悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
上 下
93 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

93.悪役令嬢は魔王の候補者について説明する

しおりを挟む
「まず、様々な可能性を考えた上で最有力候補なのが、アリエルと女王キャロライン。これはそもそもヒロインとクリフト殿下のルート時に限った話になるけど、2作目であるスーリアルを舞台にした話の後半でクリフト殿下が王になったようなエピソードが語られる部分があるの」

 と、私がいうとアリエルは訝し気な顔をする。

「だったら、余計に関係ないんじゃないの?」

 そう言いたくなる気持ちも分からなくは無いんだけど、そもそもクリフト殿下が王になるってのは色々と条件が必要になるんだよね。

「いいえ、考えてみてよ。まだ女王キャロラインも若いし、武力だって政治力だって遥かに上にいる人物よ? そんな短期間でクリフト殿下が王になれるかしら」

 描かれてはいないけど、これは政変――王子によるクーデターの可能性も考えないと、どう考えてもあり得なかった。と、いうか、考えれなかった。たとえ、成長したアリエルが女王と対峙しても勝負可能か? うーん、難しいでしょ。と、思うくらい不思議な話なのよね。

「うーん、普通の方法ではお母様の地盤をどうにか出来るような気はしないわ。それにハーブスト公爵や王家絶対主義で特にお母様の信奉者であるヴィジタリア公爵をどうにか出来るなんて全く想像つかないわ」

 アリエルはそう言ったけれど、ハーブスト公爵家に関してはエステリアが断罪される事でクリフト殿下に対して良い感情を持っていないし、女王キャロラインとお母様の絆は双子の姉妹というだけあって、それは強固なものだ。でも、ヴィジタリア公爵に関しては確かに女王の信奉者であるってのは間違いないんだけど、それ以上に王家絶対主義で王室の血さえ守れれば誰に仕えても問題無いってところがあるのよね。

 それを考えるとヴィジタリア公爵家を上手く引き込めるかが勝負所なのかもしれないわね。ただ、それでもクリフト殿下が王となる為には障害となるのが女王キャロライン、第二王子は……まぁ、放っておいてもいいとして、アリエルなのよね。

「で、ゲーム内で第二王子ルートの時、アリエルって断罪されても幽閉くらいなのよね。クリフト殿下のルートで言えば、他の皆は描かれていないけど、アリエルは出奔したような話があったハズなのよ」
「――確かにあったわね。他の悪役令嬢達の記述は無かったから、なんで? ってなった記憶があるわ」
「そもそも、アリエルが第二王子であるリストリア殿下に固執していた理由もよく分からないんだけど、私は考えてた時にもしかして、自分自身を守るために演技をしていたのではないかと思ったのよね」

 原因は分からないけど、ゲームのシナリオ上でアリエルは何かをやらかして王位継承権を外されていた節があるんだけど、リストリア殿下に好意があったと聞かれると、分からないのよね。超絶我儘で尊大なキャラではあったせいで、当時はちょっと無理やり悪役令嬢として組み込んだっぽい感じだとか言われていたキャラでもある。

 ――結構、謎の多いキャラだったのよ。アリエルって。

「結構、謎なキャラですよね。アリエル王女って。一応、ソシャゲで私も育ててましたけど、強さは上位ランクに絶対入ってくる人権キャラではありましたけど、ストーリー背景とかも結構あやふやで、女王キャロラインの娘で1作目で悪役令嬢として登場。リストリア王子に妙な固執をしていたけれど、何故ヒロインの邪魔をしていたのかは不明でその後、行方不明になったという噂もある。みたいなフレーバーで、このキャラの設定だけ妙にメタいって思ってました」

 私の考えている事を代弁するかのようにウィンディが話す。魔法の素質においては群を抜いているし、本当は優秀――いや、実際、今のアリエルも優秀なのよ。でも、ゲーム内のアリエルってすごいチグハグでよく分からないキャラだったのよね。

「と、いうか……ゲーム上のアリエルってヒロインの事、ただ単純に気に入らないって思ってただけな気がしてきた」
「何よソレ、私ってばそこまでバカじゃないわよ?」

 直感的で直情型のアリエルって、ゲームでも今でも人物像で言えば大きく外れてはいないのよね。正直、転生前の性格がどこまで影響しているのかってところを考えると実は分からない。

 そう、ずっと靄が掛かってたところの一つではあるんだけどね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...