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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
117.悪役令嬢は旅行する その5
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ボタンを押し、魔導具に向かって話し掛ける。
「お母様、緊急にて確認したい事案が御座います。お返事願えますでしょうか? どうぞ」
すると、少し間があったけれど、雑音が少し入ってから向こう側から反応が返って来る。
『ザッ――何用ですかエステリア――』
んー、まだまだ改良の余地があるわね。でももっとしっかりした中継基地を作れば音声も良く出来るだろう。ただ、1番の問題は自領や直轄領……関係が非常に良い領地はなんとか出来そうだけど、逆に関係が悪い所とはアレよねぇ。
そんな事を思いつつ、先程の話をお母様に伝える。
『……なるほど。分かりました、旦那様と協議した上で陛下にも伝えましょう』
「お願いします」
その後、お母様が心配して色々と聞いてくるので思わず電波が悪いフリをして通信を切った。
「うわぁ~」
と、アリエルがニヤけ顔をする。とりあえず、イラッとしたけど無視してやったわ。
「これである程度の問題解決までやってくれるでしょ」
「あの、エステリア様。先程のは――」
と、ナスターシアが訊こうとしたのをエルーサがそれを止めた。
「ナスターシア様。これは機密事項ですので、お嬢様含めハーブスト公爵家の者には答える事は出来ません。知りたければ色々な覚悟を決めた上で――」
「エルーサ、脅しすぎよ。旅の友にそういう威圧は良くないわ。それにアリエルも聞きたいって顔をしているし」
「お嬢様はアリエル王女殿下に甘すぎると思うのですが……」
「友達というのもあるけど、アリエルは私の妹みたいなものよ? 多少甘やかしても仕方ないと思うのよね」
「ですが……」
と、エルーサはやや不服そうな顔をする。当然、ちょっと甘すぎるかな――とも思う事はあるんだけど、なんだか甘やかしたくなっちゃうのよね。エルーサには悪いけど、本当に仕方ないと思って諦めて欲しい。
「それに聞いたとしても、再現するにはとても難しいし、これ単体では意味のない物だし大丈夫よ。ただし、ナスターシアが裏切ったり情報を漏らしたりしたら、分かるわよね?」
お母様仕込みのニッコリ圧で脅しておく。何故か皆が微妙な表情をするのだけど、なんというか失礼よね?
「では、簡単に説明すると遠くの相手と会話するための魔道具よ。ただし、これと同じ魔道具を持っている相手にしか届けることは出来ないわ」
「あー、ト……っと、なるほどねぇ」
アリエル――トランシーバーって言いかけたわね。正確には少し違うけど、似たような方法論ではあるのよね。
「差し支えなければ、現在はどなたがその魔道具をお持ちになっているのでしょうか?」
ナスターシア、攻めてくるわね。まぁ、彼女も教えて貰えるなら程度の感じで聞いてきている風だけど。私は知られても問題無いと思う内容として、女王キャロラインが同じ物を持っていると教えてあげる。
「なるほど……しかし、現状は実験段階ということですか……」
「そうよ。実用化には色々と乗り越えなければいけない壁があるから、まだ数年掛かりそうね」
「数年かぁ。皆が持っていれば簡単に連絡出来て便利なのだけど、まだまだ先は長そうねぇ」
これでも電信なんかすっ飛ばして無線通話を実現しちゃってるから、数年ってレベルで考えると発展具合はチートレベルなんだけどね。目指す先はまだまだ長いのよねぇ――そういえばリンリィから上がって来た研究資料によれば、魔力波の利用よりも魔力波を電波に相互変換する方法を取って、基本的な通信には電波を使った方が魔力的な負担を軽減出来そうという内容だったわね。
それを考えると、電力とかも魔力で……とか思っていたけど、魔力で電気を起こして電力を確保する。とかの方が現実的なのかもしれない。そもそも前世で発電所の発電方法って、結局タービンを回して電気を作る方法はどの発電方法でも一緒なのよね。それを考えたら少ないコストで大量の電力を作るなんてのも可能かもしれないわ。
「おーい、エステリアー?」
「アリエル王女殿下、こうなったエステリア様はしばらく帰ってきません」
ただし、問題なのは科学技術っ技術的に出来ても様々なインフラが整わないと実用化ってところまでは持っていけないのよね。特に電線とか巡らそうと思っても、前世でなら可能でも出来ないのよね……魔物や魔獣とかがいるし、電柱なんかも簡単に破壊されそうだし、街中に電気を通す方法なんかも考えないといけないワケだからなぁ。
「仕方ないなぁ。とりあえず寝ちゃう? 明日も早いし……」
「ですね、姫様。では、私達は先に失礼します」
「あ、私もそうしますねー」
まぁ、どこから手を付けるかってところはあるけれど、何にしても実際に技術的に可能かどうかの実験をして――って、あれ?
「皆は?」
と、私が訊くとエルーサがお茶を用意していたのか「どうぞ」と、言って渡してくる。私はそれを口に付けて一呼吸する。エルーサはそれを待っていたように口を開く。
「お嬢様が考え事をなさっている間にお休みになられましたよ」
「え、そうなの?」
「それに、お嬢様ももうお休みになられないと、明日も早いのですから」
「そうね……」
私はエルーサに促されて就寝の準備をしてベッドに入ってすぐに意識を手放した。
「お母様、緊急にて確認したい事案が御座います。お返事願えますでしょうか? どうぞ」
すると、少し間があったけれど、雑音が少し入ってから向こう側から反応が返って来る。
『ザッ――何用ですかエステリア――』
んー、まだまだ改良の余地があるわね。でももっとしっかりした中継基地を作れば音声も良く出来るだろう。ただ、1番の問題は自領や直轄領……関係が非常に良い領地はなんとか出来そうだけど、逆に関係が悪い所とはアレよねぇ。
そんな事を思いつつ、先程の話をお母様に伝える。
『……なるほど。分かりました、旦那様と協議した上で陛下にも伝えましょう』
「お願いします」
その後、お母様が心配して色々と聞いてくるので思わず電波が悪いフリをして通信を切った。
「うわぁ~」
と、アリエルがニヤけ顔をする。とりあえず、イラッとしたけど無視してやったわ。
「これである程度の問題解決までやってくれるでしょ」
「あの、エステリア様。先程のは――」
と、ナスターシアが訊こうとしたのをエルーサがそれを止めた。
「ナスターシア様。これは機密事項ですので、お嬢様含めハーブスト公爵家の者には答える事は出来ません。知りたければ色々な覚悟を決めた上で――」
「エルーサ、脅しすぎよ。旅の友にそういう威圧は良くないわ。それにアリエルも聞きたいって顔をしているし」
「お嬢様はアリエル王女殿下に甘すぎると思うのですが……」
「友達というのもあるけど、アリエルは私の妹みたいなものよ? 多少甘やかしても仕方ないと思うのよね」
「ですが……」
と、エルーサはやや不服そうな顔をする。当然、ちょっと甘すぎるかな――とも思う事はあるんだけど、なんだか甘やかしたくなっちゃうのよね。エルーサには悪いけど、本当に仕方ないと思って諦めて欲しい。
「それに聞いたとしても、再現するにはとても難しいし、これ単体では意味のない物だし大丈夫よ。ただし、ナスターシアが裏切ったり情報を漏らしたりしたら、分かるわよね?」
お母様仕込みのニッコリ圧で脅しておく。何故か皆が微妙な表情をするのだけど、なんというか失礼よね?
「では、簡単に説明すると遠くの相手と会話するための魔道具よ。ただし、これと同じ魔道具を持っている相手にしか届けることは出来ないわ」
「あー、ト……っと、なるほどねぇ」
アリエル――トランシーバーって言いかけたわね。正確には少し違うけど、似たような方法論ではあるのよね。
「差し支えなければ、現在はどなたがその魔道具をお持ちになっているのでしょうか?」
ナスターシア、攻めてくるわね。まぁ、彼女も教えて貰えるなら程度の感じで聞いてきている風だけど。私は知られても問題無いと思う内容として、女王キャロラインが同じ物を持っていると教えてあげる。
「なるほど……しかし、現状は実験段階ということですか……」
「そうよ。実用化には色々と乗り越えなければいけない壁があるから、まだ数年掛かりそうね」
「数年かぁ。皆が持っていれば簡単に連絡出来て便利なのだけど、まだまだ先は長そうねぇ」
これでも電信なんかすっ飛ばして無線通話を実現しちゃってるから、数年ってレベルで考えると発展具合はチートレベルなんだけどね。目指す先はまだまだ長いのよねぇ――そういえばリンリィから上がって来た研究資料によれば、魔力波の利用よりも魔力波を電波に相互変換する方法を取って、基本的な通信には電波を使った方が魔力的な負担を軽減出来そうという内容だったわね。
それを考えると、電力とかも魔力で……とか思っていたけど、魔力で電気を起こして電力を確保する。とかの方が現実的なのかもしれない。そもそも前世で発電所の発電方法って、結局タービンを回して電気を作る方法はどの発電方法でも一緒なのよね。それを考えたら少ないコストで大量の電力を作るなんてのも可能かもしれないわ。
「おーい、エステリアー?」
「アリエル王女殿下、こうなったエステリア様はしばらく帰ってきません」
ただし、問題なのは科学技術っ技術的に出来ても様々なインフラが整わないと実用化ってところまでは持っていけないのよね。特に電線とか巡らそうと思っても、前世でなら可能でも出来ないのよね……魔物や魔獣とかがいるし、電柱なんかも簡単に破壊されそうだし、街中に電気を通す方法なんかも考えないといけないワケだからなぁ。
「仕方ないなぁ。とりあえず寝ちゃう? 明日も早いし……」
「ですね、姫様。では、私達は先に失礼します」
「あ、私もそうしますねー」
まぁ、どこから手を付けるかってところはあるけれど、何にしても実際に技術的に可能かどうかの実験をして――って、あれ?
「皆は?」
と、私が訊くとエルーサがお茶を用意していたのか「どうぞ」と、言って渡してくる。私はそれを口に付けて一呼吸する。エルーサはそれを待っていたように口を開く。
「お嬢様が考え事をなさっている間にお休みになられましたよ」
「え、そうなの?」
「それに、お嬢様ももうお休みになられないと、明日も早いのですから」
「そうね……」
私はエルーサに促されて就寝の準備をしてベッドに入ってすぐに意識を手放した。
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