢様には口で立ち向かおうなどと思ってはいけないことは分かっているでしょう」
「……はぁ、確かにそうですね。失礼しました」
「ともかく、『アンダンテール大洞窟』は上層とされる10階層あたりまでは【鋼】から【銀】程度の冒険者向けと言われていますが、10回層以下は大帝国内でも危険だと言われている魔導洞窟のひとつです。出来る限り、上位である私の指示に従うようにお願いします」
事前にも聞いているけど、まぁ、エルーサの言う事を聞かずに勝手するな。と、いうことは分かるけどね。後、『アンダンテール大洞窟』って魔物の種類が非常に豊富な魔導洞窟って話だけど、一番の問題は道が結構狭いのが難点で広域系の魔法や魔術は出来るだけ使ってはいけないらしい。ま、考えたら当然ではあるけど、年に何度も強力な範囲魔法を使って冒険者側に被害が出る事故があるらしい。
「一日目は上層で雰囲気を確かめて、二日目は中層を目指します。下層に関しては【白金】でも単独では厳しいと言われるほどの危険地帯なので基本近づかないつもりでお願いします。今日はお食事の後は各お部屋でお寛ぎ頂いて、明日の朝、準備が整い次第出発いたしますので、よろしくお願い致します」
と、エルーサは締めくくって私達は微妙な食事を続け、食後に私が使っている部屋でアリエルとウィンディで食後のお茶会を開く約束をして夕食の時間を終えた。
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