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第一章 悪役令嬢は動き出す
46.悪役令嬢は過去にあった戦の話を思い出す
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北のユーアフトリアがクーベルト領に侵攻してきた戦では多くの犠牲が出た、前クーベルト辺境伯はこの時の戦での負傷が元で早逝してしまい、現在のクーベルト辺境伯が当主となった原因となった戦だ。
確か、まだ立太子する前の女王キャロラインにとっての初陣の戦でもあるんだよね。お母様に聞いたところだと、そのころは北のユーアフトリア、東のスーリアルなどとも関係が悪化しており大規模な衝突が繰り返されていた。
スーリアルには現国王の子が娘しかおらず、年の頃が良い男子が親戚に居なかった為に王妃の遠い親戚に当たるミストリア王家の男子を婿に出すことで和睦することになった。
これはスーリアルもミストリア以外の隣国とも揉めていたが故で、どの時代でも二正面作戦を取るのは愚策というのは常識的な話である。
このことによってミストリアは侵攻を繰り返すユーアフトリアに対して本格的に力を入れることが出来るようになった――のだが、ユーアフトリアの女王であるローラ・シュバルツ・フリテール・ユーアフトリアの率いる軍はまるで鬼神が如く強さでクーベルト地域の北部にある重要な城や砦が幾つも落とされミストリア国内最強と謳われるクーベルト辺境伯さえも負けて敗走した。
そこで、王家から本格的に援軍を出す流れになり、ミストリア王家第一王子であったギリアム王子17歳を総大将として1万の援軍を送る。その中にのちの女王キャロラインは既に幾つもの戦に出て活躍していたお母様を副官として2千の兵を任されていた。
余談だけど、キャロラインやお母様の扱いが結構雑だと思っていたけれど、この国にも結構前から女性継承の慣習を軽んじる勢力が存在していたようで、前王は女王だったけど、革新派だったようだ。故に出産などで政務から嫌でも離れる必要の無い男性継承の方が合理的だと考えたに違いない。
閑話休題――
ここで女王キャロラインとお母様は最前線で目立つ戦果を上げたのは言うまでもないけど、最も評価されたのは調略の数々でユーアフトリアの女王ローラを翻弄させ、冬の到来で撤退が難しくなる前に見切りを付けて撤退した。
そして数日後、王城に1通の手紙が届く。宛はキャロライン宛で差出人は女王ローラだった。実際には2通あって前王――私のお祖母様に当たるんだけど――にも手紙が届けられていた。
そこに書かれていた内容に憤慨した彼女はおかしくなっていく。
ミストリアの女王とユーアフトリアの女王とは最大のライバルだと目される事があるけれど、それはキャロラインが女王になってからの話で、当時とすればミストリア、ユーアフトリアも古くからある国だけれど、家格とすればミストリアの方が上だけど、国力でいえばユーアフトリアの方が上だった。故に女王ローラはミストリアのことを随分と下に見ていたようだった。あの戦でキャロラインと出会うまでは――
そして、前王が憤慨した内容が『役にもたたん第一王子を自分の末娘の婿によこし、キャロラインを女王にするのがミストリアの為になるぞ』であった。これによって、キャロラインとお母様は前王であるお祖母様にキツく当たられるようになり、半ば虐待ともいえるような立場に追いやられていく。
戦や小競り合い、内乱なども頻発していたらしく、姉妹で戦場を駆け巡っていたらしい。これは王城にいると母親や実兄が色々と面倒だったからとお母様は溜息を吐いていた。ちなみに北のユーアフトリアとは末弟の王子を婿に出すことで和議が結ばれている。ちなみにスーリアルには王太弟の子を養子縁組してから送られることになった。
その後、女王キャロラインが苛烈だと云われるようになったのは、自身の母と兄を誅殺して女王へとなったからで、私やアリエルが思っている雰囲気とは少し違っていた。確かに厳しいし、言葉の辛辣だし、ドSだと思うけど愛情深い人だというのは良く分かるからだ。
どうして母親と実兄を殺さなくてはいけなかったのかはお母様も教えてはくれなかったけど、どうしてもそうしなければならない理由があったんだろう。しかも、臣下である貴族の中で粛清されたのは本当に一握りの人間だけで、多くはキャロラインが女王になるのを望んでいたそうだ。
思い出しながら、私はそう語るとアリエルが少しにやけた顔をしていた。
「な、なによ?」
「エステリア、お母様達が王城に戻って来た出来事を私は知ってるわよ?」
「なんですって?」
アリエルのクセに生意気じゃない……でも、興味深いわよね。
「で、何があったの?」
と、私が言うとアリエルは楽しそうに話し始める。
確か、まだ立太子する前の女王キャロラインにとっての初陣の戦でもあるんだよね。お母様に聞いたところだと、そのころは北のユーアフトリア、東のスーリアルなどとも関係が悪化しており大規模な衝突が繰り返されていた。
スーリアルには現国王の子が娘しかおらず、年の頃が良い男子が親戚に居なかった為に王妃の遠い親戚に当たるミストリア王家の男子を婿に出すことで和睦することになった。
これはスーリアルもミストリア以外の隣国とも揉めていたが故で、どの時代でも二正面作戦を取るのは愚策というのは常識的な話である。
このことによってミストリアは侵攻を繰り返すユーアフトリアに対して本格的に力を入れることが出来るようになった――のだが、ユーアフトリアの女王であるローラ・シュバルツ・フリテール・ユーアフトリアの率いる軍はまるで鬼神が如く強さでクーベルト地域の北部にある重要な城や砦が幾つも落とされミストリア国内最強と謳われるクーベルト辺境伯さえも負けて敗走した。
そこで、王家から本格的に援軍を出す流れになり、ミストリア王家第一王子であったギリアム王子17歳を総大将として1万の援軍を送る。その中にのちの女王キャロラインは既に幾つもの戦に出て活躍していたお母様を副官として2千の兵を任されていた。
余談だけど、キャロラインやお母様の扱いが結構雑だと思っていたけれど、この国にも結構前から女性継承の慣習を軽んじる勢力が存在していたようで、前王は女王だったけど、革新派だったようだ。故に出産などで政務から嫌でも離れる必要の無い男性継承の方が合理的だと考えたに違いない。
閑話休題――
ここで女王キャロラインとお母様は最前線で目立つ戦果を上げたのは言うまでもないけど、最も評価されたのは調略の数々でユーアフトリアの女王ローラを翻弄させ、冬の到来で撤退が難しくなる前に見切りを付けて撤退した。
そして数日後、王城に1通の手紙が届く。宛はキャロライン宛で差出人は女王ローラだった。実際には2通あって前王――私のお祖母様に当たるんだけど――にも手紙が届けられていた。
そこに書かれていた内容に憤慨した彼女はおかしくなっていく。
ミストリアの女王とユーアフトリアの女王とは最大のライバルだと目される事があるけれど、それはキャロラインが女王になってからの話で、当時とすればミストリア、ユーアフトリアも古くからある国だけれど、家格とすればミストリアの方が上だけど、国力でいえばユーアフトリアの方が上だった。故に女王ローラはミストリアのことを随分と下に見ていたようだった。あの戦でキャロラインと出会うまでは――
そして、前王が憤慨した内容が『役にもたたん第一王子を自分の末娘の婿によこし、キャロラインを女王にするのがミストリアの為になるぞ』であった。これによって、キャロラインとお母様は前王であるお祖母様にキツく当たられるようになり、半ば虐待ともいえるような立場に追いやられていく。
戦や小競り合い、内乱なども頻発していたらしく、姉妹で戦場を駆け巡っていたらしい。これは王城にいると母親や実兄が色々と面倒だったからとお母様は溜息を吐いていた。ちなみに北のユーアフトリアとは末弟の王子を婿に出すことで和議が結ばれている。ちなみにスーリアルには王太弟の子を養子縁組してから送られることになった。
その後、女王キャロラインが苛烈だと云われるようになったのは、自身の母と兄を誅殺して女王へとなったからで、私やアリエルが思っている雰囲気とは少し違っていた。確かに厳しいし、言葉の辛辣だし、ドSだと思うけど愛情深い人だというのは良く分かるからだ。
どうして母親と実兄を殺さなくてはいけなかったのかはお母様も教えてはくれなかったけど、どうしてもそうしなければならない理由があったんだろう。しかも、臣下である貴族の中で粛清されたのは本当に一握りの人間だけで、多くはキャロラインが女王になるのを望んでいたそうだ。
思い出しながら、私はそう語るとアリエルが少しにやけた顔をしていた。
「な、なによ?」
「エステリア、お母様達が王城に戻って来た出来事を私は知ってるわよ?」
「なんですって?」
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