悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第二章 悪役令嬢は暗躍する

77.悪役令嬢は学院の施設案内に案内される

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 サロン棟の食堂に向かう入口の近くにある階段を上がると立派な扉があり、さらに騎士らしき人物が扉の前に立っていた。フィレーヌ嬢は小さく会釈をすると騎士は扉を開け、私達はそれに続いて扉の先へ進む。

「ここから先は基本的にサロンを借り受ける事が可能な者しか立ち入る事は出来ません。また、これから向かうのは3階フロアに儲けらている特別室の一つとなります」

 そう言って、彼女はサロンの廊下を黙々と歩いていく。途中で足を止めて、私達の方を向いて穏やかに微笑む。うん、心証が良くなるように上手くたち待っている優秀な娘ね。少し物言いがキツめのところもあるけれど、私は嫌いじゃないかな。

「2階フロアにも手前側と奥側で部屋の質や広さが違います。手前側は平民でもある程度裕福であれば借り受けることが出来るかもしれません。奥に進むにつれて格が上がっていきます。広さに関しては各場所ごとに、小さな部屋から広めの部屋まで揃っております。お嬢様方からすれば、狭い部屋と思われるかもしれませんけど」

 一言多いところが面白くて私は思わずクスリと笑ってしまう。

「な、何か……問題でもありましたでしょうか?」
「いいえ、私は貴女の事が少し気に入りました。ただ――そうね、ただ、そう覚えておいてください」
「は……はぁ……」

 彼女は不思議そうな瞳を向けつつも「では、先へ……」と、フロアのさらに奥へ進んでいく。そして、さらに上に上がる階段を上って、再び騎士らしき人物が守る扉の前に行き、何やら確認を取ると騎士らしき人物が扉を開ける。

 2階フロアと比べて見るからに壁紙や調度品なども高級感があり、あからさまに違いが分かる場所となっている。少し上品さに欠ける気がしなくもないけれど、ま、そのあたりは趣味趣向の違いと思いましょう。

「フロア内の四方に特別な部屋が用意されておりまして、今回はその一つを借りております」

 と、いって案内された部屋に入ると、数名の学生らしき子達が恭しく礼をする。

「あら、こちらの方達は?」
「はい、私が選ばせて頂きました本日、エステリア様をお迎えするにあたって給仕などの手伝いが出来る者となっております。立ち話はなんですので、そちらにお掛け下さいませ」

 そう言ってサロンの広い一室中央にあるソファーへ案内される。お茶菓子などが用意されており、事前に本日のメンバーが分かっていたかのように席が用意されていた。

「私はエステリア様の側に立たせて頂きます」
「あら、ルアーナ。そこまでしなくとも……」
「いいえ、私はエステリア様の護衛役ですから、こちらで」

 ルアーナはそう言って、私が座るソファの斜め後ろ辺りから頑として動かないという姿勢を見せる。言っても聞かなそうだし、仕方ない。今日は放置しよう。

「わかりました。しっかりとお願いね」
「ハッ」

 と、ルアーナは気合の入った返答をした。これは……慣れるしかなさそう。ちなみにマリーはそれを見て笑いを堪えているわね。後で覚えてなよ。

「本日は皆様、お越しくださってありがとうございます。本来、その場へ向かってご説明した方が良いとは思ったのですが、数時間で施設を全て回るのは無理なので、サロンの方でご説明させて頂きたく今回の場をご用意させて頂きました」

 そうフィレーヌ嬢が言うと事前に練習していたのか、メイド服を着た子達がそれぞれの席にティーカップを置き、そこにお茶を入れる。少し緊張が見られるけれど、年齢の割には頑張っているといえるでしょう。

「まずはお茶とお菓子を食べながら、私のお話を聞いて頂ければと思います。お邪魔になるかもしれませんが、資料の方だけお配りさせて頂きます」

 と、次は複数枚にまとめられた資料が配布される。学院の地図と各施設の説明が記載されている資料だ。私はざっとそれを確認してから、テーブルに置いてお茶を口に含む。うん、本日のお茶はハーブを煎じたモノで爽やかな香りが鼻腔に広がり、少し気持ちをスッキリとさせてくれる。

「アーマリー商会のお茶ね」
「はい、本日はアーマリー商会の最高級のハーブティーを用意させて頂きました。お茶菓子の方は王都でも最近流行り始めたエンブリヲのトリュフを取り寄せさせて頂きました」

 ちなみにエンブリヲ・ショコラが正式名称よ。カカオ豆に関しては結構前からマリーと私はチェック済みで共同出資の店を作ったのよ。チョコを作るにはバター、ミルクは私が経営する畜産部が引き受け、カカオも我が家の研究で栽培している物を使用しているので量自体は作れないけれど、店一軒賄うくらいには問題無い収穫を行ってる。前世から考えるとあり得ない値段になっているけれど、裕福な貴族くらいしか手にできない値段設定になっているわ。

「数量限定品なのによく手に入ったわよね」

 そう言ったのはマリーだ。確かにそれは思う――いや、たぶんだけど、この案内に関しても準備は結構前からしていたハズよね。メンバーに関しては事前に保護者か関係者……いいえ、私以外の本人は聞いていた可能性もあるか。

「はい、事前準備は抜かり在りませんので。皆様には喜んで頂きたかったので――それでは、施設に関して説明させて頂きます」

 そう言ってフィレーヌ嬢は資料の解説を始める――
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