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第二章 悪役令嬢は暗躍する
81.悪役令嬢の側近の憂鬱
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私はミーリア様より先に馬車が来たので別れたけれど、揺られる馬車の中で思わず溜息を吐いてしまう。我が家のメイドは私のそんな行動は見えないフリをする。
ミーリア様は今日あった事に思わず手の震えが治まらないと言っていた。それは私だって同じなのだけど、私に比べてミーリア様はどこか自信に満ちた表情をしていて、私は本当に何もなくたまたまお友達候補に選ばれただけで、あの時のお茶会からずっと思っている。我が家には何もない――
クラースト伯爵家は大きも小さくも無い、特に大きな特色も無い、派閥的にもどこにも属していない宙ぶらりんな存在なのだ。確かに、だからこそお母様は様々な茶会に呼ばれるほど顔が広いのだけど、特に誰かと親しいかと言われると微妙――と、いうか我が家は現在派閥の波にならないように必死だったりする。
だから、エステリア様にべったりな私をあまり快く思っていないのか、最近、お姉様やお兄様からの当たりが強い。ただ、お母様とお父様はどんな手を使ってでもエステリア様についておくべきだと仰っていたので間違っていないと思う。
正直なところ、エステリア様は微妙な立場にいる人で王位継承権を持っている公爵家のご令嬢でハーブスト家は基本的に中立的な立ち位置に常にいますが、エステリア様はアリエル王女殿下の最も信頼のおける友人という立場でもあり、クリフト王子殿下の婚約者でもある。最近は貴族派の貴族がクリフト殿下を推す傾向があって、アリエル王女は保守派と呼ばれる人達が推している。
私個人としてはエステリア様自身が派閥を作るのがいいのでは無いかと思うのよね。今回のサロンの話にしても、その足掛かり――と、いうつもりなら分かるのだけど、アリエル殿下がご入学されれば、あそこには殿下もやってくるハズなのよね。
「はぁ……」
私はもう一つ溜息を吐いた。難しい事を考えても意味は無いし、私の頭が破裂しそうになるだけで無意味だわ。そう思って馬車から見える景色に視線を向ける。
明日から、もっと頑張って皆について行かないといけない。正直、結構必死なんだけど、憂鬱だわ。私的にはもっと気楽に生きていきたいのに、周囲はそうさせてくれないのだから。まぁ、これからの事をお母様やお父様にお伝えすると喜んでくれるでしょうから、それは嬉しいのだけど――私ってば、あの中でついて行けるのかしら?
そう思うと不安で押しつぶされそう。でも、弱みをみせて付け込まれるのは私としては我慢ならないのよ。はぁ……もっと気合入れていかなきゃね。ジェニー、頑張るのよ!
と、自らを振るい立たせる。
「学院の行き帰りの道ってば狭すぎよね。馬車になる前は牛車とか人力で籠を担いでたのよね……その頃からの名残りで道が狭いのかしら?」
私がそう言うと、我が家のメイドで名前はアンリだったわね。彼女は苦笑して「私には分かりかねます」と、答えた。
「アンリも小学に通っていたのでしょ?」
彼女はどこかの男爵だったか、騎士爵の娘だったハズだ。普段は私の話などに反応を示しても何も言ってこない彼女だったが、何を思ったのか少し考えるような仕草をしてから口を開く。
「――私の場合は寮での生活でしたので、馬車を使ってこの道を通ることなどほとんどありませんでしたから」
そして、再び苦笑する。
「なるほどね。寮生って、お休みの日は街に出たりしなかったの?」
「出る事もありますよ。一応、学院の方に事前に申請を出せば王都までの馬車を出して貰えます。ただし、帰りの時間も決まっていますから自由に遊びに行くという感じではなかったです」
意外と饒舌なのね。そんな事を思いつつ、貴重な体験談を色々と聞きながら家に帰った。馬車を降りるさいに私を支える為に先に降りて手を出してくれているアンリに私は「ありがとう、退屈な馬車の中がとても楽しかったわ」と、答えると彼女は驚きの表情を浮かべていた。
普段は会話さえない我が家のメイド達と少しづつ話をしていくと、意外と面白い情報や知識が手に入るかもしれない。と、私は御機嫌で我が家の扉をくぐるのであった。
ミーリア様は今日あった事に思わず手の震えが治まらないと言っていた。それは私だって同じなのだけど、私に比べてミーリア様はどこか自信に満ちた表情をしていて、私は本当に何もなくたまたまお友達候補に選ばれただけで、あの時のお茶会からずっと思っている。我が家には何もない――
クラースト伯爵家は大きも小さくも無い、特に大きな特色も無い、派閥的にもどこにも属していない宙ぶらりんな存在なのだ。確かに、だからこそお母様は様々な茶会に呼ばれるほど顔が広いのだけど、特に誰かと親しいかと言われると微妙――と、いうか我が家は現在派閥の波にならないように必死だったりする。
だから、エステリア様にべったりな私をあまり快く思っていないのか、最近、お姉様やお兄様からの当たりが強い。ただ、お母様とお父様はどんな手を使ってでもエステリア様についておくべきだと仰っていたので間違っていないと思う。
正直なところ、エステリア様は微妙な立場にいる人で王位継承権を持っている公爵家のご令嬢でハーブスト家は基本的に中立的な立ち位置に常にいますが、エステリア様はアリエル王女殿下の最も信頼のおける友人という立場でもあり、クリフト王子殿下の婚約者でもある。最近は貴族派の貴族がクリフト殿下を推す傾向があって、アリエル王女は保守派と呼ばれる人達が推している。
私個人としてはエステリア様自身が派閥を作るのがいいのでは無いかと思うのよね。今回のサロンの話にしても、その足掛かり――と、いうつもりなら分かるのだけど、アリエル殿下がご入学されれば、あそこには殿下もやってくるハズなのよね。
「はぁ……」
私はもう一つ溜息を吐いた。難しい事を考えても意味は無いし、私の頭が破裂しそうになるだけで無意味だわ。そう思って馬車から見える景色に視線を向ける。
明日から、もっと頑張って皆について行かないといけない。正直、結構必死なんだけど、憂鬱だわ。私的にはもっと気楽に生きていきたいのに、周囲はそうさせてくれないのだから。まぁ、これからの事をお母様やお父様にお伝えすると喜んでくれるでしょうから、それは嬉しいのだけど――私ってば、あの中でついて行けるのかしら?
そう思うと不安で押しつぶされそう。でも、弱みをみせて付け込まれるのは私としては我慢ならないのよ。はぁ……もっと気合入れていかなきゃね。ジェニー、頑張るのよ!
と、自らを振るい立たせる。
「学院の行き帰りの道ってば狭すぎよね。馬車になる前は牛車とか人力で籠を担いでたのよね……その頃からの名残りで道が狭いのかしら?」
私がそう言うと、我が家のメイドで名前はアンリだったわね。彼女は苦笑して「私には分かりかねます」と、答えた。
「アンリも小学に通っていたのでしょ?」
彼女はどこかの男爵だったか、騎士爵の娘だったハズだ。普段は私の話などに反応を示しても何も言ってこない彼女だったが、何を思ったのか少し考えるような仕草をしてから口を開く。
「――私の場合は寮での生活でしたので、馬車を使ってこの道を通ることなどほとんどありませんでしたから」
そして、再び苦笑する。
「なるほどね。寮生って、お休みの日は街に出たりしなかったの?」
「出る事もありますよ。一応、学院の方に事前に申請を出せば王都までの馬車を出して貰えます。ただし、帰りの時間も決まっていますから自由に遊びに行くという感じではなかったです」
意外と饒舌なのね。そんな事を思いつつ、貴重な体験談を色々と聞きながら家に帰った。馬車を降りるさいに私を支える為に先に降りて手を出してくれているアンリに私は「ありがとう、退屈な馬車の中がとても楽しかったわ」と、答えると彼女は驚きの表情を浮かべていた。
普段は会話さえない我が家のメイド達と少しづつ話をしていくと、意外と面白い情報や知識が手に入るかもしれない。と、私は御機嫌で我が家の扉をくぐるのであった。
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