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第二章 悪役令嬢は暗躍する
72.悪役令嬢はお父様に質問する
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「お父様はクリフト殿下がああいった性格――と、いうか私の事を随分嫌ってらっしゃるのを知っていたのでしょうか?」
私が質問をすると、お父様は微妙な表情を浮かべる。なんとも言えない苦虫を噛んだ時のような感じよね。超絶美形のお父様でもそんな表情をするのね。と、思わず感心してしまうくらい。
「実のところを言えば、これほどにまでとは思っていなかった。噂では女王陛下の事もあまり得意では無い様子でな、よく似ているアリエル殿下や我妻であるステファニー、そしてお前も含めて、苦手意識があるらしい事は分かっていたのだ。ただ、今回の婚約に関しては陛下達が直接話をした時、彼は問題ないと答えたらしいのだ」
問題だらけだけど、取り合えず面倒だったので適当に答えた? さすがにそんなワケないわよね、クリフト殿下。はぁ、ゲームでのクリフト殿下はもっと――と、思ったけれどエステリアに対しては汚物を見るような視線を浴びせていたわ。でも、ゲームでの婚約は殿下の方がエステリアに一目惚れしたとかいう理由だったと記憶しているのだけど、それは一体どういうことなのだろうか?
悪役令嬢全員が転生者だった影響か元々のシナリオには無い行動や歴史改変を行っている可能性も考えないといけないけど、正直、自分達の生活が快適になるための行動って、簡単には自重出来ないわよねぇ。
「あまりにも辛ければ、小学へは行かなくともよいのだよ?」
「大丈夫です。無理に毎日を共にする必要はありませんし、向こうもいつも傍にいられたらお嫌なのでしょうから」
趣旨が私に対しての嫌がらせか、私を分からせたいドSな気質だった場合は少し考えなくてはいけないと思うけれど、それでも毎日の事――と、いうほどでは無いと思うんだよね。
「しかし、お茶会から戻って来て――あんなに泣き崩れてたではないか。私はとても心配なのだよ。ステファニーが言うには君は強い娘だから大丈夫だというけど……」
お父様はとてもお優しい人です。まぁ、確かにちょっと面食らってしまったせいで、感情が振れてしまいましたが、心積もりがあればなんとか、なんとかなると思いたい。
「誰か殿下に変な事を吹き込んだ者達がいる可能性は如何でしょうか?」
「どうだろうね。その辺りは何とも言い難いな。そもそも、この国以外でも女性は如何なる者でも、あの場面ではエスコートをするのがマナーだと教え込まれているハズ――なのだがねぇ」
「確かに、両陛下も驚いていた様子でした。後で殿下はこっぴどく怒られているかもしれませんけど、それに関しては自業自得としか言えませんよね。侍従とか、現在付いている側近の方々は誰も止める気さえ無かったようですし、それも問題ですよね」
「それは、何か陰謀めいたものを感じるヤツだね。しかし、あからさまにそんな事をすれば、周囲の者達が諫めなかった事は確実に失点になるからね。特にクリフト殿下の周囲はヴィジタリア公爵の手の者が多かったハズだから、彼のそのような行動を咎めないということは無いと思うのだけど」
そこも、何か理由がありそうですね。ま、お父様にお任せした方がよいでしょうね。そう思っているとお父様も察したようでニヤリと笑って私を見る。
「私が調べておこう。色々と城内にも問題が広がっているかもしれないからね」
ミストリアではまだ国としての政治機構はザックリとしており、部署の垣根というのも非常に曖昧で合議制を取っているけれど、軍という部分で言えば騎士団、宮廷魔術師協会などの部署があるけど、そのトップは王配のランパード閣下を中心とした人達で、財務、法律などに関しては官吏がいて、そのトップは宰相であるリブロス侯爵。議場の場に出席する貴族は基本的に公爵か侯爵となっていて、それ以下の爵位の貴族は参加できない。
だから、派閥が重要なんだけど、これって不正腐敗の温床になりやすいんだよね。そして、新興貴族が幾つもある下位貴族達の不満は溜まる。もう一つ、問題があるとすれば、領地ごとで格差が広がっている事。これは致し方ない部分だけど、実は貴族派の貴族って商売下手が結構いる。原因は私達が生まれるより前、お父様達がまだ若かりし頃は戦も頻発していたので、戦功を立てて陞爵した貴族が結構な数いたせいなのよね。中には上手くやっている家もあるけど、残念ねながら脳筋貴族が多いこと多いこと。
私が質問をすると、お父様は微妙な表情を浮かべる。なんとも言えない苦虫を噛んだ時のような感じよね。超絶美形のお父様でもそんな表情をするのね。と、思わず感心してしまうくらい。
「実のところを言えば、これほどにまでとは思っていなかった。噂では女王陛下の事もあまり得意では無い様子でな、よく似ているアリエル殿下や我妻であるステファニー、そしてお前も含めて、苦手意識があるらしい事は分かっていたのだ。ただ、今回の婚約に関しては陛下達が直接話をした時、彼は問題ないと答えたらしいのだ」
問題だらけだけど、取り合えず面倒だったので適当に答えた? さすがにそんなワケないわよね、クリフト殿下。はぁ、ゲームでのクリフト殿下はもっと――と、思ったけれどエステリアに対しては汚物を見るような視線を浴びせていたわ。でも、ゲームでの婚約は殿下の方がエステリアに一目惚れしたとかいう理由だったと記憶しているのだけど、それは一体どういうことなのだろうか?
悪役令嬢全員が転生者だった影響か元々のシナリオには無い行動や歴史改変を行っている可能性も考えないといけないけど、正直、自分達の生活が快適になるための行動って、簡単には自重出来ないわよねぇ。
「あまりにも辛ければ、小学へは行かなくともよいのだよ?」
「大丈夫です。無理に毎日を共にする必要はありませんし、向こうもいつも傍にいられたらお嫌なのでしょうから」
趣旨が私に対しての嫌がらせか、私を分からせたいドSな気質だった場合は少し考えなくてはいけないと思うけれど、それでも毎日の事――と、いうほどでは無いと思うんだよね。
「しかし、お茶会から戻って来て――あんなに泣き崩れてたではないか。私はとても心配なのだよ。ステファニーが言うには君は強い娘だから大丈夫だというけど……」
お父様はとてもお優しい人です。まぁ、確かにちょっと面食らってしまったせいで、感情が振れてしまいましたが、心積もりがあればなんとか、なんとかなると思いたい。
「誰か殿下に変な事を吹き込んだ者達がいる可能性は如何でしょうか?」
「どうだろうね。その辺りは何とも言い難いな。そもそも、この国以外でも女性は如何なる者でも、あの場面ではエスコートをするのがマナーだと教え込まれているハズ――なのだがねぇ」
「確かに、両陛下も驚いていた様子でした。後で殿下はこっぴどく怒られているかもしれませんけど、それに関しては自業自得としか言えませんよね。侍従とか、現在付いている側近の方々は誰も止める気さえ無かったようですし、それも問題ですよね」
「それは、何か陰謀めいたものを感じるヤツだね。しかし、あからさまにそんな事をすれば、周囲の者達が諫めなかった事は確実に失点になるからね。特にクリフト殿下の周囲はヴィジタリア公爵の手の者が多かったハズだから、彼のそのような行動を咎めないということは無いと思うのだけど」
そこも、何か理由がありそうですね。ま、お父様にお任せした方がよいでしょうね。そう思っているとお父様も察したようでニヤリと笑って私を見る。
「私が調べておこう。色々と城内にも問題が広がっているかもしれないからね」
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だから、派閥が重要なんだけど、これって不正腐敗の温床になりやすいんだよね。そして、新興貴族が幾つもある下位貴族達の不満は溜まる。もう一つ、問題があるとすれば、領地ごとで格差が広がっている事。これは致し方ない部分だけど、実は貴族派の貴族って商売下手が結構いる。原因は私達が生まれるより前、お父様達がまだ若かりし頃は戦も頻発していたので、戦功を立てて陞爵した貴族が結構な数いたせいなのよね。中には上手くやっている家もあるけど、残念ねながら脳筋貴族が多いこと多いこと。
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