悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
上 下
72 / 232
第二章 悪役令嬢は暗躍する

72.悪役令嬢はお父様に質問する

しおりを挟む
「お父様はクリフト殿下がああいった性格――と、いうか私の事を随分嫌ってらっしゃるのを知っていたのでしょうか?」

 私が質問をすると、お父様は微妙な表情を浮かべる。なんとも言えない苦虫を噛んだ時のような感じよね。超絶美形のお父様でもそんな表情をするのね。と、思わず感心してしまうくらい。

「実のところを言えば、これほどにまでとは思っていなかった。噂では女王陛下の事もあまり得意では無い様子でな、よく似ているアリエル殿下や我妻であるステファニー、そしてお前も含めて、苦手意識があるらしい事は分かっていたのだ。ただ、今回の婚約に関しては陛下達が直接話をした時、彼は問題ないと答えたらしいのだ」

 問題だらけだけど、取り合えず面倒だったので適当に答えた? さすがにそんなワケないわよね、クリフト殿下。はぁ、ゲームでのクリフト殿下はもっと――と、思ったけれどエステリアに対しては汚物を見るような視線を浴びせていたわ。でも、ゲームでの婚約は殿下の方がエステリアに一目惚れしたとかいう理由だったと記憶しているのだけど、それは一体どういうことなのだろうか?

 悪役令嬢全員が転生者だった影響か元々のシナリオには無い行動や歴史改変を行っている可能性も考えないといけないけど、正直、自分達の生活が快適になるための行動って、簡単には自重出来ないわよねぇ。

「あまりにも辛ければ、小学へは行かなくともよいのだよ?」
「大丈夫です。無理に毎日を共にする必要はありませんし、向こうもいつも傍にいられたらお嫌なのでしょうから」

 趣旨が私に対しての嫌がらせか、私を分からせたいドSな気質だった場合は少し考えなくてはいけないと思うけれど、それでも毎日の事――と、いうほどでは無いと思うんだよね。

「しかし、お茶会から戻って来て――あんなに泣き崩れてたではないか。私はとても心配なのだよ。ステファニーが言うには君は強い娘だから大丈夫だというけど……」

 お父様はとてもお優しい人です。まぁ、確かにちょっと面食らってしまったせいで、感情が振れてしまいましたが、心積もりがあればなんとか、なんとかなると思いたい。

「誰か殿下に変な事を吹き込んだ者達がいる可能性は如何でしょうか?」
「どうだろうね。その辺りは何とも言い難いな。そもそも、この国以外でも女性は如何なる者でも、あの場面ではエスコートをするのがマナーだと教え込まれているハズ――なのだがねぇ」
「確かに、両陛下も驚いていた様子でした。後で殿下はこっぴどく怒られているかもしれませんけど、それに関しては自業自得としか言えませんよね。侍従とか、現在付いている側近の方々は誰も止める気さえ無かったようですし、それも問題ですよね」
「それは、何か陰謀めいたものを感じるヤツだね。しかし、あからさまにそんな事をすれば、周囲の者達が諫めなかった事は確実に失点になるからね。特にクリフト殿下の周囲はヴィジタリア公爵の手の者が多かったハズだから、彼のそのような行動を咎めないということは無いと思うのだけど」

 そこも、何か理由がありそうですね。ま、お父様にお任せした方がよいでしょうね。そう思っているとお父様も察したようでニヤリと笑って私を見る。

「私が調べておこう。色々と城内にも問題が広がっているかもしれないからね」

 ミストリアではまだ国としての政治機構はザックリとしており、部署の垣根というのも非常に曖昧で合議制を取っているけれど、軍という部分で言えば騎士団、宮廷魔術師協会などの部署があるけど、そのトップは王配のランパード閣下を中心とした人達で、財務、法律などに関しては官吏がいて、そのトップは宰相であるリブロス侯爵。議場の場に出席する貴族は基本的に公爵か侯爵となっていて、それ以下の爵位の貴族は参加できない。

 だから、派閥が重要なんだけど、これって不正腐敗の温床になりやすいんだよね。そして、新興貴族が幾つもある下位貴族達の不満は溜まる。もう一つ、問題があるとすれば、領地ごとで格差が広がっている事。これは致し方ない部分だけど、実は貴族派の貴族って商売下手が結構いる。原因は私達が生まれるより前、お父様達がまだ若かりし頃は戦も頻発していたので、戦功を立てて陞爵した貴族が結構な数いたせいなのよね。中には上手くやっている家もあるけど、残念ねながら脳筋貴族が多いこと多いこと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...