85 / 232
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
85.悪役令嬢は自己紹介をする
しおりを挟む
教壇に立ったのは30代くらいの眼鏡を掛けている野暮ったい感じの男性だ。身長は結構高いけど、猫背なせいでより暗そうな雰囲気に見える。
「みな、席に着きたまえ」
意外にも明朗な声に皆はざわめきから一瞬で静かになり、皆、教室の席へ座る。おお、妙な静けさに緊張が走る感じ、いかにも学校という雰囲気に私は少しワクワクしている。正直、前世の記憶が甦るようなそんな高揚感を感じるくらいに私はこの空気感は嫌いじゃない。
「まず、本日はみな、はじめての学院で緊張している事だろう。同年代の貴族の子息令嬢であれば多くが顔見知りではあると思うが、ここは親睦を深めるという意味合いも込めて自己紹介をしようと思う」
教師はそう言って黒板に水筆を使って文字を書き始める。って、チョークでは無いのね。
「私はウェンダルク・オー・ラッツェラーク・フィルフォート・ビバルだ。趣味は魔術研究だ。ここには女王キャロラインによって招聘されて教師という立場を得ている。君達の多くとの違いで言えば、ミストリア出身では無いということかな。このクラスの担当教師として三年間、楽しませて貰うよ」
帝国の上級貴族特有のミドルネームが続くタイプの名前でファーストネームの後に短めの名が入るのは自身の家の中での位置を示すモノで、オーは男性で二番目に付くハズだから、ビバル? ビバル大公の次男ってことか。何気に色々とヤバイわね。上位貴族の集まりであっても、大帝国内でも上位の貴族一族が小学の教員? いやいや、キャロラインはん、なにやってくれてまんの? 思わず訛っちまうくらいに頭がふにゃるわ!
まぁ、確かに上位貴族より遥かに高い家系の人間が教師って、とってもよい嫌がらせよね。
「そう言うわけで……ん? どうやら、クリフト・ミストリア王子殿下は教室には来ていないみたいだね。ふむ、仕方ない。ではエステリア・ハーブスト公爵令嬢。君から自己紹介をよろしく頼む」
なるほど、他の三大公爵家では無く、私を指定してくるというのは順序をキチンと示しておくことは大事だということね。ただ、そういうのって意味なく自分が偉いと勘違いする子が出て来そうな気もするのだけど。ま、仕方ないわね。貴族の順位ってとても大事だものね。
「ええ、分かりましたわ」
と、言って私は立ち上がる。視線が私に集まる――のは当たり前ではあるけど。私は教室内の皆に視線を一度向けて、ゆっくりと息を吐いた。
「皆様、当然ここにいる貴族の令息令嬢ですので、語らずとも私の事を知っているとは思います。いかな感情を持っているかは私には分かりかねますが、これからこの学院での三年間、良い関係を築ければ良いと思います。ただ、私は貴賤を問わず優秀な人と仲良くできればと思っておりますわ」
そう言った瞬間、ぎょっとする表情をする子達が数名。白々しい顔をする者も複数いるわね。よく分からない顔をしている子達が一番多いか。まぁ、いってもまだ10歳だものね。教師ビバルは表情を見せないようにしているわね。でも多くの子達も親からも付き合ってよい人間、付き合ってはいけない人間をしっかりと叩きこまれているだろうけど、ここでの三年間、学園都市でも三年間で将来が決まっちゃうといっても過言では無いから、皆さん、仲良く頑張りましょうね。と、私は出来るだけ穏やかな微笑を見せて静かに座った。
「ふむ、中々素晴らしい自己紹介だったな。次はアーネスト・パルプスト公爵令息、君の番だ」
アーネスト君は嫌そうな雰囲気を醸し出しつつ、ゆっくりと立ち上がる。
「――私はパルプスト公爵が長子アーネストである。先程、ハーブスト公爵令嬢は仲良くと言っていたが、私は皆と仲良くする気は無い。私は常に誰の味方でも無く、誰の敵でも無い。なので、不干渉を頼みたい。以上だ」
と、言ってサッと着席した。私の名前を出すという事は私に対しては好意的ではないという雰囲気か。でも、どの派閥にも付きませんので放っておいて――か、なんだか既にこの歳にして色々と拗らせていそうね彼。
さて、他に面白い自己紹介をする人はいるかしら?
「みな、席に着きたまえ」
意外にも明朗な声に皆はざわめきから一瞬で静かになり、皆、教室の席へ座る。おお、妙な静けさに緊張が走る感じ、いかにも学校という雰囲気に私は少しワクワクしている。正直、前世の記憶が甦るようなそんな高揚感を感じるくらいに私はこの空気感は嫌いじゃない。
「まず、本日はみな、はじめての学院で緊張している事だろう。同年代の貴族の子息令嬢であれば多くが顔見知りではあると思うが、ここは親睦を深めるという意味合いも込めて自己紹介をしようと思う」
教師はそう言って黒板に水筆を使って文字を書き始める。って、チョークでは無いのね。
「私はウェンダルク・オー・ラッツェラーク・フィルフォート・ビバルだ。趣味は魔術研究だ。ここには女王キャロラインによって招聘されて教師という立場を得ている。君達の多くとの違いで言えば、ミストリア出身では無いということかな。このクラスの担当教師として三年間、楽しませて貰うよ」
帝国の上級貴族特有のミドルネームが続くタイプの名前でファーストネームの後に短めの名が入るのは自身の家の中での位置を示すモノで、オーは男性で二番目に付くハズだから、ビバル? ビバル大公の次男ってことか。何気に色々とヤバイわね。上位貴族の集まりであっても、大帝国内でも上位の貴族一族が小学の教員? いやいや、キャロラインはん、なにやってくれてまんの? 思わず訛っちまうくらいに頭がふにゃるわ!
まぁ、確かに上位貴族より遥かに高い家系の人間が教師って、とってもよい嫌がらせよね。
「そう言うわけで……ん? どうやら、クリフト・ミストリア王子殿下は教室には来ていないみたいだね。ふむ、仕方ない。ではエステリア・ハーブスト公爵令嬢。君から自己紹介をよろしく頼む」
なるほど、他の三大公爵家では無く、私を指定してくるというのは順序をキチンと示しておくことは大事だということね。ただ、そういうのって意味なく自分が偉いと勘違いする子が出て来そうな気もするのだけど。ま、仕方ないわね。貴族の順位ってとても大事だものね。
「ええ、分かりましたわ」
と、言って私は立ち上がる。視線が私に集まる――のは当たり前ではあるけど。私は教室内の皆に視線を一度向けて、ゆっくりと息を吐いた。
「皆様、当然ここにいる貴族の令息令嬢ですので、語らずとも私の事を知っているとは思います。いかな感情を持っているかは私には分かりかねますが、これからこの学院での三年間、良い関係を築ければ良いと思います。ただ、私は貴賤を問わず優秀な人と仲良くできればと思っておりますわ」
そう言った瞬間、ぎょっとする表情をする子達が数名。白々しい顔をする者も複数いるわね。よく分からない顔をしている子達が一番多いか。まぁ、いってもまだ10歳だものね。教師ビバルは表情を見せないようにしているわね。でも多くの子達も親からも付き合ってよい人間、付き合ってはいけない人間をしっかりと叩きこまれているだろうけど、ここでの三年間、学園都市でも三年間で将来が決まっちゃうといっても過言では無いから、皆さん、仲良く頑張りましょうね。と、私は出来るだけ穏やかな微笑を見せて静かに座った。
「ふむ、中々素晴らしい自己紹介だったな。次はアーネスト・パルプスト公爵令息、君の番だ」
アーネスト君は嫌そうな雰囲気を醸し出しつつ、ゆっくりと立ち上がる。
「――私はパルプスト公爵が長子アーネストである。先程、ハーブスト公爵令嬢は仲良くと言っていたが、私は皆と仲良くする気は無い。私は常に誰の味方でも無く、誰の敵でも無い。なので、不干渉を頼みたい。以上だ」
と、言ってサッと着席した。私の名前を出すという事は私に対しては好意的ではないという雰囲気か。でも、どの派閥にも付きませんので放っておいて――か、なんだか既にこの歳にして色々と拗らせていそうね彼。
さて、他に面白い自己紹介をする人はいるかしら?
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる