63 / 232
第二章 悪役令嬢は暗躍する
63.悪役令嬢はお母様からある物を受け取る
しおりを挟む
女王キャロラインと秘密の話をした後、王城から戻って来たとたんにお母様から話があるとお茶に誘われ、お母様のお部屋にやって来ていた。
「キャロルとのお茶会はどうでしたか?」
たぶん、お母様は話の中身は事前に分かっていると思う。まぁ、私と女王キャロラインの直接的な会話は分からないだろうけど。
「ここでお話しても大丈夫でしょうか?」
「内容までは言わなくても、彼女との間では話は付いているわ。私としても貴女の望む通りにしたかったのだけど、防げなくてごめんなさいね」
「いえ、条件さえ揃えばどうにか出来ることは約束頂いたので……ただ、書面か何か証拠に残る物が欲しかったのです」
「当然よね……これを渡しておくわ」
そう言ってお母様は小さな小箱をコトリとテーブルに置いて、微笑んだ。意匠の凝らされた箱を私は手に取り、お母様を見ると小さく頷いたので箱を開ける。そこには白金色の首飾りが入っていた。非常にシンプルな物でペンダントトップには小さなリングにも似たモノが付いており、青い魔石が一つだけはめ込まれている。
「これは?」
「それは私が設計した新しい魔道具よ。手に取って魔力を流してみなさい、貴女にはそれが何かスグに分かると思うわ」
私はお母様に言われた通りに魔力を通す。魔石に魔力が通ると術式だけが浮かび、私は驚きを隠せずに思わずお母様の方を見てしまう。そこには悪戯な顔をしたお母様がいた。
「どう? 驚いた?」
「当たり前です! ほんの数日の間にここまで完成度の高い術式が出来ているなんて、驚き以外に言葉が出ませんよ」
「フフフッ、貴女にそこまで言って貰えると頑張った甲斐があったわ。ポーチの方で貴女がヒントをくれたおかげよ。今回用意した魔石で考えても、まだ容量的には大きくはないけれど理論上は最終的にキャロルの私室くらいの広さは確保できると思うわ」
お母様は自慢気にそう言った。まさか、こんなに早く空間収納が出来るとは思わなかった。実は【失われた遺産】には似たようなモノが存在はするのだけど、ここまで小さく出来るとは誰も思わないでしょ。
「因みに既に中には大事な物が入っているから、一度、取り出してみなさい」
「――はい」
私はお母様に言われた通り、中に入っている物を取り出す。なお、空間収納は魔術だけでは無く、魔法との組み合わせによって作られているので、イメージによって中に入っている物を取り出す仕組みになっているハズだ。
「まさか、事前に用意してらしたのですか?」
「驚いた? 実はその契約書に関しては貴女がキャロルと話す前から用意していたのよ。貴女にはこれから色々と負担を掛けてしまうかもしれないもの、私もキャロルも子供達を不幸にしてまで事を成そうなんて思わないわ」
お母様はそういうけど、もし……もしも、上手くいってクリフト殿下と婚約破棄する事になったとして、クリフト殿下は幸せになるのだろうか? そこが実のところ、一番不安なのよね。ヒロインちゃんが超絶クソな人間ならまだしも、いや、それでもクリフト殿下は色々不幸な気がするんだけど。
私が考えている事がお母様に読まれたのか、少しだけ悲し気な表情をする。
「私含め、キャロルは貴女や王女殿下を守る為であれば、多少の犠牲は気にしないわ。それがたとえ自分の子供であったとしてもね」
「でも、それでは……殿下が可哀想ではありませんか?」
「貴女がそう思うのであれば、そこも含めて上手く立ち回ってはどうかしら? でも、貴女にはクリフト殿下と結ばれる気は無いのでしょ?」
「それはそうですけど……」
正直、上手く立ち回れと言われても、何をどうすればいいのかさっぱりなのだけど。うーん、それも踏まえてキチンと一度自分自身で考えてみないとダメかもしれない。
「母としては、クリフト殿下とは性格的に合わないと思うわ。彼って普段は隠しているけれど、どちらかといえば可愛らしい感じの女性が好みでしょう? 貴女とは会わせないようにしていたからアレだけど、もし、婚約者として一緒に居たらお互いに疲れてしまうと思うわ」
お母様は困ったわね。と、いった風の表情をする。正直なところ、見た目で言えば私やアリエルは髪や瞳の色は違うが容姿や雰囲気はよく似ている。それは女王キャロラインとお母様もそうなのだから、似ていて当たり前なのだ。クリフト殿下がクールに見えるのも、当然、女王キャロラインの子供だからだ。
お母様がハッキリと合わないというのだから、殿下を連れ立ったお茶会などに参加した時に、殿下が可愛らしい感じの女の子を目で追っていたとか、そういうのを見てしまったのだろう。まだ、10にも満たない子では上手に隠したりはそうそう出来ないものだし。
私は思いっきりキツイ系美女へまっしぐらだけど、少女としては超絶美少女の部類に入ると思っているんだけど、これは自惚れなのかしらね?
「キャロルとのお茶会はどうでしたか?」
たぶん、お母様は話の中身は事前に分かっていると思う。まぁ、私と女王キャロラインの直接的な会話は分からないだろうけど。
「ここでお話しても大丈夫でしょうか?」
「内容までは言わなくても、彼女との間では話は付いているわ。私としても貴女の望む通りにしたかったのだけど、防げなくてごめんなさいね」
「いえ、条件さえ揃えばどうにか出来ることは約束頂いたので……ただ、書面か何か証拠に残る物が欲しかったのです」
「当然よね……これを渡しておくわ」
そう言ってお母様は小さな小箱をコトリとテーブルに置いて、微笑んだ。意匠の凝らされた箱を私は手に取り、お母様を見ると小さく頷いたので箱を開ける。そこには白金色の首飾りが入っていた。非常にシンプルな物でペンダントトップには小さなリングにも似たモノが付いており、青い魔石が一つだけはめ込まれている。
「これは?」
「それは私が設計した新しい魔道具よ。手に取って魔力を流してみなさい、貴女にはそれが何かスグに分かると思うわ」
私はお母様に言われた通りに魔力を通す。魔石に魔力が通ると術式だけが浮かび、私は驚きを隠せずに思わずお母様の方を見てしまう。そこには悪戯な顔をしたお母様がいた。
「どう? 驚いた?」
「当たり前です! ほんの数日の間にここまで完成度の高い術式が出来ているなんて、驚き以外に言葉が出ませんよ」
「フフフッ、貴女にそこまで言って貰えると頑張った甲斐があったわ。ポーチの方で貴女がヒントをくれたおかげよ。今回用意した魔石で考えても、まだ容量的には大きくはないけれど理論上は最終的にキャロルの私室くらいの広さは確保できると思うわ」
お母様は自慢気にそう言った。まさか、こんなに早く空間収納が出来るとは思わなかった。実は【失われた遺産】には似たようなモノが存在はするのだけど、ここまで小さく出来るとは誰も思わないでしょ。
「因みに既に中には大事な物が入っているから、一度、取り出してみなさい」
「――はい」
私はお母様に言われた通り、中に入っている物を取り出す。なお、空間収納は魔術だけでは無く、魔法との組み合わせによって作られているので、イメージによって中に入っている物を取り出す仕組みになっているハズだ。
「まさか、事前に用意してらしたのですか?」
「驚いた? 実はその契約書に関しては貴女がキャロルと話す前から用意していたのよ。貴女にはこれから色々と負担を掛けてしまうかもしれないもの、私もキャロルも子供達を不幸にしてまで事を成そうなんて思わないわ」
お母様はそういうけど、もし……もしも、上手くいってクリフト殿下と婚約破棄する事になったとして、クリフト殿下は幸せになるのだろうか? そこが実のところ、一番不安なのよね。ヒロインちゃんが超絶クソな人間ならまだしも、いや、それでもクリフト殿下は色々不幸な気がするんだけど。
私が考えている事がお母様に読まれたのか、少しだけ悲し気な表情をする。
「私含め、キャロルは貴女や王女殿下を守る為であれば、多少の犠牲は気にしないわ。それがたとえ自分の子供であったとしてもね」
「でも、それでは……殿下が可哀想ではありませんか?」
「貴女がそう思うのであれば、そこも含めて上手く立ち回ってはどうかしら? でも、貴女にはクリフト殿下と結ばれる気は無いのでしょ?」
「それはそうですけど……」
正直、上手く立ち回れと言われても、何をどうすればいいのかさっぱりなのだけど。うーん、それも踏まえてキチンと一度自分自身で考えてみないとダメかもしれない。
「母としては、クリフト殿下とは性格的に合わないと思うわ。彼って普段は隠しているけれど、どちらかといえば可愛らしい感じの女性が好みでしょう? 貴女とは会わせないようにしていたからアレだけど、もし、婚約者として一緒に居たらお互いに疲れてしまうと思うわ」
お母様は困ったわね。と、いった風の表情をする。正直なところ、見た目で言えば私やアリエルは髪や瞳の色は違うが容姿や雰囲気はよく似ている。それは女王キャロラインとお母様もそうなのだから、似ていて当たり前なのだ。クリフト殿下がクールに見えるのも、当然、女王キャロラインの子供だからだ。
お母様がハッキリと合わないというのだから、殿下を連れ立ったお茶会などに参加した時に、殿下が可愛らしい感じの女の子を目で追っていたとか、そういうのを見てしまったのだろう。まだ、10にも満たない子では上手に隠したりはそうそう出来ないものだし。
私は思いっきりキツイ系美女へまっしぐらだけど、少女としては超絶美少女の部類に入ると思っているんだけど、これは自惚れなのかしらね?
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる