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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
102.悪役令嬢は両親と相談をする
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「よいのですか?」
箱の中に入っていたのは魔白金製の一振りの剣だった。かなりの業物で刃がゆらりと揺らめくような光を帯びている。いわゆる魔剣の類だ。
「ああ、ちょうど使っていない一振りで執務室の端に箱に入れたまま放置していた物だったんだよ。先程、レナードの方から君達の話をざっくりと報告されたので持って来たんだ」
「あら? よいのですか? これはお義父様が造らせたガンドールの作品では無いのですか?」
天才鍛冶師の一族と呼ばれたガンドール一族が造った魔剣は大帝国内でもかなりの高値でやりとりされているらしい物らしい。正直、詳しく無いのでよくしらないけど凄いモノらしい。因みに魔力伝導率が異常に高い剣を魔剣と言って、その価値は芸術品と同じように驚きの値段なので、国内でも持っている者は少ないらしい。
そう言えば、クーベルト辺境伯も魔剣を持っていたわね。
「んー、芸術品としての価値はかなり高いけど、これからは我が家では特に使われなくなる武器だと思うんだよね。今は君達が造ってくれた武器の方が確実に使えると思ってるしね」
お父様はそう言って腰にぶら下げている棒状の物を見せる。装飾が派手めなライトセーバーな武器で魔導剣と名付けられた武器で、まさしくジェダイな武器だ。それにお父様は腰に付けているガンホルダーに短銃型の最新魔銃も装備していて、どうやらクーベルト辺境伯とも訓練をしているという話をエルーサから聞いていて、銃と剣を使う戦い方をキチンとした武芸とした型を作っているらしい。
「それに、魔剣といえば我が家にはまだ数本倉庫の肥やしになっているからね。一本くらい王家にあげても罰は当たらないんじゃないかい?」
「確かに王城でも魔剣はランパード閣下と騎士団長くらいしか持っていないハズですからね」
「陛下は持ってないのですか?」
と、私が訊くと二人は小さく笑う。
「ああ、彼女が持っている剣は【失われた遺産】だから、魔剣では無く神剣だよ。一応、天下に5本しかない神剣の内の一つで、女王陛下の二つ名のひとつである【雷鳴の乙女】の代名詞となった、雷鳴剣さ」
「アレってば魔力消費量が激しいからって、今は必要な時以外は部屋に飾ってるわよ。知っていると思うけど、今はお父様と同様に魔導剣と魔導銃を空間収納に入れている状態ね」
なんだか、私の周りでジワジワと剣と魔導銃の二刀流が流行り出している? アリエルとウィンディは魔導銃の二刀流だけど、そこまでの使い勝手か私には少し疑問だったりする。ちなみに私とお母様はロングライフル型の魔導銃一本で戦うスタンスで、基本的に近接戦闘は出来るだけしない展開を考えている。
ここら辺が遠距離特化か近距離特化の違いかもしれない。一応、魔導剣での戦いというのもお母様と研究はしているけど、やればやるほど、ジェダイになっていくんだよね。
「お茶会となれば、着て行くものはどうすればよいですか?」
正直、着る物にはあまりこだわりは無いし、ドレスも数多くあるけど、改まった場だと普通は新しい物を着るのが礼儀だ。これは特に上位貴族では当たり前だ。下位貴族では予算的に新しい物を幾度も作るのは無理な事が多いので、手直しやアレンジする事で対応するのだけど、上位貴族でそれをすると逆に失礼にあたる。
「仕方ありませんね。私のドレスで――バネッサ。10歳の時に着ていたドレスで相応しい物はあったかしら?」
お母様がそう言うと、バネッサはサッと傍により小さく一礼をする。この人、気配が無さ過ぎてコワイのよね。それにお母様レベルに強い雰囲気を持っていて、あ、エルーサ曰く、様々なことにおいて、彼女は師であるみたいな事を言ってたなぁ。
「ステファニー様の10歳の誕生日に使われたドレスの中に何着かあると思います。あの時以来、一度もお使いになっていないハズですので、問題ありません。それにお嬢様であれば、そのまま着れると判断致しますので、そちらであれば失礼に当たらないと思います」
「古い物で大丈夫なのですか?」
「はい、お嬢様。特にステファニー様の王女時代に特別な時に着用された品です。高位の母から譲られた特別の一品というのは新しい物に勝ると言われることも御座います」
「では、とりあえずこれである程度の問題は解決しそうね。後はどういう方々が揃うのか――などは確認が必要ね」
お母様はそう言ってからお茶を口に付けて、小さく溜息を吐いた。そもそも普通はこういうお茶会であれば家に招待状が届くわけで、王城でのお茶会使用は女王陛下の許可がなければ出来ないのに、そこも不明なのは色々問題が多い。
「アレの実験も兼ねて、キャロルに連絡をするのはどうかしら?」
私がモヤモヤと考えていると、お母様は楽しそうにそう言った。まぁ、緊急時? みたいな状況ですし、即座に連絡が取れる手段というのは……まぁ、アリとは思いますけど。相手が何をしているか分からない状況では実験も難しいのでは無いのかしら?
「エステリア、そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫よ。お母様はキャロルとは念話で会話が出来るのよ」
「は?」
念話の魔法が存在するのは分かっているけど、そもそもお母様。使えたの???
「彼女と女王陛下は少し特別でね。二人の間だけで念話が出来る特別な魔法が使えるんだ」
「まぁ、とっても使い勝手が悪いから、基本的には使わないけどね。特別な時にだけ――ね?」
と、悪戯な少女の様にお母様は微笑んだ。
箱の中に入っていたのは魔白金製の一振りの剣だった。かなりの業物で刃がゆらりと揺らめくような光を帯びている。いわゆる魔剣の類だ。
「ああ、ちょうど使っていない一振りで執務室の端に箱に入れたまま放置していた物だったんだよ。先程、レナードの方から君達の話をざっくりと報告されたので持って来たんだ」
「あら? よいのですか? これはお義父様が造らせたガンドールの作品では無いのですか?」
天才鍛冶師の一族と呼ばれたガンドール一族が造った魔剣は大帝国内でもかなりの高値でやりとりされているらしい物らしい。正直、詳しく無いのでよくしらないけど凄いモノらしい。因みに魔力伝導率が異常に高い剣を魔剣と言って、その価値は芸術品と同じように驚きの値段なので、国内でも持っている者は少ないらしい。
そう言えば、クーベルト辺境伯も魔剣を持っていたわね。
「んー、芸術品としての価値はかなり高いけど、これからは我が家では特に使われなくなる武器だと思うんだよね。今は君達が造ってくれた武器の方が確実に使えると思ってるしね」
お父様はそう言って腰にぶら下げている棒状の物を見せる。装飾が派手めなライトセーバーな武器で魔導剣と名付けられた武器で、まさしくジェダイな武器だ。それにお父様は腰に付けているガンホルダーに短銃型の最新魔銃も装備していて、どうやらクーベルト辺境伯とも訓練をしているという話をエルーサから聞いていて、銃と剣を使う戦い方をキチンとした武芸とした型を作っているらしい。
「それに、魔剣といえば我が家にはまだ数本倉庫の肥やしになっているからね。一本くらい王家にあげても罰は当たらないんじゃないかい?」
「確かに王城でも魔剣はランパード閣下と騎士団長くらいしか持っていないハズですからね」
「陛下は持ってないのですか?」
と、私が訊くと二人は小さく笑う。
「ああ、彼女が持っている剣は【失われた遺産】だから、魔剣では無く神剣だよ。一応、天下に5本しかない神剣の内の一つで、女王陛下の二つ名のひとつである【雷鳴の乙女】の代名詞となった、雷鳴剣さ」
「アレってば魔力消費量が激しいからって、今は必要な時以外は部屋に飾ってるわよ。知っていると思うけど、今はお父様と同様に魔導剣と魔導銃を空間収納に入れている状態ね」
なんだか、私の周りでジワジワと剣と魔導銃の二刀流が流行り出している? アリエルとウィンディは魔導銃の二刀流だけど、そこまでの使い勝手か私には少し疑問だったりする。ちなみに私とお母様はロングライフル型の魔導銃一本で戦うスタンスで、基本的に近接戦闘は出来るだけしない展開を考えている。
ここら辺が遠距離特化か近距離特化の違いかもしれない。一応、魔導剣での戦いというのもお母様と研究はしているけど、やればやるほど、ジェダイになっていくんだよね。
「お茶会となれば、着て行くものはどうすればよいですか?」
正直、着る物にはあまりこだわりは無いし、ドレスも数多くあるけど、改まった場だと普通は新しい物を着るのが礼儀だ。これは特に上位貴族では当たり前だ。下位貴族では予算的に新しい物を幾度も作るのは無理な事が多いので、手直しやアレンジする事で対応するのだけど、上位貴族でそれをすると逆に失礼にあたる。
「仕方ありませんね。私のドレスで――バネッサ。10歳の時に着ていたドレスで相応しい物はあったかしら?」
お母様がそう言うと、バネッサはサッと傍により小さく一礼をする。この人、気配が無さ過ぎてコワイのよね。それにお母様レベルに強い雰囲気を持っていて、あ、エルーサ曰く、様々なことにおいて、彼女は師であるみたいな事を言ってたなぁ。
「ステファニー様の10歳の誕生日に使われたドレスの中に何着かあると思います。あの時以来、一度もお使いになっていないハズですので、問題ありません。それにお嬢様であれば、そのまま着れると判断致しますので、そちらであれば失礼に当たらないと思います」
「古い物で大丈夫なのですか?」
「はい、お嬢様。特にステファニー様の王女時代に特別な時に着用された品です。高位の母から譲られた特別の一品というのは新しい物に勝ると言われることも御座います」
「では、とりあえずこれである程度の問題は解決しそうね。後はどういう方々が揃うのか――などは確認が必要ね」
お母様はそう言ってからお茶を口に付けて、小さく溜息を吐いた。そもそも普通はこういうお茶会であれば家に招待状が届くわけで、王城でのお茶会使用は女王陛下の許可がなければ出来ないのに、そこも不明なのは色々問題が多い。
「アレの実験も兼ねて、キャロルに連絡をするのはどうかしら?」
私がモヤモヤと考えていると、お母様は楽しそうにそう言った。まぁ、緊急時? みたいな状況ですし、即座に連絡が取れる手段というのは……まぁ、アリとは思いますけど。相手が何をしているか分からない状況では実験も難しいのでは無いのかしら?
「エステリア、そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫よ。お母様はキャロルとは念話で会話が出来るのよ」
「は?」
念話の魔法が存在するのは分かっているけど、そもそもお母様。使えたの???
「彼女と女王陛下は少し特別でね。二人の間だけで念話が出来る特別な魔法が使えるんだ」
「まぁ、とっても使い勝手が悪いから、基本的には使わないけどね。特別な時にだけ――ね?」
と、悪戯な少女の様にお母様は微笑んだ。
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