悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
上 下
52 / 232
第一章 悪役令嬢は動き出す

52.悪役令嬢の母親達のお茶会

しおりを挟む
「この場では皆、堅苦しいのは無しにしましょう」

 絶賛、愛娘作『防音と認識阻害の魔道具超改良版』を使用したお茶会に集まったのは、女王であるキャロルとハーブスト公爵夫人である私、レシアス侯爵夫人であるターニア、アーマリア侯爵であるリオーラ様、リンガロイ伯爵夫人であるアマンディの5名です。

 魔道具の術式が展開されて、即座に反応したのはアーマリア侯爵であるリオーラ様。学術・教育に関する部門の長で文官、魔術師としても非常に優秀な人物です。彼女は落ち着いた風を装いながら、周囲に視線を向けながら訊いてくる。

「ステファニー様、この結界のようなモノは一体?」
「フフッ、これはエステリアが考え出し、私がさらに改良を加えた魔道具で防音と認識阻害、魔法、物理の防御も行える物なのですよ」

 何を言われたのか分からないという表情を浮かべるリオーラ様。貴族としてそこは頑張って冷静さを保たねばいけませんよ。

「ステフ、我々の常識から逸脱した状況では貴族であれども冷静ではいられないでしょ?」
「あら、そうかしら? これくらいで驚いて貰ってはこれから大変ですよ」

 私の言葉にキャロル以外の三人の表情がサーッと青くなっていく。あら? ちょっと圧が強すぎたかしら?

「あ、あの……本来、魔道具に使用する魔石に込めれる魔法は一つですよね? 複数の魔法……いいえ、魔術を一つの魔道具で扱うというのはまるで――」
「そうです! そんな【失われた遺物アーティファクト】のようではないですか!?」

 と、声を上げたのはリオーラ様とアマンディ。ターニアは多少事情に通じているので、そこまで酷い反応ではないようだけど、驚きは隠せていませんね。

「ちなみに、まだ世間には公表する気はありませんが、あなた達にはこの秘密を共有してもよいと思っています」

 だから、裏切るようなマネはしないでね。と、いう意図を込めて言う。ま、全ての秘密を明かす気もありませんが、皆、魔術師としても優秀な方が多いので気になって仕方ないでしょう?

「お、教えて頂けるのですか? 殿下……ではなく、ハーブスト公爵夫人」
「アマンディ、ここではステファニーでいいのよ。私達以外は誰も聞こえていないし、私達がどういう表情でやり取りをしているのかさえ、分からないのですから」
「も、申し訳ありませんわ。でぇー、ンンッ、ステファニー様」

 様子見をしているキャロルはジト目で私の事を見ているわね。完全に女王の仮面付けるのを忘れてるわ。と、妹の可愛らしい姿を見ながら私は微笑む。因みにアマンディは私の学園時代の取り巻きの一人で、とても忠誠心が高かったせいか、なぜか『殿下』呼びを直せないのよね。

「まずは……っと、キャロルから話して貰った方がいいわよね?」
「そうね。とりあえず、ステフが起動した魔道具の下では、外からの影響は一切ないし、私達がこれから守っていかなければならない対象の為に協力をしていく。と、いう部分が非常に大事よ」

 まだ女王モードには入っていないキャロルだけど、その凛とした声は皆の視線を一気に集める。彼女の持つカリスマ性は私には無い物だから、やっぱり、あなたは生まれながらの女王なのよね。

「因みに、ステフ知っている? 私を天性の女王と呼ぶ者がいるが、ステフの事は闇の魔王だと噂する者がちょろちょろと存在していること」

 知らないワケが無いけれど、何故か学園時代からそういう二つ名があったりするのよね。ホント、失礼しちゃうわ。

「知っています。ちなみに言い出した人物も把握してますからね?」
「あら? そうなの?」

 と、意外そうという表情で私を見る。あまり知られていないけど、その二つ名を陰口が如く使いだしたのはパルプストのいけ好かないアイツなんだけど、大元の発信者は旦那様なのよねぇ。旦那様の思わずの呟きをあのクソヤローが拾ったのだ。いつかアイツの毛根を死滅させてやるわ。

「っと、話が逸れたわね。今、離宮の庭で私達と同じようにお茶会をしている娘達ですが、私達は娘達をどんな手を使ってでも守らねばなりません」
「陛下、それはどういった意味でしょうか? 上位の家の方でも特に優秀と噂される御方々は分かりますが、私の娘は(お馬鹿で)お転婆なだけでして……」
「5、6歳の頃よりダンジョンに潜っていたそうじゃない? 普通ではありえないわよね?」
「よ、よく……ご存じで」

 旦那様がエステリアに調べて欲しいと頼んだ領内に住む子供達全てがなんらかの天才ってのは普通ありえないわよね。でも、エステリアを含め、今この場にいる私達、母親が腹を痛めて生んだ愛しい子供なのは間違い無い。私やキャロルは幼い時より神童と言われてきたわけですが、あの子含めて皆いろんな意味で変わっているのだ。

 アリエルとウィンディは魔法や戦闘能力、アンネマリーの商才、リンリィは頭脳明晰で特に算術が秀でているそうね。そして、我が娘エステリアの魔術……いいえ、うちの子は商才もあるし、その知識は多岐に渡るわ。何よりも柔軟性と発想力は飛びぬけている。

 確かにリンガロイ伯爵領では子供でも魔導洞窟ダンジョンで狩りをする者がいるのは過去に訪れた時に直に見ているので知っているけれど、さすがに小学にも入っていない子供が魔法や身体強化を使って魔物を狩るのはハッキリ言って異常としか言えない。

 でも、エステリアとかも出来てしまうのでしょうね。アリエル殿下とかが言い出すんでしょうねぇ。あの子の戦闘能力も年齢から言えば、かなーりおかしいところにあるのよね。キャロル以上の素質よね。

「子供達が関係を持つ以上、親である我々も彼女達を上手く導いていかねばなりません。だからこそ、我々も協力し無理に押し込めず上手くやっていきたいと思っているわ」

 キャロルはそう言った。それは間違いは無いと思うのだけど、一点だけ私は憂鬱な事を思い出す。エステリアのクリフト殿下との婚約の件だけは頑として曲げる気は無いということだった。

 アリエルに何かあった時の保険――と、いうのは分かっているけれど、母親として望んでいない婚約というのは心が痛むわ。キャロルには申し訳ないけど、少しだけ愛娘に助言してあげましょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...