悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
上 下
100 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

100.悪役令嬢は突然の招待に首を傾げる

しおりを挟む
「はい?」

 私は意味が解らなくて思わず素っ頓狂な声を上げて首を傾げた。

「エステリア様、不思議そうな顔をされるのは些か問題ではありませんか? まさか、殿下からの招待をお断りになる――なんて事はありませんよね?」

 別に断る理由はないけれど、朝、ビバル氏の大したことの無い連絡事項を聞いた後、サロンに向かおうかと席を立った時、パルプスト公爵令息であるアーネストから「話があるので聞いて頂きたい」と、言われ、返答を待つ前にいきなり招待状を差し出されて、且つ「クリフト殿下の誕生日に開催されるお茶会への招待状だと」渡されたのだ。

 意味が解らなくて首を傾げても誰も文句は言うまいて!

 それに、我が家へ直接送ればいいものを何故、アーネストが持ってくる? 意味が全くもって分からない。と、いうかパルプスト公爵令息も顎で使われて文句は無いのか、色々と疑問符が浮かぶ。随分失礼な話だと私は思うのだけど?

「ひとつ、聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょうか?」

 うーん、なんだか間の抜けた返答をされた気もするのだけど、彼自身も何も疑問に思っていないのか、ますます私は混乱してしまいそうだ。

「なぜ、殿下の小間使いみたいなマネをパルプスト公爵令息がしているのでしょうか? それに本来、こういった招待は――特に王族ともなれば、我が家に送るのが普通ではないのですか?」
「こ、小間使いですって? なんと失礼なっ! 私は生涯のライバルでもある殿下から大事な頼み事を受けて態々話しかけてやったというのに、その私に向かって小間使いとは無礼な!」

 えー、そこでキレるの? わかんない、わかんないって。事実、ただの小間使いやってんじゃん。

「――ともかくだ、これは渡したからな」

 そう言って彼は招待状を私に叩きつけて去って行く。アーネストもあんなキャラだったかしら? と、私はマリーやリンリィに視線を向けると彼女達も微妙な表情を出さないようにしてはいたけれど、私と同じように視線を泳がせていた。

「大丈夫ですかエステリア様……」

 ジェニーが心配そうに私に声を掛けてくる。私はソッと手で彼女を制止させる。

「大丈夫よ。とりあえずサロンに行ってから確認するとしましょう」

 そう言って私は落ち着いた雰囲気を漂わせながら教室を出る事にした。先程の騒動を遠巻きに見ていた他の生徒達は私達が通るのを見つつ、邪魔にならないように道を開けて行く。

 うん、モーセの気分ね。

 そんな微妙な気持ちになりつつ、私達はサロンへ向かった。

「全く、全く持って失礼な男でしたね。思わず剣を取り出そうかと思いましたよ」
「ダメよ、そんな事をしたらルアーナが一方的に罪に問われるじゃない」
「くっ、公爵令息でなければ無礼打ちですよ。言動だけもアレですが、最後のアレは無いです!」

 と、いうか側近のファルリオ君やマルコを使いに出した方がマシだと思うのだけど、態々アーネストを小間使いに使う意味が全くわかんないわ。

「招待状の中身は確認しなくてもいいんですか?」

 ウィンディは招待状の方が気になっているみたいね。見た目は普通に王家が使っている封筒にリボン、封緘はクリフト殿下が使っている紋ね。とりあえず封を解いて中身を確認しますか。

 えっと、中身は普通ね。どちらかというと古風な文章ね。とっても遠回しに誕生日の記念に茶会を開くので婚約者として来るのは当然の事だろう――と、なんか微妙に偉そうな感じの文面なのが、少しイラっとするわ。と、いうか日程が平日なのだけど、これは学院を休んで来いという事なのかしら? うーん、取り敢えず持ち帰って家で確認が必要な案件よね、どう考えても。

「普通に殿下の誕生日に茶会を開くから、婚約者は当然出席に決まってんでしょ? みたいな内容だったわ」
「なんだか、偉そうな感じ――あ、王族だから偉くて当然ですよね」

 それはそう。でも、女性を誘う手紙ってもう少し言葉を飾ってくれてもいいじゃない?

「女の子を誘う手紙にそれは無いわ。私ならブチキレるわよ? 因みにファルリオ様の手紙は終始私を褒めてくれるから、逆に不安になる時があるけど……」
「その辺りのバランスは大切ですよね。って、リア様はどうして遠い目をされているのでしょうか?」
「いやぁ、分かるけど分からないというか。上から目線で誘われるとイラっとするけど、美辞麗句を並びたてられても嫌だと思ったのよね。ハッキリ言って、事実を淡々と報告してくれる方が私としてはいいかしら」

 結局のところ、もっと簡潔に『~に誕生日の茶会を開くので参加出来るなら来てください』でいいじゃない? まぁ、行かないってのも不敬にあたる可能性があるから、行かないとマズそうだけど。参加メンバーとかの情報を持ってる人はいるのかしら?

「って、気になったのだけど、ここにいる皆は招待されてないわよね?」

 私がそう言うと、皆は目を合わせて「確かに」と、呟く。

「うわぁ、なんだか罠みたいで嫌ですね」
「ウィンディ、さすがにそんなワケはないでしょう。まぁ、家には招待状が届いている場合もあるかもしれないから、分かったら教えて貰えるかしら?」

 皆はコクリと頷いて、私は家に帰ってこの件を伝えた上で色々と準備をしないといけないので、今日は早めに解散という流れになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...