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第一章 悪役令嬢は動き出す
34.悪役令嬢は悪役令嬢達と交流する
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遂に始まった『とにキラ』悪役令嬢達によるお茶会だったけれど、全員が随分と緊張して妙な沈黙が広がっていた。たぶん、私が一番落ち着いているかもしれない。確かにお母様に監視されていると思うと色々とゲンナリするところはあるけれど、上手くやれれば褒めて貰えるわけで、褒められれば全然頑張っちゃう感じなんだ。
私は皆が緊張している中、ソッと小さな紙を隣に座っているマリーに渡す。マリーは転生者だと分かっていても、メモを見て驚いたような表情を一瞬して慌てて何事もなかったように振る舞った。そして、マリーはその隣に座っているウィンディ嬢へ回される。
当然、彼女も驚いて声を上げかけて口を押えてテーブルに慌てて伏せてから、勢いよく起き上がり全員を見まわたして隣のリンリィ嬢にメモを渡した。
リンリィ嬢は顔色を変えずに小さく頷き、アリエルへメモを渡す。
そして、アリエルはその紙を魔法で消失させる。
「ここでの対応は先程回した小さな紙に書いてある通りです。多少の失敗は――まぁ、怒られる場合もあるとは思いますが、たぶん大丈夫よ」
「リア、その『たぶん』はかなり不安にな……りますわ」
一瞬、砕けた言葉で言いかけたのを堪えたマリーだけど、それは減点対象よ。愛称で話すのもこの段階ではNGだし。まぁ、それくらいでは怒られないと思うけどね。
「皆様の保護者の方々もどちらかというと、優しそうな方が多そうだったので」
ちなみに女王キャロラインは超絶厳しいので、アリエルは失敗厳禁状態でこれが現在彼女が緊張している原因だ。まぁ、私のお母様は――うん、あの双子ホントそっくりだよね。
見た目も雰囲気も陰と陽といった感じなのに、根本的なところは似通ってるんだよね。お母様も普段は超絶甘々対応なんだけど、言葉遣いや所作、お茶会での対応なんかは特に厳しい。優しい笑顔で超絶的な圧を掛けてくるのが本当に怖い。
「あ、あのー、今日のお茶会はどういった趣旨かお聞きしても大丈夫でしょうか?」
と、言ったのは柔らかい栗毛の少女リンガロイ伯爵令嬢ウィンディだ。見たところ、かなり不安そうな表情を浮かべている。ゲームではもっとツンツンした雰囲気だったと記憶しているけれど、大分雰囲気が違う。
「簡単に言えば交流会ね。特に同世代で派閥的にも問題があまりなくて、将来的にも交流を持っておくべきと保護者にも思われているメンバーということかしら」
私の言葉に全員の視線が集まる。でも、私が仕切りすぎるとアリエルにとっては減点になるかもしれないなぁ。と、思っているとアリエルが言葉を発した。
「本日の目的は顔合わせだけよ。皆もこれからの事や個々が持っている不安などもあるでしょう。出来れば定期的に集まれるような場に出来れば……と、私は考えているわ。後、緊張したままではお茶もお菓子も美味しくないわ。もう少し息を抜きましょう」
そう言って、彼女は焼き菓子を口に放り込んだ。優雅さのかけらもないけど、皆の緊張を解くには良い感じだとは思うけど……多分、思考停止したなアイツ。
「フフッ、ですね。本日のお茶は我が領の特産ですね」
「ああ、レシアス侯爵領で最近流行りのお茶だと聞いていたけれど、なかなかの出来だと思うわ」
「アリエル王女殿下に褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ研究段階ではありますが、今後は今の茶葉を発酵させるお茶も作られると思います」
「へぇ、それは楽しみね」
と、いうかマリー手広くやりすぎよ。手紙では聞いていたけど、茶の木も見つけたのね……私としては珈琲派なのだけど。これでしばらくすれば紅茶も手に入るようになりそうよね。
「こ、こちらのプリンもレシアス侯爵家が作られたのですか?」
「あ、わ、私も気になります」
リンリィ嬢とウィンディ嬢も喰いついてくる。プリンと言わなくてもプリンが分かるって事は可能性は高くなってきたわけだけど。この監視下の中で私達だけでうまいことお互いが転生者であることを分からないとダメなのだ。
「それはハーブスト公爵家から持ち込まれたものよ」
アリエルは自慢げにそう言った。なんでアリエルが自慢げなのよ……まぁ、いいけど。
「市場には出回ってはいないけどね。我が領では畜産に力を入れているのよ。特に養鶏を中心とすることで、新鮮でおいしい卵が取れるから」
「お米があれば、TKGも可能ってことですか?」
ウィンディ嬢は迂闊なタイプね……アリエルとは意外と相性よさげかもしれないけど。マリーが私にチラリと視線を送って来るのを無視しつつ私は小さくゆっくりと息を吐く。
「そうね、マヨネーズが作れるくらいにはキチンと管理しているから、出来なくはないわよ」
「……噂では、西国の方では米の生産をしているという話を聞いたことがあるのですが」
ここでリンリィ嬢がそんな事を言った。え? お米!? ホントに???
私も一応探したのだけど、近隣諸国の情報は持ってたけれど、西国で生産してる……と、いうことは食べている、ってこと?
「お米食べれるの?」
と、声を出したのは私、アリエル、マリーの三名だ、ちなみにウィンディ嬢はあまりの衝撃に固まっている。アリエル、マリーからも個々で米が食えるかどうかの話は時々あがっていた……それほどに米を欲する民族は日本人しかいないだろう。まさにソールフードだ。
けど、そこで私は監視下だったことを思い出し、後が面倒だと直ぐに思ってしまった。
私は皆が緊張している中、ソッと小さな紙を隣に座っているマリーに渡す。マリーは転生者だと分かっていても、メモを見て驚いたような表情を一瞬して慌てて何事もなかったように振る舞った。そして、マリーはその隣に座っているウィンディ嬢へ回される。
当然、彼女も驚いて声を上げかけて口を押えてテーブルに慌てて伏せてから、勢いよく起き上がり全員を見まわたして隣のリンリィ嬢にメモを渡した。
リンリィ嬢は顔色を変えずに小さく頷き、アリエルへメモを渡す。
そして、アリエルはその紙を魔法で消失させる。
「ここでの対応は先程回した小さな紙に書いてある通りです。多少の失敗は――まぁ、怒られる場合もあるとは思いますが、たぶん大丈夫よ」
「リア、その『たぶん』はかなり不安にな……りますわ」
一瞬、砕けた言葉で言いかけたのを堪えたマリーだけど、それは減点対象よ。愛称で話すのもこの段階ではNGだし。まぁ、それくらいでは怒られないと思うけどね。
「皆様の保護者の方々もどちらかというと、優しそうな方が多そうだったので」
ちなみに女王キャロラインは超絶厳しいので、アリエルは失敗厳禁状態でこれが現在彼女が緊張している原因だ。まぁ、私のお母様は――うん、あの双子ホントそっくりだよね。
見た目も雰囲気も陰と陽といった感じなのに、根本的なところは似通ってるんだよね。お母様も普段は超絶甘々対応なんだけど、言葉遣いや所作、お茶会での対応なんかは特に厳しい。優しい笑顔で超絶的な圧を掛けてくるのが本当に怖い。
「あ、あのー、今日のお茶会はどういった趣旨かお聞きしても大丈夫でしょうか?」
と、言ったのは柔らかい栗毛の少女リンガロイ伯爵令嬢ウィンディだ。見たところ、かなり不安そうな表情を浮かべている。ゲームではもっとツンツンした雰囲気だったと記憶しているけれど、大分雰囲気が違う。
「簡単に言えば交流会ね。特に同世代で派閥的にも問題があまりなくて、将来的にも交流を持っておくべきと保護者にも思われているメンバーということかしら」
私の言葉に全員の視線が集まる。でも、私が仕切りすぎるとアリエルにとっては減点になるかもしれないなぁ。と、思っているとアリエルが言葉を発した。
「本日の目的は顔合わせだけよ。皆もこれからの事や個々が持っている不安などもあるでしょう。出来れば定期的に集まれるような場に出来れば……と、私は考えているわ。後、緊張したままではお茶もお菓子も美味しくないわ。もう少し息を抜きましょう」
そう言って、彼女は焼き菓子を口に放り込んだ。優雅さのかけらもないけど、皆の緊張を解くには良い感じだとは思うけど……多分、思考停止したなアイツ。
「フフッ、ですね。本日のお茶は我が領の特産ですね」
「ああ、レシアス侯爵領で最近流行りのお茶だと聞いていたけれど、なかなかの出来だと思うわ」
「アリエル王女殿下に褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ研究段階ではありますが、今後は今の茶葉を発酵させるお茶も作られると思います」
「へぇ、それは楽しみね」
と、いうかマリー手広くやりすぎよ。手紙では聞いていたけど、茶の木も見つけたのね……私としては珈琲派なのだけど。これでしばらくすれば紅茶も手に入るようになりそうよね。
「こ、こちらのプリンもレシアス侯爵家が作られたのですか?」
「あ、わ、私も気になります」
リンリィ嬢とウィンディ嬢も喰いついてくる。プリンと言わなくてもプリンが分かるって事は可能性は高くなってきたわけだけど。この監視下の中で私達だけでうまいことお互いが転生者であることを分からないとダメなのだ。
「それはハーブスト公爵家から持ち込まれたものよ」
アリエルは自慢げにそう言った。なんでアリエルが自慢げなのよ……まぁ、いいけど。
「市場には出回ってはいないけどね。我が領では畜産に力を入れているのよ。特に養鶏を中心とすることで、新鮮でおいしい卵が取れるから」
「お米があれば、TKGも可能ってことですか?」
ウィンディ嬢は迂闊なタイプね……アリエルとは意外と相性よさげかもしれないけど。マリーが私にチラリと視線を送って来るのを無視しつつ私は小さくゆっくりと息を吐く。
「そうね、マヨネーズが作れるくらいにはキチンと管理しているから、出来なくはないわよ」
「……噂では、西国の方では米の生産をしているという話を聞いたことがあるのですが」
ここでリンリィ嬢がそんな事を言った。え? お米!? ホントに???
私も一応探したのだけど、近隣諸国の情報は持ってたけれど、西国で生産してる……と、いうことは食べている、ってこと?
「お米食べれるの?」
と、声を出したのは私、アリエル、マリーの三名だ、ちなみにウィンディ嬢はあまりの衝撃に固まっている。アリエル、マリーからも個々で米が食えるかどうかの話は時々あがっていた……それほどに米を欲する民族は日本人しかいないだろう。まさにソールフードだ。
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