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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
98.悪役令嬢は神話を語る
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私はゆっくりと明瞭に子供に聴かせるように、ゆっくりと話始める――
「神々の住む天高いところにある場所に住まう、大神《おおかみ》がひとつの世界を作りました。そして世界を管理すために娘達である昼間は太陽神ラミリア様を夜は月神シルファ様を遣わしました」
この世界の柱神はラミリアだとどの神殿も言うけれど、神話には大神なる存在がいるのよね。少し不思議な感じだけど、天界みたいなのがあって、そこにも沢山の神々がいる――大神が自分で作った世界に自分の娘や息子を管理の為に送り出す部分が初段の始まりなのよね。
「ラミリア様は世界を管理する為に沢山いる弟や妹を天界から呼んで海しかない世界に大地を作り、島を作り、人を作った。でもそれでは人しかいない世界では人は生きられないと、シルファ様に指摘されたラミリア様は動物、植物を作り、シルファ様には魔獣、魔物を作らせる」
不思議な話だけど、人に都合の良い世界を作り、それを管理する世界なんだと私は何気なく思った。月の女神シルファが魔獣、魔物をラミリアの命令で造るのだけど、太陽が生命、月が死を司っていると言われているからだ。魔獣や魔物は何もしなくても人を襲い、生物を喰らう。これも不思議な話で魔獣や魔物はお互いを認識しても、大きな害をお互い与えない。彼らが暴れても喰い散らかされるのは人間や動物だ。これも世界の不思議のひとつ。
「昼は生を司り、夜は死を司る。これによって、この世界は巡り、大きなひとつの流れを生み出し、人々は大いなる繁栄を歩むことになる。夜の眷属である魔獣や魔物に対抗する為の技術をラミリア様から与えられた人が使うようになったのが魔法である」
「あ、質問! どうして魔獣や魔物に対抗する必要が出てきたの?」
「うん、良い質問ね。昼が繁栄すれば、同様に夜も繁栄するから、魔獣や魔物も増えちゃったんじゃないかな? 遥か大昔に人がアレらに対抗しようと思うと大変じゃない?」
私がそういうとウィンディは「なるほど」と、納得したのかポンと手を打った。
「で、続きはどうなるんです?」
「続きね。魔法を得た人々は沢山いたんだけど、初めに魔法を得た人達はラミリア様から【加護】を貰うのね。この加護を受けた者達を始まりの子と呼ばれているんだけど、その子達というのはラミリア様の弟や妹の神々の子供の子孫で、この世界の各地で地を統治《すべおさめた》のよ」
「それのひとつが大帝国なんですか?」
普通はそう思うよね。私もこれを知った時におや? と、思ったもの。
「残念ながら、違うのよ。多くの神話では神々が治める時代を得て、なんらかの理由で去って人の世になるんだけど、大帝国の歴史の場合、ラミリア様の弟で軍神と剣神がいるんだけど、その子供達がラミリアの加護を受けた娘を授かるんだけど、大帝国の元になる小さな国の王達が巫女として迎えて、天帝とすることで誕生したのが聖イーフレイ帝国よ」
「神様の子供が天帝になって、今も帝国の皇帝としているってことですか?」
「それは違うわよ。神の血を受けづいた子ではあるけど、神と人との間に出来た子か、神から人に降りた子なの、だからちゃんとした人間なのよ。ただ、大帝国の天帝は神の巫女……えっと、神様と結婚する為の巫女だから、純潔を守らないとダメなの」
私がそういうとウィンディが難しそうな顔をする。普通に言えば奇妙な話になるわよね。
「えっと、それじゃぁ子孫が残せないんじゃないですか?」
「そうね。だから天帝になる為の神の血筋というのが存在していて、その血統の子供の中から、最も優秀な者を天帝として召し上げるというのが習わしになっているわ。現在の天帝も私達と変わらないくらいの女の子だったハズよ」
「んー、そうなんですねぇ」
「初段の辺りの話はこんな感じよ。少しは興味が出たかしら?」
初段の話はそこまで戦いの話はないけど、戦いあり、ロマンスありの冒険活劇がこれから始まるんだよね。なので、ここで躓くと中々先に進めなくなってしまうのが難点だとエルーサが言っていたのを思い出しつつウィンディの反応を見る。
「古語は苦手だけど、少し頑張って読んでみます……色々と気になる部分があるので」
そう言って彼女は歴史の教科書を読み始める。そう、神話の難点は古語がメインなので、古語をしっかりと覚えて行かないと中々に深いところまで分からない仕組みになってるのよね。ただ、ここで古語が出来れば文学と兵法も随分底上げ出来るから、入りはかなりいいんじゃないかな。
「ウィンディは今日は歴史中心で頑張ってね、明日は兵法、次の日は文学をやりましょう」
「りょーかいだよ!」
そして、私は転生組じゃない子達の方を見る。やはり算術に不安があるようだ。
「算術の試験範囲は加算、減算、積算、除算までね。桁数も多くないからそこまで難しくは無いと思うけど、どうかしら?」
と、私が訊くとルアーナが「お恥ずかしいです」と苦笑する。
「大丈夫です。私とリンリィがしっかりと教えて差し上げますわ」
「わ、私もお願いします!」
「あ、わ、私も!」
ジェニーとミーリアが同じように挙手をした。フフフッ、みっちりスパルタしてあげますわ!
「神々の住む天高いところにある場所に住まう、大神《おおかみ》がひとつの世界を作りました。そして世界を管理すために娘達である昼間は太陽神ラミリア様を夜は月神シルファ様を遣わしました」
この世界の柱神はラミリアだとどの神殿も言うけれど、神話には大神なる存在がいるのよね。少し不思議な感じだけど、天界みたいなのがあって、そこにも沢山の神々がいる――大神が自分で作った世界に自分の娘や息子を管理の為に送り出す部分が初段の始まりなのよね。
「ラミリア様は世界を管理する為に沢山いる弟や妹を天界から呼んで海しかない世界に大地を作り、島を作り、人を作った。でもそれでは人しかいない世界では人は生きられないと、シルファ様に指摘されたラミリア様は動物、植物を作り、シルファ様には魔獣、魔物を作らせる」
不思議な話だけど、人に都合の良い世界を作り、それを管理する世界なんだと私は何気なく思った。月の女神シルファが魔獣、魔物をラミリアの命令で造るのだけど、太陽が生命、月が死を司っていると言われているからだ。魔獣や魔物は何もしなくても人を襲い、生物を喰らう。これも不思議な話で魔獣や魔物はお互いを認識しても、大きな害をお互い与えない。彼らが暴れても喰い散らかされるのは人間や動物だ。これも世界の不思議のひとつ。
「昼は生を司り、夜は死を司る。これによって、この世界は巡り、大きなひとつの流れを生み出し、人々は大いなる繁栄を歩むことになる。夜の眷属である魔獣や魔物に対抗する為の技術をラミリア様から与えられた人が使うようになったのが魔法である」
「あ、質問! どうして魔獣や魔物に対抗する必要が出てきたの?」
「うん、良い質問ね。昼が繁栄すれば、同様に夜も繁栄するから、魔獣や魔物も増えちゃったんじゃないかな? 遥か大昔に人がアレらに対抗しようと思うと大変じゃない?」
私がそういうとウィンディは「なるほど」と、納得したのかポンと手を打った。
「で、続きはどうなるんです?」
「続きね。魔法を得た人々は沢山いたんだけど、初めに魔法を得た人達はラミリア様から【加護】を貰うのね。この加護を受けた者達を始まりの子と呼ばれているんだけど、その子達というのはラミリア様の弟や妹の神々の子供の子孫で、この世界の各地で地を統治《すべおさめた》のよ」
「それのひとつが大帝国なんですか?」
普通はそう思うよね。私もこれを知った時におや? と、思ったもの。
「残念ながら、違うのよ。多くの神話では神々が治める時代を得て、なんらかの理由で去って人の世になるんだけど、大帝国の歴史の場合、ラミリア様の弟で軍神と剣神がいるんだけど、その子供達がラミリアの加護を受けた娘を授かるんだけど、大帝国の元になる小さな国の王達が巫女として迎えて、天帝とすることで誕生したのが聖イーフレイ帝国よ」
「神様の子供が天帝になって、今も帝国の皇帝としているってことですか?」
「それは違うわよ。神の血を受けづいた子ではあるけど、神と人との間に出来た子か、神から人に降りた子なの、だからちゃんとした人間なのよ。ただ、大帝国の天帝は神の巫女……えっと、神様と結婚する為の巫女だから、純潔を守らないとダメなの」
私がそういうとウィンディが難しそうな顔をする。普通に言えば奇妙な話になるわよね。
「えっと、それじゃぁ子孫が残せないんじゃないですか?」
「そうね。だから天帝になる為の神の血筋というのが存在していて、その血統の子供の中から、最も優秀な者を天帝として召し上げるというのが習わしになっているわ。現在の天帝も私達と変わらないくらいの女の子だったハズよ」
「んー、そうなんですねぇ」
「初段の辺りの話はこんな感じよ。少しは興味が出たかしら?」
初段の話はそこまで戦いの話はないけど、戦いあり、ロマンスありの冒険活劇がこれから始まるんだよね。なので、ここで躓くと中々先に進めなくなってしまうのが難点だとエルーサが言っていたのを思い出しつつウィンディの反応を見る。
「古語は苦手だけど、少し頑張って読んでみます……色々と気になる部分があるので」
そう言って彼女は歴史の教科書を読み始める。そう、神話の難点は古語がメインなので、古語をしっかりと覚えて行かないと中々に深いところまで分からない仕組みになってるのよね。ただ、ここで古語が出来れば文学と兵法も随分底上げ出来るから、入りはかなりいいんじゃないかな。
「ウィンディは今日は歴史中心で頑張ってね、明日は兵法、次の日は文学をやりましょう」
「りょーかいだよ!」
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