悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

86.悪役令嬢は授業の話を聞く

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 残念ながら、他の面々は大して面白い自己紹介では無かった――いいえ、アンネマリー・レシアス侯爵令嬢ことマリーの自己紹介は中々に面白かったわ。まさか自分の紹介を延々と褒めて、ぜひ親御さんにも薦めてね。なんだもの、笑いを堪えるのが大変だったわ。後で絶対に文句を言っておこう。


 そして、自己紹介が終わった後、教師ビバル氏は授業の説明を行うと言った。

 文字通り授業の説明だった事に驚いたのだが、基本的には自習で授業らしい授業というのはテスト前にある試験範囲に関する説明と魔法に関しての授業と体術の授業だけらしかった。私は聞いている内に思わず気になって質問をしてみた。

「先生、宜しいでしょうか?」
「ああ、なんだいハーブスト公爵令嬢」
「基本的に自習というのは意味はあるのでしょうか?」

 すると、ビバル氏は面白そうに「ククッ」と、声を出して笑う。正直、少しイラっとします。

「当然、他のクラスの子供達はしっかりと我々が組んだ教育課程に沿って勉学を行っている。だがしかし、しかしだよ。君達上位の貴族令息令嬢達にそんな退屈な事を教えても仕方ない。それぞれも分かっているだろう? 自分たちの多くが既に高学で学ぶような事を家庭教師、もしくは自身の親や親類から教わっている事だろう。まぁ、魔法に関しては家によってバラつきがある為に授業として必要だと思ってはいるがね。納得してもらえたかな?」

 ――なるほど、確かにそれは分からなくは無いんだけど、本当に大丈夫なのかしら? 意外と基礎になる勉強は復習も兼ねて勉強した方がいいような気がするのだけど。でも、反論しても仕方ない事だしなぁ。

「自習の間、教室以外にいても問題無いのでしょうか?」
「ああ、どうしても出席が必要な授業に関しては朝のこの時間に全て連絡させてもらう。なので、この時間は非常に重要だということだけは確かだな。それ以外はサロンに引き籠るなり、図書館に引き籠るなり、好きにしても構わない」

 うん、なんとも自由ね。下手をすると朝だけ来て、すぐに帰る人も出てきそうね。と、いうか朝に馬車が渋滞するのは朝は絶対に行かないといけないし、帰りは自由だから好きな時間に帰るせいで、帰りは渋滞していない。と、いうことか……なんだか、嫌な事実に気が付いてしまったわ。結局のところ、この三年間で貴族的な派閥グループを作ることを学ぼうってのが主旨なのか。

「あと一つだけ、既にサロンの契約をしている者もいると思う。サロンでの活動に関して、一応だが週に一度、どのような活動を行っていたかの報告書を私まで提出するように。提出するタイミングはこの朝の時間の後でもよいし、職員室へ来て提出してもよい。報告書の形式はそれぞれに任せるが、一応、確認した上でダメだしはさせてもらう。そういうわけで、他に何も無ければ本日はここまでとする。楽しい学生時代を楽しみたまえ」

 そう言って、ビバル氏は教室から出て行く。

「エステリア様、これから如何なされますか?」

 と、ジェニーが不安そうな表情で私に言ってくる。まぁ、突然「じゃ、後よろ」されても、困るわよね。よく知る面々も微妙な表情で私の方を見て来る。うん、そうだよね。

「では、私達はサロンで過ごさせて貰いましょうか。帰りの時間はどうやって連絡するのかしらね?」
「その辺りもサロンの受付で聞けばよいのでは無いでしょうか?」

 そう言ったのはリンリィだ。うん、さすがと言っておこう。私達は他のクラスメイト達にサロンに行く旨を言って、私達は教室を出る事にする。

「さすがに、ほとんどの授業が自習というのは微妙な気持ちになりますね。流石に魔法の授業はあるみたいですけど、体術とかの授業合わせても週に4枠以外は自習って困りますよね」
「ウィンディ嬢、たぶんだが……魔術や体術の授業も経験者にとっては自習みたいなモノになると思う。これは我が兄が言っていたので間違いないと思う」
「えー、でも、来ないとダメってすっごく無駄な感じがするんですけど!?」

 まぁ、ウィンディとか魔法に関しては魔導洞窟ダンジョンに潜れるだけあって、実践って意味ではかなり使えちゃうし、普通に授業として受けられるのは体術の授業くらいかしら? と、思ったらそれも無理だわ。

「そもそも小学において私達上級貴族においては勉強に関しては家庭教師を雇っての勉強でだいたい出来ている事が前提になっているみたいですからね。ま、復習の為に個々で勉強するというのはアリかもしれませんね。小学での勉強範囲を洗い出して、皆で勉強会でもしましょう。他にも一週間の予定や私が借りているサロンを使う日、個々が自習をする日なども踏まえて、お互いの情報を共有しておきましょう」

 皆が私の意見に賛成を示し、とりあえずサロンへ向かう事にするのだった。
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