悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第一章 悪役令嬢は動き出す

28.悪役令嬢は王女様と城下町で出会う

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 声のする方にいち早く気が付いた私は素早く移動する。当然周囲の護衛の人達も異変に気が付いたようだ。

「アンタ達、その娘を放しなさい!」

 幼いが凛とした声が薄暗い道に響く。

 建物の壁には少女が汚い男数人に囲まれて恐怖に顔を歪ませている。それに今にも突撃してしまいそうな幼女がひとり。

「お嬢ちゃん。オレたちゃぁ、ちょいとこの娘と遊ぼうとしてるだけだ。邪魔すんじゃねーよ痛い目に合いたいのかぁ?」

 と、男達は彼女を馬鹿にするように言って笑う。あー、あの子ヤバいわ。

 私は小さく溜息を吐いて乱入するタイミングを計る。周囲の時間感覚とはだいぶ違いゆっくりと流れていくように見えるのは私自身が魔力によって身体強化、感覚強化を行っているからだ。

 そして、魔力をすかさず周囲に這わせて、王女様が魔法を発動するタイミングを見る。王女様は右手を前に突き出して超高速詠唱型の雷柱突槍ライトニング・ランサー系統の魔法陣を展開する。って、多重展開!? まだ5歳の女の子が攻撃魔法を複数同時展開するとか――凄い魔法センスだ。完全に魔法特化のタイプかな。

 って、感心してる場合じゃないわ。

「ちょっとたんま! こんなところで殺しはなしだって!!!」

 そう言って私はすかさずお母様仕込みの魔力漏洩マナリークを発動する。簡単に説明すると、魔法を発動する際の魔力を別の術式を入れ込むことで霧散させて、魔法を発動させなくする対魔法術式アンチマジックなのだ。超超高速詠唱ダブルハイスピードスペルの術式を組み込むことで必要な魔力量はあがるけど、相手の魔法発動より早く、そこに割り込むことが出来る優れもの。私が考えた方法をさらに術式理論ベースで調整しなおしてくれた超絶綺麗な術式なんだからねっ!

「なっ!?」

 そうして、私は次に目の前にいる男達に拘束バインドの魔法を多重展開で使って行動不能にさせる。因みに捕まっていた女の子はパニック状態で呆けている。まぁ、ここは周囲に視線を送る。たぶんだけど、ちゃんと保護してくれるだろう。

「薄暗い銀髪……深くて紅い瞳? え、な、なっ、なんでアンタがここにいるのよっ!」

 その驚き方、なんて分かりやすいんだ。私は素早く防音の魔道具改を起動する。

「このような場でご挨拶をする無礼、お許しください。お初にお目にかかります、エステリア・ハーブストと申します」
「…………許します」

 うん、すごいツンデレちゃんだわ。照れた顔は驚きの天使だわ……って、いうか従姉妹なんだよね。

「ちなみに周囲には私達の会話は聞かれていないし、認識阻害の効果もあるから砕けた感じでも問題ないんだけどね」
「……もしかして、もしかするの?」
「それはどう判断してもらっても構わないわ。それより王女様はどうしてこんな物騒なところに来ているのかしら?」

 私がそう言うと、彼女は視線を逸らし小さな声でブツブツと何か言った。うん、それじゃ全く持ってわからないです。私はとりあえずニッコリとお母様仕込みの笑顔で対応する。別に圧なんてかけてませんよー。

 ニッコリ

「いや……だから……」

 ニッコリ

「ヒッ、え、えっと……その……ほら、アレよ。アレ」
「うん、分からないわ」

 ニッコリ

 この圧《プレッシャー》に耐えれるかな、王女様! ちなみにお母様にやられて私は即落ちだったわ!

「……ヒロインを見つける為よ」

 ヒロインを見つける為? 悪役令嬢である彼女がヒロインを見つけてどうするの――と、思ったけれど、彼女の行動力、思考的危険度を考える。まさか、そんな事をしてもリスクや自身にとってマイナスでは無いだろうか?

 私はそう考えつつ、可憐な少女を真っすぐにみる。

「………………」

 彼女はそれに気が付いたように紅紫の瞳を逸らす。ツンデレ特融の動きなんだけど、何かしら――モヤッとするんだよね。喉の奥に何か引っかかっているような嫌な感じ。

「ねぇ、貴女の推しは?」
「!?」

 彼女はビクリと驚いて、周囲を一応キョロキョロと見回す。

「誰にも聞こえないのよね」
「そりゃ当然だよ。そうじゃなきゃ、こんな話してないから」
「……私の推しはエステリア・ハーブスト。悪役令嬢推しよ」

 あー、やっぱソッチの方でしたか。アリかナシかで言えば難しい判断なんだけど、やっぱナシかな。

「ごめんなさい」
「いやいや、推しって言っても恋愛的な意味の推しじゃなくて、応援していたいって意味での推しだからね? 私、ゲームやってる時からヒロインの事、大っ嫌いだったの。だから、私ならアイツを先に見つけてヤッちゃえば王家の権力的なヤツで揉み消すのも出来るでしょ?」

 うーん、とりあえずこのアホの子にはキチンと説明しないとヤバそうだ。と、私は大きな溜息を吐いてとりあえず一言投げておいた。

「アンタ、アホでしょ」
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