66 / 232
第二章 悪役令嬢は暗躍する
66.悪役令嬢は婚約者と出会う
しおりを挟む
気が付けば、色々やっている間にもうすぐ10歳。
ちょうど小学への入学前のタイミングとなり、先に誕生日を迎えているクリフト殿下の誕生日に合わせてのお茶会が開かれます。王城で歳の近い侯爵以上の男女が一堂に集められているのですが、正直、逃げたい。でも、逃げても結局のところ、どうにもならないってのは分かり切っているのだから、逃げたくとも逃げるわけにはいかないわけなのよね。
因みに、本日は私とクリフト殿下の婚約も発表される予定なのだけど、実はまだ一度もクリフト殿下とは直接会う機会は無かったんだよね。たぶん、これもお父様とお母様が上手いことタイミングなんかを調整してくれていたおかげなのかもしれない。
「相変わらず、ここに来ると憂鬱そうな雰囲気になってるわね」
そう言って来たのは同じ控室で暇そうにしていたアリエルだ。
「だって、面倒な事しかないでしょ? アリエルの離宮ならまだしも王城の第一テラスでのお茶会なんて、全く気を抜けないでしょ?」
「んー、そういうもの? ま、私にとってはここが家だからアンタみたいな感覚は分かんないわ」
確かに、寝ても起きても城の中ではあるし、ここ最近のアリエルは城内の色んなところを歩き回っていると城にいる公爵家の手の者から聞いている。最近は王配であるランパード閣下とも手合わせをしてもらっているらしい、因みに『お出かけ』は私同伴で無くては出れないらしく、私のスケジュールに合わせないといけない所為でお出かけに行けないと文句を言われている。
「そう言えばお父様がクーベルト辺境伯が持っているアレ、すっごく気にしてたわよ?」
「アレに関しては我が家の一部とアリエル、ウィンディくらいしか渡してないし、一応、女王陛下の手元にもあるけど、ランパード閣下には黙っているのね」
「んー、ってことは欲しがってもダメな感じ?」
「そうね。アレに関しては秘密中の秘密だし、大量生産したら確実にパワーバランスを崩しちゃうわ」
「それなら仕方ないわね」
そんな話をしていると、ドアがノックされる。
「誰かしら?」
アリエルは不思議そうな顔をするが、私はなんとなく分かるんだよね。だって、ここは王族の控室で私に先に準備して待つように指示を出したのは女王キャロラインなのだから。
「お嬢様、クリフト殿下がいらっしゃいました」
「お通して」
エルーサは深々と頭を下げて、ドアの方へ向かう。私は椅子から立ち上がると直ぐに扉が開かれクリフト殿下の一団がやってくる。ゲームでの印象と同じ冷たい雰囲気のする王子様だ。
「本日はお招きいただきありがとうございます。クリフト殿下。私がハーブスト公爵が娘、エステリアでございます」
私は王族に対しての礼を行い、ソッと頭を下げる。そういえば……アリエルには一度もやってないわ。
「ああ、面を上げよ。エステリア嬢、初めまして。今日から私の婚約者でいいのかな?」
「はい。クリフト殿下に相応しい人物になれるよう、精進させて頂きますわ」
私は出来るだけ優雅ににこやかに微笑んだ――けれど、彼の瞳はどこか冷たく、期待外れだと言わんばかりの雰囲気を露わにする。あれ? 意外と表情が読みやすいな。確かに他の人に比べたら表情筋が活躍してないみたいだけど。
「では行こうか」
「はい……」
と、クリフト殿下は会場へ向かう為に身を翻し歩き出す。って、え? エスコートはしてくれないの? と、私がキョトンとしていると彼が振り返り不快そうな瞳をこちらに向ける。
「早くついて来ないか」
「え? あ、はっ、はい……」
彼は私のペースなどおかまいなくズンズン歩いていく。えっと、ヒールが意外とあるんでついて行くの凄く大変なんだけど。これは一体どういうことなのだろう? 普通は男性は女性をエスコートして、女性のペースに合わせて歩くんだよ?
たぶんだけど、アリエルも驚いて固まっていたから、この状況について来れない――ってか、流されてはいけないんだけど、あまりの展開に流されちゃったよ!
と、いうか護衛とか侍従とかも彼を諫めないという事は彼らはそれが正しいと思っているか、殿下がやることに文句を言えないかのどちらか……か、仕方ない。ちょっとだけ身体強化でなんとかついて行こう。
ちょうど小学への入学前のタイミングとなり、先に誕生日を迎えているクリフト殿下の誕生日に合わせてのお茶会が開かれます。王城で歳の近い侯爵以上の男女が一堂に集められているのですが、正直、逃げたい。でも、逃げても結局のところ、どうにもならないってのは分かり切っているのだから、逃げたくとも逃げるわけにはいかないわけなのよね。
因みに、本日は私とクリフト殿下の婚約も発表される予定なのだけど、実はまだ一度もクリフト殿下とは直接会う機会は無かったんだよね。たぶん、これもお父様とお母様が上手いことタイミングなんかを調整してくれていたおかげなのかもしれない。
「相変わらず、ここに来ると憂鬱そうな雰囲気になってるわね」
そう言って来たのは同じ控室で暇そうにしていたアリエルだ。
「だって、面倒な事しかないでしょ? アリエルの離宮ならまだしも王城の第一テラスでのお茶会なんて、全く気を抜けないでしょ?」
「んー、そういうもの? ま、私にとってはここが家だからアンタみたいな感覚は分かんないわ」
確かに、寝ても起きても城の中ではあるし、ここ最近のアリエルは城内の色んなところを歩き回っていると城にいる公爵家の手の者から聞いている。最近は王配であるランパード閣下とも手合わせをしてもらっているらしい、因みに『お出かけ』は私同伴で無くては出れないらしく、私のスケジュールに合わせないといけない所為でお出かけに行けないと文句を言われている。
「そう言えばお父様がクーベルト辺境伯が持っているアレ、すっごく気にしてたわよ?」
「アレに関しては我が家の一部とアリエル、ウィンディくらいしか渡してないし、一応、女王陛下の手元にもあるけど、ランパード閣下には黙っているのね」
「んー、ってことは欲しがってもダメな感じ?」
「そうね。アレに関しては秘密中の秘密だし、大量生産したら確実にパワーバランスを崩しちゃうわ」
「それなら仕方ないわね」
そんな話をしていると、ドアがノックされる。
「誰かしら?」
アリエルは不思議そうな顔をするが、私はなんとなく分かるんだよね。だって、ここは王族の控室で私に先に準備して待つように指示を出したのは女王キャロラインなのだから。
「お嬢様、クリフト殿下がいらっしゃいました」
「お通して」
エルーサは深々と頭を下げて、ドアの方へ向かう。私は椅子から立ち上がると直ぐに扉が開かれクリフト殿下の一団がやってくる。ゲームでの印象と同じ冷たい雰囲気のする王子様だ。
「本日はお招きいただきありがとうございます。クリフト殿下。私がハーブスト公爵が娘、エステリアでございます」
私は王族に対しての礼を行い、ソッと頭を下げる。そういえば……アリエルには一度もやってないわ。
「ああ、面を上げよ。エステリア嬢、初めまして。今日から私の婚約者でいいのかな?」
「はい。クリフト殿下に相応しい人物になれるよう、精進させて頂きますわ」
私は出来るだけ優雅ににこやかに微笑んだ――けれど、彼の瞳はどこか冷たく、期待外れだと言わんばかりの雰囲気を露わにする。あれ? 意外と表情が読みやすいな。確かに他の人に比べたら表情筋が活躍してないみたいだけど。
「では行こうか」
「はい……」
と、クリフト殿下は会場へ向かう為に身を翻し歩き出す。って、え? エスコートはしてくれないの? と、私がキョトンとしていると彼が振り返り不快そうな瞳をこちらに向ける。
「早くついて来ないか」
「え? あ、はっ、はい……」
彼は私のペースなどおかまいなくズンズン歩いていく。えっと、ヒールが意外とあるんでついて行くの凄く大変なんだけど。これは一体どういうことなのだろう? 普通は男性は女性をエスコートして、女性のペースに合わせて歩くんだよ?
たぶんだけど、アリエルも驚いて固まっていたから、この状況について来れない――ってか、流されてはいけないんだけど、あまりの展開に流されちゃったよ!
と、いうか護衛とか侍従とかも彼を諫めないという事は彼らはそれが正しいと思っているか、殿下がやることに文句を言えないかのどちらか……か、仕方ない。ちょっとだけ身体強化でなんとかついて行こう。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる