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第二章 悪役令嬢は暗躍する
58.悪役令嬢はお出かけ先で新兵器の解説をする
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あれから、2時間ほど様々なパターンで狩りを行い、魔導洞窟内にある安全地帯に到着し、私達は小さな小屋のスペースを借りて休憩をしていた。
因みに安全地帯は冒険者が休める場所を提供する為に冒険者や管理をしている国が常駐派遣を行って、作っている小砦みたいな施設で常に周囲を警戒する人員が配備されている、魔導洞窟内にある前線基地みたいなものだ。
「で、色々と聞きたいのだけど、まずはその武器からだ。その武器、俺には南方貿易で最近入ってきている銃に見えるのだが、あっているだろうか?」
「あっているか? と聞かれると、その答えは半分正解で半分不正解です」
パット見はマスケット銃っぽい形状はしているけど、中身はアサルトライフルなんだよね。ま、火薬とか一切使ってないからアサルトライフル風魔道具だし、ちょっと色々とさらなる実験で弾倉って考え方を取っ払っちゃったしね。
「確かに見た目は似ているが装飾などもよく出来ている……とは思うが、違うのか……」
「ええ、南方貿易で出回っている物は火薬を用いて鉛の弾を射出する武器だと思うのです」
「確かに……あのように魔法が出る武器では無かった。と、いうことは魔道具……なのか?」
「その通りです。どういった仕組みなのかは教えるわけにはいきませんけどね」
私がニッコリと笑うと彼はなぜか苦笑した。
「それは――いや、まぁ、そうだな。後で俺にも試し撃ちさせて貰えないだろうか?」
確かに、これを見ちゃったら一度は試したいと思うよね。私は今回お父様から借り受けている執事のグランに視線を向け、小さく頷くと彼もそれに応えるように頷き、荷物の中から予備の銃を一丁とアリエル用に誂えた短銃タイプのモノを二丁取り出し、テーブルに置いた。
「これは予備の銃ですが、閣下に差し上げますわ。後、エルにはこっちを、ディにも渡しておきます。ディは滅多に使う武器では無いと思いますけど、副装備としては悪くないわよ」
と、それぞれに銃を手渡す。『黒狼』様ことクーベルト辺境伯は微妙な表情を仮面の下で浮かべているようで頬のあたりを指で掻いていた。
「使い方は実際に使用した方が、分かりやすいとは思いますが、説明します」
そう言って自分の銃を手に持ち構える。
「撃つときは必ずしっかりとグリップを握って、引き金に指を掛けて引くことで弾が射出されます。また、銃弾は――」
と、腰に付けたポーチを外して中身を見せる。
「ポーチには約60発入ります。一応、このポーチも魔道具で銃弾が射出されるとポーチから銃へ弾が転送されます」
「……あー、少し良いだろうか?」
「ええ、なんでしょう?」
彼は難しそうな顔をして少し間を開けてから口を開く。
「色々と言いたいのだが、その銃なる武器は【失われし遺産】ではないのかい?」
「いいえ、我が家で開発した物です。色々と、実験も兼ねたものですから市場には出ませんよ」
多分、この武器は使い方によっては戦自体を大幅に変えてしまうトンデモ武器なのだ。渡せる相手はある程度絞っていかないと色々と、マズイ。
「簡単に説明しますが、グリップを握って魔力を通す事で武器其の物を使う事が出来ます。また、対になっているポーチに入っている弾を引き金を引くことで射出出来ます」
「弾に魔法が込められている?」
「それは弾の種類によって変える事が出来ます。ただ、ポーチには弾を選別する機能はないので複数のポーチを登録して使用するか、ポーチの中身を入れ替える必要があります」
この辺りも、もう少し色々と出来ればいいんだけど、まだまだ研究が必要なのよね。
「魔法が込められていない場合はどうするんだい?」
「私が今回使用している弾は全て魔法の組込みはしていません。実際にはグリップを握り魔力を通した時に術式を構築しています」
「すまない……全く理解が追いつかないのだが」
術式分解を理解した上での魔力回路だしね。困った顔をしている閣下も素敵よね。と、そんな事を考えているとアリエルが文句を言いだす。
「これって一つしか記憶出来ないってこと? それだと、使い勝手って微妙じゃない?」
「一応、撃鉄っぽいのがあるでしょ、それを倒すと1、2、3と切り替わるわ。さらに押し込んで放したら、また1に戻るって仕組みになってるから」
「3つまでね。どれくらいの術式なら入れれるの?」
「銃弾のクオリティによって違うけど、上級、最上級くらいまでの術式かしら……それ以上になると特殊な弾が必要になるわね。使用している魔石が持たないもの」
あらあら、閣下がドン引きしているわ。でも、そんな風な彼も素敵ね。とっても可愛らしい感じがする――けど、言ったら絶対に嫌われそうだから言わないでおこう。
「一応、短銃の方はモード切替の機能も付けてあって、剣の代わりとしても使えるわ。これは専用術式だから、グリップを握った状態で魔力の通し方を変えると形状が変わる……と、言っても銃身が縦になるだけだけどね」
「ええー、エ……リア様、わ、わかりません!」
「ディ、魔術を教える時に言ったこと忘れたの? 魔力を広げて術式に触れてみて、もう一つある感じわからない?」
「こう……あっ、銃身が縦向きに! なんだかカッコイイ感じです!」
アリエルも同調し、キャッキャウフフと楽し気な雰囲気に閣下は小さな声で「私は……一体何を見せられているのだ……」と、呟いていた。閣下、偽装が剥げてますわ。
因みに安全地帯は冒険者が休める場所を提供する為に冒険者や管理をしている国が常駐派遣を行って、作っている小砦みたいな施設で常に周囲を警戒する人員が配備されている、魔導洞窟内にある前線基地みたいなものだ。
「で、色々と聞きたいのだけど、まずはその武器からだ。その武器、俺には南方貿易で最近入ってきている銃に見えるのだが、あっているだろうか?」
「あっているか? と聞かれると、その答えは半分正解で半分不正解です」
パット見はマスケット銃っぽい形状はしているけど、中身はアサルトライフルなんだよね。ま、火薬とか一切使ってないからアサルトライフル風魔道具だし、ちょっと色々とさらなる実験で弾倉って考え方を取っ払っちゃったしね。
「確かに見た目は似ているが装飾などもよく出来ている……とは思うが、違うのか……」
「ええ、南方貿易で出回っている物は火薬を用いて鉛の弾を射出する武器だと思うのです」
「確かに……あのように魔法が出る武器では無かった。と、いうことは魔道具……なのか?」
「その通りです。どういった仕組みなのかは教えるわけにはいきませんけどね」
私がニッコリと笑うと彼はなぜか苦笑した。
「それは――いや、まぁ、そうだな。後で俺にも試し撃ちさせて貰えないだろうか?」
確かに、これを見ちゃったら一度は試したいと思うよね。私は今回お父様から借り受けている執事のグランに視線を向け、小さく頷くと彼もそれに応えるように頷き、荷物の中から予備の銃を一丁とアリエル用に誂えた短銃タイプのモノを二丁取り出し、テーブルに置いた。
「これは予備の銃ですが、閣下に差し上げますわ。後、エルにはこっちを、ディにも渡しておきます。ディは滅多に使う武器では無いと思いますけど、副装備としては悪くないわよ」
と、それぞれに銃を手渡す。『黒狼』様ことクーベルト辺境伯は微妙な表情を仮面の下で浮かべているようで頬のあたりを指で掻いていた。
「使い方は実際に使用した方が、分かりやすいとは思いますが、説明します」
そう言って自分の銃を手に持ち構える。
「撃つときは必ずしっかりとグリップを握って、引き金に指を掛けて引くことで弾が射出されます。また、銃弾は――」
と、腰に付けたポーチを外して中身を見せる。
「ポーチには約60発入ります。一応、このポーチも魔道具で銃弾が射出されるとポーチから銃へ弾が転送されます」
「……あー、少し良いだろうか?」
「ええ、なんでしょう?」
彼は難しそうな顔をして少し間を開けてから口を開く。
「色々と言いたいのだが、その銃なる武器は【失われし遺産】ではないのかい?」
「いいえ、我が家で開発した物です。色々と、実験も兼ねたものですから市場には出ませんよ」
多分、この武器は使い方によっては戦自体を大幅に変えてしまうトンデモ武器なのだ。渡せる相手はある程度絞っていかないと色々と、マズイ。
「簡単に説明しますが、グリップを握って魔力を通す事で武器其の物を使う事が出来ます。また、対になっているポーチに入っている弾を引き金を引くことで射出出来ます」
「弾に魔法が込められている?」
「それは弾の種類によって変える事が出来ます。ただ、ポーチには弾を選別する機能はないので複数のポーチを登録して使用するか、ポーチの中身を入れ替える必要があります」
この辺りも、もう少し色々と出来ればいいんだけど、まだまだ研究が必要なのよね。
「魔法が込められていない場合はどうするんだい?」
「私が今回使用している弾は全て魔法の組込みはしていません。実際にはグリップを握り魔力を通した時に術式を構築しています」
「すまない……全く理解が追いつかないのだが」
術式分解を理解した上での魔力回路だしね。困った顔をしている閣下も素敵よね。と、そんな事を考えているとアリエルが文句を言いだす。
「これって一つしか記憶出来ないってこと? それだと、使い勝手って微妙じゃない?」
「一応、撃鉄っぽいのがあるでしょ、それを倒すと1、2、3と切り替わるわ。さらに押し込んで放したら、また1に戻るって仕組みになってるから」
「3つまでね。どれくらいの術式なら入れれるの?」
「銃弾のクオリティによって違うけど、上級、最上級くらいまでの術式かしら……それ以上になると特殊な弾が必要になるわね。使用している魔石が持たないもの」
あらあら、閣下がドン引きしているわ。でも、そんな風な彼も素敵ね。とっても可愛らしい感じがする――けど、言ったら絶対に嫌われそうだから言わないでおこう。
「一応、短銃の方はモード切替の機能も付けてあって、剣の代わりとしても使えるわ。これは専用術式だから、グリップを握った状態で魔力の通し方を変えると形状が変わる……と、言っても銃身が縦になるだけだけどね」
「ええー、エ……リア様、わ、わかりません!」
「ディ、魔術を教える時に言ったこと忘れたの? 魔力を広げて術式に触れてみて、もう一つある感じわからない?」
「こう……あっ、銃身が縦向きに! なんだかカッコイイ感じです!」
アリエルも同調し、キャッキャウフフと楽し気な雰囲気に閣下は小さな声で「私は……一体何を見せられているのだ……」と、呟いていた。閣下、偽装が剥げてますわ。
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