57 / 232
第二章 悪役令嬢は暗躍する
57.悪役令嬢はお出かけを楽しむ
しおりを挟む
クラスタリアム魔坑道の内部は資料やウィンディ嬢の話の通り、灯りの魔道具による灯りも付いており広さもそこそこあって、想像していた『ダンジョン』という雰囲気では無かった。
「なんというか拍子抜けね……」
そう呟いたのはエルことアリエルだ。分かっていても言わぬがなんとやらよ。
「整備されていると聞いてましたが、鉱山の中だと言われても絶対に信じられないわね」
「ははは、嬢ちゃんは賢いな。でも、此処は整備されているが、アソコに見える門を越えたところからが本番だ」
そう言って彼は広い坑道の奥に見える門を指差した。門の前には騎士らしき姿が確認出来、私は首を傾げた。
「騎士が門番というのは不思議かい?」
「え、ええ……『黒狼』様は不思議に思いませんの?」
「そうだね。冒険者ギルドは大帝国の所属だけど、各領地にあるわけだよ。魔導洞窟の運営管理はギルドでは無く、各国の領地を任されている領主が行う決まりなんだ。確かに場所によれば冒険者が雇われて門番をしている場所もあるかもしれないけどね、ミストリア国内にある魔導洞窟では騎士が門を守っているよ」
因みにダンジョンの中に門が築かれている事も私には驚きだった。と、いうか資料には乗ってなかったんですけど? うーん、当たり前すぎて記載するのを忘れてたのか。ま、問題ないんだけど。
それにしても、『黒狼』様こと、クーベルト辺境伯の所作は完璧に冒険者風だ。言葉遣いとかは子供に対しての感じなのでなんとも言えないけど、高貴な生まれとは絶対に分からないよね。それを考えると、私は全然ダメだな。そんな事を考えながら門の前に移動する。
「じゃぁ、この門を通った後は本格的な魔導洞窟になるから、お嬢ちゃん達は気を付けてついて来て――」
と、彼はそう言ったけれど、アリエルが被せ気味に素早く反論する。
「残念ですが、私もリアもディと変わらない扱いで結構よ。出来ればキチンと役割分担をした上で魔導洞窟探索をしたいのだけど?」
『黒狼』様こと、クーベルト辺境伯は小さく「ほう」と呟いて顎に手を当てて少し考える仕草をする。
でも10歳に満たない幼女達に普通の冒険者と扱えと言われて――と、言ってもディ……ウィンディ嬢も私と同じ年齢だから、幼女というのは変わりないんだけどね。それにしても、クーベルト辺境伯もかなり忙しいと思うのだけど、よく今回の仕事を了承したなぁ。
「では、まずはどういった戦いが得意なのか、上層の敵で様子を見させてもらおうかな。まずは俺が獲物を見つけるから、俺の後をついて来てくれるかな?」
そう言って、門の横にある狭い通路を通っていく。『黒狼』様の話によると、どうやら通常時は門は閉ざし、魔物の氾濫時など緊急時のみ門を開くようにするらしい。これは魔導洞窟によって違いがあるので、冒険者ギルドや魔導洞窟の管理を行っている部署などで確認が必要らしい。
通路から出ると、先程までとは数段薄暗い感じで、空気もどこか埃っぽく感じる。ただし、かなり人の手が入っているようで地面などは綺麗に慣らされていて、歩き難いという事はない。
「ここら辺りは百年以上かけて人の手が入っているから、進みやすい。と、いうかこの魔導洞窟に至っては上層は殆どがこんな感じだ。しかし、魔物は関係なく沸いて来るから注意は怠らないように」
私達は「は~い」と、言いながら武器を構えて彼の後に続く。時折、クーベルト辺境伯こと『黒狼』様が私の武器をチラ見してくるのはあえて無視する。
15分程、薄暗い坑道を進み、幾つかの角を曲がったところで、彼が私達を制止させる。
「この向こうに魔物が3体いる。蜘蛛の魔物で、この洞窟ではもっともポピュラーな魔物だ。まずは音を極力立てずに様子を見て、魔法などの攻撃を咥えた上で接近戦に持ち込むのが基本だ。やってみるかい?」
と、小声で彼は言った。私達は視線を交わしてからコクリと頷き、ゆっくりと慎重に前に出る。
約30メートル四方くらいの部屋の様な空間の奥に蜘蛛の巣が張られており、そこに彼が言った通り3体の人並みに大きな蜘蛛がおり、魔物達はまだ私達には気が付いていない。
「エル、ディ、まずは私がやるわ……」
そう言って、私は武器を構え魔術構築を行う。威力調整が結構難しいので出来るだけ魔力を使わないように気を付ける。
トリガーを引くと激しい音と共に弾丸が射出され、その弾丸は炎の槍へと変わり、魔物を屠っていく。
「威力を抑えすぎたかな……3発で1匹だと思っているより効率は高く無いわ」
「私はもっと勢いよくババババッって弾が出るかと思ったけど、そうじゃないんだ」
「そうね。秒間12発くらいかな。理想は秒間20発だけどね。弾倉って考え方が少し違うけど、弾は出来るだけ節約したいわね」
「え、あー、リア嬢。後でその武器について話を聞かせて貰えないか?」
まぁ、そうなりますよね。とりあえずニッコリ笑っておこう。
「なんというか拍子抜けね……」
そう呟いたのはエルことアリエルだ。分かっていても言わぬがなんとやらよ。
「整備されていると聞いてましたが、鉱山の中だと言われても絶対に信じられないわね」
「ははは、嬢ちゃんは賢いな。でも、此処は整備されているが、アソコに見える門を越えたところからが本番だ」
そう言って彼は広い坑道の奥に見える門を指差した。門の前には騎士らしき姿が確認出来、私は首を傾げた。
「騎士が門番というのは不思議かい?」
「え、ええ……『黒狼』様は不思議に思いませんの?」
「そうだね。冒険者ギルドは大帝国の所属だけど、各領地にあるわけだよ。魔導洞窟の運営管理はギルドでは無く、各国の領地を任されている領主が行う決まりなんだ。確かに場所によれば冒険者が雇われて門番をしている場所もあるかもしれないけどね、ミストリア国内にある魔導洞窟では騎士が門を守っているよ」
因みにダンジョンの中に門が築かれている事も私には驚きだった。と、いうか資料には乗ってなかったんですけど? うーん、当たり前すぎて記載するのを忘れてたのか。ま、問題ないんだけど。
それにしても、『黒狼』様こと、クーベルト辺境伯の所作は完璧に冒険者風だ。言葉遣いとかは子供に対しての感じなのでなんとも言えないけど、高貴な生まれとは絶対に分からないよね。それを考えると、私は全然ダメだな。そんな事を考えながら門の前に移動する。
「じゃぁ、この門を通った後は本格的な魔導洞窟になるから、お嬢ちゃん達は気を付けてついて来て――」
と、彼はそう言ったけれど、アリエルが被せ気味に素早く反論する。
「残念ですが、私もリアもディと変わらない扱いで結構よ。出来ればキチンと役割分担をした上で魔導洞窟探索をしたいのだけど?」
『黒狼』様こと、クーベルト辺境伯は小さく「ほう」と呟いて顎に手を当てて少し考える仕草をする。
でも10歳に満たない幼女達に普通の冒険者と扱えと言われて――と、言ってもディ……ウィンディ嬢も私と同じ年齢だから、幼女というのは変わりないんだけどね。それにしても、クーベルト辺境伯もかなり忙しいと思うのだけど、よく今回の仕事を了承したなぁ。
「では、まずはどういった戦いが得意なのか、上層の敵で様子を見させてもらおうかな。まずは俺が獲物を見つけるから、俺の後をついて来てくれるかな?」
そう言って、門の横にある狭い通路を通っていく。『黒狼』様の話によると、どうやら通常時は門は閉ざし、魔物の氾濫時など緊急時のみ門を開くようにするらしい。これは魔導洞窟によって違いがあるので、冒険者ギルドや魔導洞窟の管理を行っている部署などで確認が必要らしい。
通路から出ると、先程までとは数段薄暗い感じで、空気もどこか埃っぽく感じる。ただし、かなり人の手が入っているようで地面などは綺麗に慣らされていて、歩き難いという事はない。
「ここら辺りは百年以上かけて人の手が入っているから、進みやすい。と、いうかこの魔導洞窟に至っては上層は殆どがこんな感じだ。しかし、魔物は関係なく沸いて来るから注意は怠らないように」
私達は「は~い」と、言いながら武器を構えて彼の後に続く。時折、クーベルト辺境伯こと『黒狼』様が私の武器をチラ見してくるのはあえて無視する。
15分程、薄暗い坑道を進み、幾つかの角を曲がったところで、彼が私達を制止させる。
「この向こうに魔物が3体いる。蜘蛛の魔物で、この洞窟ではもっともポピュラーな魔物だ。まずは音を極力立てずに様子を見て、魔法などの攻撃を咥えた上で接近戦に持ち込むのが基本だ。やってみるかい?」
と、小声で彼は言った。私達は視線を交わしてからコクリと頷き、ゆっくりと慎重に前に出る。
約30メートル四方くらいの部屋の様な空間の奥に蜘蛛の巣が張られており、そこに彼が言った通り3体の人並みに大きな蜘蛛がおり、魔物達はまだ私達には気が付いていない。
「エル、ディ、まずは私がやるわ……」
そう言って、私は武器を構え魔術構築を行う。威力調整が結構難しいので出来るだけ魔力を使わないように気を付ける。
トリガーを引くと激しい音と共に弾丸が射出され、その弾丸は炎の槍へと変わり、魔物を屠っていく。
「威力を抑えすぎたかな……3発で1匹だと思っているより効率は高く無いわ」
「私はもっと勢いよくババババッって弾が出るかと思ったけど、そうじゃないんだ」
「そうね。秒間12発くらいかな。理想は秒間20発だけどね。弾倉って考え方が少し違うけど、弾は出来るだけ節約したいわね」
「え、あー、リア嬢。後でその武器について話を聞かせて貰えないか?」
まぁ、そうなりますよね。とりあえずニッコリ笑っておこう。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる