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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
91.悪役令嬢は魔術を語る
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フィレーヌ・ウィッシャルド子爵令嬢を含めた下級貴族達とのお茶会も今回で3回目となります。1回目、2回目で魔術理論の基礎を彼女らに叩きこみ、本日から発展魔術理論を教える。
発展魔術理論は高学で習う事になる魔術理論の基礎部分になるけれど、応用魔術理論を教えると前者の多くを否定する結果となるけれど、発展魔術理論は非常に重要な理論部分となる。
「結局のところ、魔法を写し取った物を理解する――と、いうことでしょうか?」
フィレーヌ嬢は小難しい講釈を聞いた後でそう言った。そう、結局のところは魔法によって生み出された魔法陣の内容をいかな形で理解するか? と、いう内容なので非常に正しい理解と言える。基礎理論で魔法と魔術で作られた魔法陣は同じ物で魔法は使用者によるイメージによって様々な効果へと変わるけれど、魔術による魔法陣はどれだけイメージを変えようとも決まった効果しか発揮しない。
ただし、発展魔術理論では魔力量によって効果を変更する事が出来る。炎を生み出す魔法陣でも多くの魔力を使えば大きな炎を生み出す事が出来る。と、いった具合だ。魔法陣にある効果や機能に関しては魔法と魔術は同様の魔法陣となる事が基礎となり、決まった型を覚える事で魔法と同じ効果の魔術を扱う事が出来るが一定のサイズを超える魔法陣ではどれだけ魔力を投じてもその効果は変わらない。と、いうのも魔術理論の基礎になる。
「ええ、基本的には魔法によって生み出された魔法陣を写して作られた物を魔術として使う事で同じ効果を生み出す事が出来ます。ただし、魔法陣の型によっては、魔力量によって効果を変える事が出来るわ。そうね、ひとつ実験をしましょうか……ウィンディ、この二つの魔石にゆっくりと魔法陣が皆に見えるように魔力調節しながら使ってみて」
「りょーかーい」
と、ウィンディが私から魔石を受け取って、二つを同時に魔石に魔力を流す――随分と魔力コントロールが上手くなっているわね。やっぱり、日々練習と魔導洞窟アタックは役に立つわね。
魔法陣にゆっくりと魔力が満たされて、魔石に込められた魔術が起動して部屋の中に小さな灯りが灯る。
「魔法陣は全く違うのに効果は同じ?」
そう言ったのはリンリィだ。私やアリエル、マリーに比べて苦手意識があり、彼女は思っているほど魔術に関して勉強していなかったのだけど、たぶん理解すれば誰よりも複雑な魔術構築が出来ると私は見ている。
「ええ、片方には灯りを灯す魔法を込めていて、もう片方には灯りを灯す魔術を最小で組んだ物よ。魔法陣で見ると魔法を写し取った物が魔術であるならば、本来は同じ魔法陣でなくてはいけないけど、魔術の場合は同じ効果を別の魔法陣で作ることが出来るのよ……ここは発展魔術理論では無く応用魔術理論に当たるところよ。ただ、発展魔術理論には現存する魔術に魔法と別の魔法陣を用いて同じ効果の魔術が存在するという事だけ書かれているので、とりあえず今はそういうふうに覚えておくだけで問題ないわ」
応用魔術理論に繋がるヒントを少し話してしまったな。と、思いつつも私は周囲に視線を移す。
さすがにマリーやリンリィは色々と察してしまったようで、妙に納得のある表情を浮かばせている。ウィンディは感覚的には既に掴んでいる風ではあるけれど、残念ながらまだ一歩って感じね。ルアーナやミーリア、ジェニーはまだ付いてくるのに必死な感じがあるけれど、下級貴族の子達よりはスタート地点が違うので私の話に違和感を覚えているようね。
下級貴族の子達の中にも不思議そうな顔をしている者が数人いて、その子達は疑問が生まれているようね。ついてこれてない者は妙に感心している感じ、ちょっと面白そうな反応を示す子が一人いることに私は気が付き、その子に声を掛ける。
「あら、妙に納得した表情をしている貴女――確か、ウェーベラント騎士爵令嬢だったかしら?」
「は、はい。ハーファリア・ウェーベラントと申します」
「ではハーファリア。貴女だけ妙に納得したような表情をしていたのは何故かと思って、できれば理由を教えて貰えるかしら?」
そう言うと彼女は驚きの表情を見せてから周囲を確認する。彼女の友人達だろうか皆が頷くと、彼女も意を決したように口を開いた。
「はい。私は前々から疑問に思っていたのです。魔法で高速詠唱を行う時と魔術で高速詠唱が入っているモノで、どう考えても魔法の方が早いと感じていたのです。ですが、ある日に別の魔法で真逆の物がある事を知って、私はずっと心の奥にモヤを抱えて過ごしていたのです。多くの者達は魔法の方が優れており、魔術の方が劣ると感じている。でも、先ほどの実験とエステリア様のご高説を聴いて、もしかして、魔術とは魔法を単純に写した物ではないのではないか? と、思ったのです。すると、こう……難しいですが、私の中で妙にストンと嵌ったというか……そのような感じがあったのです」
なかなか良い感性を持っているようね。魔術は論理的な部分と気付き的な感性が非常に重要だということを私とお母様は幾度も感じたのだ、そこから作り出した理論構築――ほぼ、お母様が考えたのだけど。
今後が楽しみね。
「ハーファリアは中々見どころがありますわね。皆も学んで行けばさらなる気付きを得れるかもしれないわ」
と私は大満足の微笑を浮かべるのであった。って、なんで皆は微妙な表情をしているのかしら? 全く理解不能だわ。
発展魔術理論は高学で習う事になる魔術理論の基礎部分になるけれど、応用魔術理論を教えると前者の多くを否定する結果となるけれど、発展魔術理論は非常に重要な理論部分となる。
「結局のところ、魔法を写し取った物を理解する――と、いうことでしょうか?」
フィレーヌ嬢は小難しい講釈を聞いた後でそう言った。そう、結局のところは魔法によって生み出された魔法陣の内容をいかな形で理解するか? と、いう内容なので非常に正しい理解と言える。基礎理論で魔法と魔術で作られた魔法陣は同じ物で魔法は使用者によるイメージによって様々な効果へと変わるけれど、魔術による魔法陣はどれだけイメージを変えようとも決まった効果しか発揮しない。
ただし、発展魔術理論では魔力量によって効果を変更する事が出来る。炎を生み出す魔法陣でも多くの魔力を使えば大きな炎を生み出す事が出来る。と、いった具合だ。魔法陣にある効果や機能に関しては魔法と魔術は同様の魔法陣となる事が基礎となり、決まった型を覚える事で魔法と同じ効果の魔術を扱う事が出来るが一定のサイズを超える魔法陣ではどれだけ魔力を投じてもその効果は変わらない。と、いうのも魔術理論の基礎になる。
「ええ、基本的には魔法によって生み出された魔法陣を写して作られた物を魔術として使う事で同じ効果を生み出す事が出来ます。ただし、魔法陣の型によっては、魔力量によって効果を変える事が出来るわ。そうね、ひとつ実験をしましょうか……ウィンディ、この二つの魔石にゆっくりと魔法陣が皆に見えるように魔力調節しながら使ってみて」
「りょーかーい」
と、ウィンディが私から魔石を受け取って、二つを同時に魔石に魔力を流す――随分と魔力コントロールが上手くなっているわね。やっぱり、日々練習と魔導洞窟アタックは役に立つわね。
魔法陣にゆっくりと魔力が満たされて、魔石に込められた魔術が起動して部屋の中に小さな灯りが灯る。
「魔法陣は全く違うのに効果は同じ?」
そう言ったのはリンリィだ。私やアリエル、マリーに比べて苦手意識があり、彼女は思っているほど魔術に関して勉強していなかったのだけど、たぶん理解すれば誰よりも複雑な魔術構築が出来ると私は見ている。
「ええ、片方には灯りを灯す魔法を込めていて、もう片方には灯りを灯す魔術を最小で組んだ物よ。魔法陣で見ると魔法を写し取った物が魔術であるならば、本来は同じ魔法陣でなくてはいけないけど、魔術の場合は同じ効果を別の魔法陣で作ることが出来るのよ……ここは発展魔術理論では無く応用魔術理論に当たるところよ。ただ、発展魔術理論には現存する魔術に魔法と別の魔法陣を用いて同じ効果の魔術が存在するという事だけ書かれているので、とりあえず今はそういうふうに覚えておくだけで問題ないわ」
応用魔術理論に繋がるヒントを少し話してしまったな。と、思いつつも私は周囲に視線を移す。
さすがにマリーやリンリィは色々と察してしまったようで、妙に納得のある表情を浮かばせている。ウィンディは感覚的には既に掴んでいる風ではあるけれど、残念ながらまだ一歩って感じね。ルアーナやミーリア、ジェニーはまだ付いてくるのに必死な感じがあるけれど、下級貴族の子達よりはスタート地点が違うので私の話に違和感を覚えているようね。
下級貴族の子達の中にも不思議そうな顔をしている者が数人いて、その子達は疑問が生まれているようね。ついてこれてない者は妙に感心している感じ、ちょっと面白そうな反応を示す子が一人いることに私は気が付き、その子に声を掛ける。
「あら、妙に納得した表情をしている貴女――確か、ウェーベラント騎士爵令嬢だったかしら?」
「は、はい。ハーファリア・ウェーベラントと申します」
「ではハーファリア。貴女だけ妙に納得したような表情をしていたのは何故かと思って、できれば理由を教えて貰えるかしら?」
そう言うと彼女は驚きの表情を見せてから周囲を確認する。彼女の友人達だろうか皆が頷くと、彼女も意を決したように口を開いた。
「はい。私は前々から疑問に思っていたのです。魔法で高速詠唱を行う時と魔術で高速詠唱が入っているモノで、どう考えても魔法の方が早いと感じていたのです。ですが、ある日に別の魔法で真逆の物がある事を知って、私はずっと心の奥にモヤを抱えて過ごしていたのです。多くの者達は魔法の方が優れており、魔術の方が劣ると感じている。でも、先ほどの実験とエステリア様のご高説を聴いて、もしかして、魔術とは魔法を単純に写した物ではないのではないか? と、思ったのです。すると、こう……難しいですが、私の中で妙にストンと嵌ったというか……そのような感じがあったのです」
なかなか良い感性を持っているようね。魔術は論理的な部分と気付き的な感性が非常に重要だということを私とお母様は幾度も感じたのだ、そこから作り出した理論構築――ほぼ、お母様が考えたのだけど。
今後が楽しみね。
「ハーファリアは中々見どころがありますわね。皆も学んで行けばさらなる気付きを得れるかもしれないわ」
と私は大満足の微笑を浮かべるのであった。って、なんで皆は微妙な表情をしているのかしら? 全く理解不能だわ。
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