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第一章 悪役令嬢は動き出す
48.悪役令嬢は再び悪役令嬢達とお茶会をする
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「本日は私の我儘に付き合ってくれて助かります。堅苦しいのもなんでしょうから、座ってくださる?」
と、アリエルは王女らしい立ち振る舞いでそう言った。私達は静かに席に着き、視線をアリエルへ向ける。彼女は周囲に視線を少しだけ動かしてから落ち着いた雰囲気を見せてお茶に口を付ける。
「今日もお茶が美味しいわ」
そう言いながら、ティーカップでは無く湯呑で飲みたいとか考えているだろうと私は思うのであった。実のところ、マリーのところからお茶を買うようになってから常に思っているのだ。今回用意させたお菓子は2年の歳月を掛けた実験中の作品だ。
アリエル付きの侍女がテーブルに実験作が乗った皿を置いていく。
「これは……わらび餅ですか?」
「そうよ、リンリィ。寒天でも葛でも無く、わらび粉を使った本格派よ」
と、いうか何故アリエルが自慢気にドヤ顔決めるのだろうか。まったく……それにまだ実験中で、わらび粉の採れる量もまだまだなのだ。そもそも、わらび粉は前世の知識でも10kgのわらびの根から採取出来るわらび粉の量は約70gと非常に効率が悪い。まぁ、研究用の魔術具の実験にもなったのでいいのだけど。
「ちなみに片栗粉で作ってもよかったのだけど、やっぱり偽物感が半端なかったのよね。と、いうわけでまだ完璧な出来とは言えないけど、味は保証するわ」
「あ、やっぱりエステリア様が提供されていたのですね」
「そうよ、エステリアってば凄いんだからっ!」
だからアリエル、あんたがドヤるなって……まぁ、いいけど。
「なんだか、懐かしい味って感じですねー」
ウィンディ嬢は素直でいい子っと。そんな事を思いつつ、まだ色々と前世の記憶レベルの物を作るってのは凄く難しい。そもそも、先人達が長い時間を掛けて研鑽してきた結果を簡単に再現出来るわけは無いんだよね。
「さて、これからの事なんだけど」
と、アリエルは急に話を変える。まぁ、いつもこんな感じなんで慣れてきてるのも――問題かもしれないわね。ちなみに慣れていない皆はちょっとポカンとした表情をしているわね。ウィンディ嬢は気にしてないっぽいけど、それは難しいことを考える事を放棄している感じはあるわね。
「これから、と、いうことはこれからも、こういったお茶会を定期的に行うということでしょうか?」
マリーは落ち着いた雰囲気でそう言った。ま、たぶん、そういう流れで間違いないけど、本題はそこじゃないんだよね。ゲームの中でも私とアリエルは断罪されやすいというか、サブキャラではアリエルの方がメインともいえる悪役令嬢なのだ。だから、色々な面でお互いに協力するというのは悪いことじゃないし、情報を集めるにしても断罪回避の為に動くにしても連携しておくのは大事だ。
「ええ、最終的には学園内のサロンで定期会合をしたいと思っているわ。って、小学に入らない人っていないわよね?」
「下位貴族や特別に通う事が許されている平民であれば7歳からだけど、中級以上の貴族の多くは10歳から通うのが慣例になっているから、大丈夫じゃないの?」
私の言葉に驚くウィンディ嬢。これにはリンリィ嬢も苦笑いだ。と、いうか彼女も冒険者を目指していそうでアレだな。下手すると学園自体通わないという選択をしてくる可能性も無きにしも非ずね。
「あの~、やっぱり学園には通わないとダメっぽい感じですか?」
「ウィンディ嬢。正直なところ、高学へ進むだけの学力があれば問題ないとは思うけど、貴族として他家との関りや関係を考えると通った方がいいとは思うわね」
「両親も無理をして通う必要は無いと言っていたので、軽く考えていたんですけど……マズそう?」
リンガロイ伯爵家はパルプスト公爵の分家で、爵位も伯爵となっているけど、今代は伯爵として確約されているけれど、次期当主が伯爵として爵位は出来ない一代限りのモノだ。ゲームでは、だからこそ娘を婚姻という形で差出す事で解決しようとしていたのね。男子しか子供の居なかったパルプスト本家にとっても、近しい血族との婚姻は悪い話では無かったハズ。
ただ、自身の兄弟の子であれば本家への継承権でいえばウィンディ嬢が上位だろうけど、その辺は家の事情としか言えないけど、正直なところ問題は多いわね。
「両親がそう言っているのであれば……と、言いたいところだけど、それは貴族でなくなる可能性も考慮している?」
「そんな事、あるんですか?」
「エステリア、ちょっと脅しすぎよ」
アリエルが私を嗜めようとするけれど、無くはないんだよね。タブンだけど。
「現状は可能性という話だけど、リンガロイ伯爵家はパルプスト公爵から一代限りの爵位で分派した家よね? これに関してだけど、パルプスト公爵家は格式には五月蠅い傾向にある貴族派閥の大物よ。リンガロイ伯爵家が中立派なせいで、現状あまり良好な関係とは言えないんじゃない?」
「え、ああ……そう言われると、そうなのかも……私、家の事には出来るだけ関わらないようにと言われてたせいで、色々とやっちゃってる感じなんですけど、確かに本家がどうこうって言い争いをしているのを聞いたことがあるんですよね」
まぁ、だよね。リンガロイ伯爵家の動きに関してはパルプスト公爵家としては癇に障る事が多いようで彼らの情報を外に出したくないと公爵家が工作している感じなんだよね。ただ、リンガロイ伯爵んところも、結構色々と迂闊なんだよねぇ。ま、言っても仕方ないことだけど。
「せめて、キチンとご両親と話をして決めなさい。出来れば10歳から同じ学園に通う仲間でいたいと私は思っているけど」
「エ、エステリア様……」
なるようにしかならないだろうけど、これでアリエルも満足でしょ。って、なんでアリエルはそんな羨ましそうな顔で見てるの???
と、アリエルは王女らしい立ち振る舞いでそう言った。私達は静かに席に着き、視線をアリエルへ向ける。彼女は周囲に視線を少しだけ動かしてから落ち着いた雰囲気を見せてお茶に口を付ける。
「今日もお茶が美味しいわ」
そう言いながら、ティーカップでは無く湯呑で飲みたいとか考えているだろうと私は思うのであった。実のところ、マリーのところからお茶を買うようになってから常に思っているのだ。今回用意させたお菓子は2年の歳月を掛けた実験中の作品だ。
アリエル付きの侍女がテーブルに実験作が乗った皿を置いていく。
「これは……わらび餅ですか?」
「そうよ、リンリィ。寒天でも葛でも無く、わらび粉を使った本格派よ」
と、いうか何故アリエルが自慢気にドヤ顔決めるのだろうか。まったく……それにまだ実験中で、わらび粉の採れる量もまだまだなのだ。そもそも、わらび粉は前世の知識でも10kgのわらびの根から採取出来るわらび粉の量は約70gと非常に効率が悪い。まぁ、研究用の魔術具の実験にもなったのでいいのだけど。
「ちなみに片栗粉で作ってもよかったのだけど、やっぱり偽物感が半端なかったのよね。と、いうわけでまだ完璧な出来とは言えないけど、味は保証するわ」
「あ、やっぱりエステリア様が提供されていたのですね」
「そうよ、エステリアってば凄いんだからっ!」
だからアリエル、あんたがドヤるなって……まぁ、いいけど。
「なんだか、懐かしい味って感じですねー」
ウィンディ嬢は素直でいい子っと。そんな事を思いつつ、まだ色々と前世の記憶レベルの物を作るってのは凄く難しい。そもそも、先人達が長い時間を掛けて研鑽してきた結果を簡単に再現出来るわけは無いんだよね。
「さて、これからの事なんだけど」
と、アリエルは急に話を変える。まぁ、いつもこんな感じなんで慣れてきてるのも――問題かもしれないわね。ちなみに慣れていない皆はちょっとポカンとした表情をしているわね。ウィンディ嬢は気にしてないっぽいけど、それは難しいことを考える事を放棄している感じはあるわね。
「これから、と、いうことはこれからも、こういったお茶会を定期的に行うということでしょうか?」
マリーは落ち着いた雰囲気でそう言った。ま、たぶん、そういう流れで間違いないけど、本題はそこじゃないんだよね。ゲームの中でも私とアリエルは断罪されやすいというか、サブキャラではアリエルの方がメインともいえる悪役令嬢なのだ。だから、色々な面でお互いに協力するというのは悪いことじゃないし、情報を集めるにしても断罪回避の為に動くにしても連携しておくのは大事だ。
「ええ、最終的には学園内のサロンで定期会合をしたいと思っているわ。って、小学に入らない人っていないわよね?」
「下位貴族や特別に通う事が許されている平民であれば7歳からだけど、中級以上の貴族の多くは10歳から通うのが慣例になっているから、大丈夫じゃないの?」
私の言葉に驚くウィンディ嬢。これにはリンリィ嬢も苦笑いだ。と、いうか彼女も冒険者を目指していそうでアレだな。下手すると学園自体通わないという選択をしてくる可能性も無きにしも非ずね。
「あの~、やっぱり学園には通わないとダメっぽい感じですか?」
「ウィンディ嬢。正直なところ、高学へ進むだけの学力があれば問題ないとは思うけど、貴族として他家との関りや関係を考えると通った方がいいとは思うわね」
「両親も無理をして通う必要は無いと言っていたので、軽く考えていたんですけど……マズそう?」
リンガロイ伯爵家はパルプスト公爵の分家で、爵位も伯爵となっているけど、今代は伯爵として確約されているけれど、次期当主が伯爵として爵位は出来ない一代限りのモノだ。ゲームでは、だからこそ娘を婚姻という形で差出す事で解決しようとしていたのね。男子しか子供の居なかったパルプスト本家にとっても、近しい血族との婚姻は悪い話では無かったハズ。
ただ、自身の兄弟の子であれば本家への継承権でいえばウィンディ嬢が上位だろうけど、その辺は家の事情としか言えないけど、正直なところ問題は多いわね。
「両親がそう言っているのであれば……と、言いたいところだけど、それは貴族でなくなる可能性も考慮している?」
「そんな事、あるんですか?」
「エステリア、ちょっと脅しすぎよ」
アリエルが私を嗜めようとするけれど、無くはないんだよね。タブンだけど。
「現状は可能性という話だけど、リンガロイ伯爵家はパルプスト公爵から一代限りの爵位で分派した家よね? これに関してだけど、パルプスト公爵家は格式には五月蠅い傾向にある貴族派閥の大物よ。リンガロイ伯爵家が中立派なせいで、現状あまり良好な関係とは言えないんじゃない?」
「え、ああ……そう言われると、そうなのかも……私、家の事には出来るだけ関わらないようにと言われてたせいで、色々とやっちゃってる感じなんですけど、確かに本家がどうこうって言い争いをしているのを聞いたことがあるんですよね」
まぁ、だよね。リンガロイ伯爵家の動きに関してはパルプスト公爵家としては癇に障る事が多いようで彼らの情報を外に出したくないと公爵家が工作している感じなんだよね。ただ、リンガロイ伯爵んところも、結構色々と迂闊なんだよねぇ。ま、言っても仕方ないことだけど。
「せめて、キチンとご両親と話をして決めなさい。出来れば10歳から同じ学園に通う仲間でいたいと私は思っているけど」
「エ、エステリア様……」
なるようにしかならないだろうけど、これでアリエルも満足でしょ。って、なんでアリエルはそんな羨ましそうな顔で見てるの???
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