105 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
105.悪役令嬢の父親と王女の父親の酒盛り談議
しおりを挟む
「よいな。これはよい……」
ランパードはそう言いながら、塩茹でした落花生を放り込む。確かにこの酒はかなりのクオリティだ、酒精も強めではあるがそれを感じさせない口当たりがさらに酒を進ませる。
「そういえば、先程の話だが」
「ああ、クリフトの事だな。私の時間があった時くらいだがな、どうやら随分と強くなることに拘りがあるようだ。しかし、まぁ、自分の息子の事だけど彼が何を考えているかは分からないね」
ランパードはそう言いながら、再びクイッとグラスに入れた酒を呑み、酒精をはらんだ息を吐いた。まぁ、かくいう私も娘が何を考えているのか、分からない事も多い。彼女の我儘なら何でも叶えたくなるのは普通の事だと思っているけどね。
「婚約に関してはランパードはどう思っている?」
「まぁ、情勢上で言えば我々のような貴族社会では当たり前の話だな。ただ、そうだなぁ。クリフトの動きは色々と問題があると思っているよ。女性は大事にするべきだからね。特に美しい女性は特にね。我妻は強いし可愛いし、美しい」
それは双子の姉を妻としている私から言っても、同じだ。だが、どうやらクリフト殿下は女王陛下や我が妻――そして、我が娘であるエステリアの事も苦手なようなのだ。それに以前はもっと大人しい雰囲気のあったクリフト殿下だが、最近は何かに追い立てられているようにも見えるのだ。
「クリフト殿下は何に焦っているのだろうね」
「んー、そういう部分はあるよなぁ。ハッキリ言って分からんなぁ。血統、力、財力はある――人心に関してはその行いによる部分が大きいからなぁ。確かに今のままだと、近しい周囲は良くても国の上に立つには人がついて来ない可能性はある。キャロラインはアリエルを女王にしたいと思っているが、まぁ、私としてはどちらでも良いと思っているんだ。誰が王となったとしても、実力がなくとも、周囲が付いてくれば何とかなる。一番の問題はそこだ」
それは確かにそうだが、周囲のきな臭さから考えると王は戦闘でも指揮官としても、戦える人間の方が好ましい。それを考えるとアリエル王女は天才だ。ただし、彼女を抑える人間がいなければどこまでも突っ走って行きそうな不安はある。
「君の娘が王になると言っても私は反対はしないよ」
「ははは、それは私が全力で阻止させて貰うよ。我が娘をこんな魔境に置くなど出来ないよ」
「と、いう事は君もクリフトとの婚約には反対ということか……」
「正直、あの二人にとってお互いにあまり良いとは言えないだろう。出来れば子供達には立場や政治的な判断とは別に幸せになって欲しいと願うのが親心という奴だろう?」
私がそう言うと、ランパードは苦笑する。彼も私も政略結婚では無い。確かに貴族しての家格で言えばお互いに上位貴族でも特に大帝国基準で考えても上位に位置する貴族同士の結婚だったから問題は無かったのだが。
「ウィングレーはそう思うだろうが、少数派なのは理解しているのだろう?」
「それは当然理解しているよ。君はどうなんだい?」
そういうとランパードは酒の入ったグラスをテーブルに置き、ソファにもたれ掛かって大きな溜息を吐く。
「そりゃ私だって君と同じ気持ちは持っているが、そんな事をいえる立場の人間では無いのは君が最も理解しているだろう? それに君のところは三人ともとても優秀で文句なしでは無いか。まぁ、クリフトにしてもアリエルもとても優秀な子ではある――いや、アリエルが優秀過ぎてクリフトは劣等感に苛まれているのやもしれん。そう考えるとアヤツの焦りも分からんではない」
「しかし、我が娘を蔑ろにする理由にはならんよ?」
「それを言われると困る。どうやら、勝手にお茶会を開こうとしていたようだな」
やっと本題がやって来たわけだが、ランパードも関わってはいなかったようだな。周囲の貴族連中で誰がクリフト殿下に意見をしているのか、どこから攻めるべきかねぇ。
「ランパードはクリフト殿下の独断と思うかい?」
「どうだろうな。アイツの周囲と言えば、最近はパルプスト公爵に近い者が幾人かいるようだが……かと言ってアレに操られている風では無いがな。それに一応はこちらでも素性調査もして問題が無かったのでな。現状では判断し難いな。そういえば、あちらの工作員の件はどうなった?」
「スートリアやアフタリアスの工作員はかなり厳しく取り締まったのだが、南方の教会《カテドラル》の宣教師が入り込んでいてな。どうやらそいつらがピーストリオやビギタリアに随分と影響を与えているらしい」
現状、ミストリア内にも入っているのは確認しているが、そこまで大きな影響を与え無さそうだったので、現状は監視程度に留めているが、国外の工作員や冒険者と接触があるような報告があったので、注視している。
「問題山積だな……とりあえず、今日は呑んで全部忘れて明日から考える事にするよ」
「いやいや、今日決済の件もあるだろうが! 忘れるな!」
結局、私が家に帰れたのは夜が随分更けてからとなった。
ランパードはそう言いながら、塩茹でした落花生を放り込む。確かにこの酒はかなりのクオリティだ、酒精も強めではあるがそれを感じさせない口当たりがさらに酒を進ませる。
「そういえば、先程の話だが」
「ああ、クリフトの事だな。私の時間があった時くらいだがな、どうやら随分と強くなることに拘りがあるようだ。しかし、まぁ、自分の息子の事だけど彼が何を考えているかは分からないね」
ランパードはそう言いながら、再びクイッとグラスに入れた酒を呑み、酒精をはらんだ息を吐いた。まぁ、かくいう私も娘が何を考えているのか、分からない事も多い。彼女の我儘なら何でも叶えたくなるのは普通の事だと思っているけどね。
「婚約に関してはランパードはどう思っている?」
「まぁ、情勢上で言えば我々のような貴族社会では当たり前の話だな。ただ、そうだなぁ。クリフトの動きは色々と問題があると思っているよ。女性は大事にするべきだからね。特に美しい女性は特にね。我妻は強いし可愛いし、美しい」
それは双子の姉を妻としている私から言っても、同じだ。だが、どうやらクリフト殿下は女王陛下や我が妻――そして、我が娘であるエステリアの事も苦手なようなのだ。それに以前はもっと大人しい雰囲気のあったクリフト殿下だが、最近は何かに追い立てられているようにも見えるのだ。
「クリフト殿下は何に焦っているのだろうね」
「んー、そういう部分はあるよなぁ。ハッキリ言って分からんなぁ。血統、力、財力はある――人心に関してはその行いによる部分が大きいからなぁ。確かに今のままだと、近しい周囲は良くても国の上に立つには人がついて来ない可能性はある。キャロラインはアリエルを女王にしたいと思っているが、まぁ、私としてはどちらでも良いと思っているんだ。誰が王となったとしても、実力がなくとも、周囲が付いてくれば何とかなる。一番の問題はそこだ」
それは確かにそうだが、周囲のきな臭さから考えると王は戦闘でも指揮官としても、戦える人間の方が好ましい。それを考えるとアリエル王女は天才だ。ただし、彼女を抑える人間がいなければどこまでも突っ走って行きそうな不安はある。
「君の娘が王になると言っても私は反対はしないよ」
「ははは、それは私が全力で阻止させて貰うよ。我が娘をこんな魔境に置くなど出来ないよ」
「と、いう事は君もクリフトとの婚約には反対ということか……」
「正直、あの二人にとってお互いにあまり良いとは言えないだろう。出来れば子供達には立場や政治的な判断とは別に幸せになって欲しいと願うのが親心という奴だろう?」
私がそう言うと、ランパードは苦笑する。彼も私も政略結婚では無い。確かに貴族しての家格で言えばお互いに上位貴族でも特に大帝国基準で考えても上位に位置する貴族同士の結婚だったから問題は無かったのだが。
「ウィングレーはそう思うだろうが、少数派なのは理解しているのだろう?」
「それは当然理解しているよ。君はどうなんだい?」
そういうとランパードは酒の入ったグラスをテーブルに置き、ソファにもたれ掛かって大きな溜息を吐く。
「そりゃ私だって君と同じ気持ちは持っているが、そんな事をいえる立場の人間では無いのは君が最も理解しているだろう? それに君のところは三人ともとても優秀で文句なしでは無いか。まぁ、クリフトにしてもアリエルもとても優秀な子ではある――いや、アリエルが優秀過ぎてクリフトは劣等感に苛まれているのやもしれん。そう考えるとアヤツの焦りも分からんではない」
「しかし、我が娘を蔑ろにする理由にはならんよ?」
「それを言われると困る。どうやら、勝手にお茶会を開こうとしていたようだな」
やっと本題がやって来たわけだが、ランパードも関わってはいなかったようだな。周囲の貴族連中で誰がクリフト殿下に意見をしているのか、どこから攻めるべきかねぇ。
「ランパードはクリフト殿下の独断と思うかい?」
「どうだろうな。アイツの周囲と言えば、最近はパルプスト公爵に近い者が幾人かいるようだが……かと言ってアレに操られている風では無いがな。それに一応はこちらでも素性調査もして問題が無かったのでな。現状では判断し難いな。そういえば、あちらの工作員の件はどうなった?」
「スートリアやアフタリアスの工作員はかなり厳しく取り締まったのだが、南方の教会《カテドラル》の宣教師が入り込んでいてな。どうやらそいつらがピーストリオやビギタリアに随分と影響を与えているらしい」
現状、ミストリア内にも入っているのは確認しているが、そこまで大きな影響を与え無さそうだったので、現状は監視程度に留めているが、国外の工作員や冒険者と接触があるような報告があったので、注視している。
「問題山積だな……とりあえず、今日は呑んで全部忘れて明日から考える事にするよ」
「いやいや、今日決済の件もあるだろうが! 忘れるな!」
結局、私が家に帰れたのは夜が随分更けてからとなった。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる